試行錯誤の「指弾き以外」への変換期

Written by Jun Greenさん

プレイヤーから作曲活動へ・・・真のQueenの4分の1への変換
OPERA
70年代後半の「指弾き」ジョンの変化としての「フレットレス」と「ピック弾き」

プレイヤーから作曲活動へ・・・真のQueenの4分の1への変換
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演奏方法としての部分は既にだいぶ触れていますが、ここからはバンドとしての内 面的な部分から、ジョンの 音楽性が変化しはじめます。何が変化をするのか、それはQueenの4分の1になるため の再度の努力です。 一緒にレコードを作り、一緒にライブを演っているのに何故か僕だけが収入が他の メンバーよりも・・・ 理由は簡単ですね、印税です。特に世界的なシングルヒットを持つ場合は桁はずれ の金額ですね。 自分もがんばって「曲」を書けば「プレイヤー」以上の収入が得られる事に気付い た時、しかし自分以外の メンバー3人は「作曲」能力は言わずもがな「歌える」メンバーばかり、Queenのレ コーディングでは 「作曲者」が「歌う」事を含めて楽曲のレコーディングに対する主導権を持つ事は 有名です。ましてやジョンは バンドの中ではまだまだ新参者、その主導権を得る事はおろか、まず「作曲」と言 う壁をBreakthruしなければ。

ジョンは逆に自分よりうまい「作曲家」や「ボーカリスト」「ギタリスト」が存在 するバンドの中で、彼等に 負けないようにがんばって曲を書き、その曲においてはレコーディングに対する主 導権を勝ち取りBass以外の 楽器にも挑戦しました。これは当時のメンバーが平等におかれた条件であると同時 に、それぞれの楽曲の セルフプロデュースを至上主義としていた70年代後半のQueenのメンバーのプライド でもありました。 セルフプロデュース、簡単に言うと「自分の演る事にまちがいはない」といった自 信のあらわれですね・・・ そのセルフプロデュースの最大かつ最初の産物がBohemian...である事はあえて説明 の必要はありません。 が、この曲の陰に悩まされた時代の始まりにも見えます。

この悩みを解決したのが80年代のマックの共同プロデューサーとしての存在です。 しかし、それまでの道のりの 中でジョンは静かに考え、80年代へのQueenへ向けての助走を始めたように思えます 。なんと80年代にはマジで 女装してしまいますが(そのじょそうじゃなぃっっっっ!!!)、80年代のQueenの楽曲 を聴くにあたって、70年代後半 のジョンの「苦悩」が逆に報われた感もあり、何度も言われた「解散」の危機を乗 り越える結束力の一端としての ジョンがこの頃に生まれたように思います。

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Queenの70年代の頂点を意味する作品だと思う。ジャケから内面の歌詞の文字まで溢 れるコンセプト、 次作と並べ合わせて飾るとまさしく「Black Side & White Side」の到達点にも見え るのは気のせいか・・・ ジョンの音質は一切の混ざり物無い「オリジナルジョン100%」状態に聞こえる。と くに「指弾き」の音質が はっきりと聞き取れる位に分離度が良いが、逆にロジャーのドラムの「ピッチの低 さ」が目立つの何故か? レコーディングの進化とともに「モコモコ度」は下がってきたのに(1stは特にそう であったが・・・) ロジャーは全体的にチューニングは低めであるのは有名だが、バスドラは多少前作 に比べて音質がしっかりして きている、が、やっぱ低めであるなぁ。しかし、バスドラに硬質感というかアタッ ク感が感じ取れる分 Bass音とのなじみは良くなっており、フィルでの「逆上がりパターン(タムが下から 上へながれる)」の印象が Your my...等では如実で、コーラス・レスペギターオケ等の「高音成分」と Drum.Bassの「低音成分」の感じが なんとも言えずこのアルバムの「トーン」を決定しているように思う。

しかし、このリズムの2人は無茶苦茶「芸達者」で、Queen至上最も楽曲のリズムバ リエーションが多いにも かかわらず(リズムだけをとらまえるとROCKのジャンルに入れるのは不可能に近い曲 が多すぎる!) 難無く「それ」をこなしているのにはただの「ROCK」ではすまされない「水商売」 の経験を感じる。 特にフレディの楽曲においてはProphet...を除いてPianoがメインであり、寄り添う ようなBassラインが美しい (Prophet...ではブライアンがDの領域に侵入しているのが面白い)。 ブライアンも39で新生面を見せ始めるが、ジョンがここでコントラバスを再度使用 することにより 「アコースティック」な音質・ラインを提示しており「どっちが作曲者」と思うよ うな仕上がりである。 (後にJazzのJealousyでもブライアンを食うフレーズを提示)が、なんと言っても Bohemian...の美しさは絶品で 「1音が空間を支配する」魔力をジョンは見せつけて(魅せつけて)くれています。確 かに技や音数で勝負する のもプレイヤーのプライドの一環かもしれないが「一音にしてすべてを語り尽くす 」様なジョンのプレイ、 「now he's dead」のところでFの音が「息を飲む」様にスライドするところなんか はたまらん状態!!

しかしジョンに関わる白眉の部分はYour my...でしょう。自らエレピを弾き自ら Bassを被せた、ある意味では ブライアンのギター多重録音にも相通ずるだけにジョンの「ノリ」が良く見えます 。特にリズムとしては微妙な ハネ具合をエレピが提示しており、またイントロのコードの分数形の使い方は他の メンバーの楽曲には見受け られないパターンであるが、これは結構「旨く弾けないKey」が良く使う「右手ブロ ックコード4っ打ち、 左手8分か4分のオクターブ」の典型である(あれ、私も得意だが・・・このパターン はビートルズのメンバーの ピアノプレイや、フォリナーのCold as Iceのイントロでギタリストのミックジョー ンズの弾くクラビネットが好例!!) また、Bohemian...のビッグヒットの後に続くシングルだけに、売れなかったら「や っぱり・・・」と酷評される のは目に見えている中での大検討のセールスを記録、ここにジョンは3人目のシング ルヒッターとして認知される 訳ですね(Bohemian...の片面のI'm in Love...はB面なので例外にしてまーす! ロジ ャーファン許してネ!) たぶんこのあたりで初めてジョンは「Queenの4分の1」として自他ともに認められ、 自信をつけ、報酬も得たの でしょう。そしてジョンは気が付くのです、自分よりうまい「ボーカリスト」「ギ タリスト」の利用方法を・・・ また、この辺は「ジョンの胸キュン作曲法」にて思いっきり突っ込んでコースアウ トする予定です。

そして「歌えない」メンバー、それゆえ他の「歌える」メンバーとは異なる作曲の アプローチを覚えます。

ピアノも弾けて歌えるし譜面も書ける人はその通りに・・・後は他のメンバーがど う料理するかの監督を・・・
ギターのリフを作ってきてとりあえずバンドで録って・・・自分で仮歌を入れてか ら再度の煮詰め直し・・・
おいらロックンローラー・・・シンプルなコード進行表をみんなに渡し、タイコを 叩もって自らシャウト・・・

「歌えない」メンバーは一人さびしくピアノやベースを片手にフレーズを考えます 。でもね、フレーズだけでは なかなか曲のイメージが、それじゃフレーズに合う歌詞を一節でも良いから考えよ う、そして大事にしよう・・・ 気がつけば彼の書く曲の「一番主張するメロディー」には「一番大事な歌詞」それ は同時に「曲タイトル」という 「POPSの王道」の「技法」を自然と身につけていきます。他のメンバーの出来なか った「歌詞と旋律の一体感」 を・・・この人の曲を口ずさむ時びっくりするほどに「タイトルが入った歌詞が一 番目立つメロディー」なのは あえて「計算された」作詞作曲ではなく、最初に言った「フレーズに合う歌詞を一 節」から発展させた結果です。 そして「歌えない」事を逆手にとるかのように、自分よりうまい「ボーカリスト」 に歌ってもらえる事を前提に 曲作りにはげみ、自分よりうまい「ボーカリスト」「ギタリスト」達が持っていな い「感性」の世界へとバンドを 導き、70年代後半に行き詰まりかけたバンドの80代の再生の立役者となります。

さてその背後にはバンドの方向性を左右する「プロデューサー」の存在・・・ そして今だかなわぬ「全米制覇」の夢に固執する部分もありました・・・ また、この時期のジョンの楽曲におけるベースプレイのポイントの解説は別途に書 きます・・・

70年代後半の「指弾き」ジョンの変化としての「フレットレス」と「ピック弾き」
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「指弾き」 基本的に「人指指・中指」時には薬指・親指を使いますが、まずはこ の2本の指が ほとんどの場合メインといえます(詳しくは「指弾きのハードロック」参照)。もち ろん「チョッパー」 「スラップ」等も指弾きの範疇ですが一般でいうところの「フィンガーピッキング 」、すなわち「弦と胴体」 の響を尊重する「指弾き」 をここでは意味します(ちなみに弓弾きはアルコ、でも J.ペイジは却下!、つまむように 指ではじくのはピッチカット、で、これが行き過ぎるとチョッパー等になると思え ばまず良いでしょう・・・)。 ジョンの「チョッパー」は「Cool Cat」等少ししか確認できず、ほとんどの「チョ ッパー」の状況は 「あれれっちょっと強く弾きすぎたかな・・・」的な演奏がほとんどですね・・・ 。

ジョンのプレイのほとんどすべてはこの「フィンガー」のスタイルですが、漫然と こういった「弾き方」 をしているのではなく「天性のBassist」の本能が「Queenの音楽」の中で「4弦ノー マルチューニング」 を基本とし、「無意味な高音域ソロ」「これみよがしチョッパー」や「エフェクト たっぷり実験サウンド (この意味でクリススクワイアを尊敬しているのだと思う・・・)」等にあえてトラ イせず(たぶんやれば 出来る人だがあえてしていないと思う)、フレディやブライアンの「非凡な」楽曲・ アレンジの「土台」と なる事を「サウンド上の使命」とし(だからBassなのだよーん!)、なおかつ「8ビー トロジャー」のリズムに 「16分音符」をアテンドする事により、70年代当時の他のバンドとは「一味違う」 スタイルを生みだしました。

特に「コントラバス(レコードクレジットではダブルベース)」を使用した「39」等 では「オーソドックス」 なランニングを聴かせてくれますが、こんなところに「非凡な」楽曲・アレンジを 支える「技量」を 見せてくれます(予兆は既に...Leroy Brownで見せていたが・・・)。

70年代後半には「コントラバス(ダブルベース)」に加えて「フレットレス」をスタ ジオ・ライブ等で 使用し始めますが、Bass「プレイヤー」としての開眼期でもあったようですね・・ ・。 「フレットレス」・・・単純に言うとフレットの「無い」ベースギターなのですが ・・・音程をとるのが 「非情!いやっ非常」に難しく、多くのプレイヤーは左手のポジションに「アタリ」 をつけておき、 右手でピッキングした瞬間に「ビブラート」をかけて「誤魔化す」輩が多く(アッ俺 だ!!) 「ジャコ」で広がったもののなかなか旨く弾ける「モノ」ではありませんでした。 ジョンのアプローチは 「右手のピッキングと同時に左手で弦を押さえる」といった「クラシカル」な「コ ントラバス」奏法に 近いプレイですが(これはノイズを最小限に抑える為にも有効)、これは「音が出た 瞬間に音程が間違ってたら どーしょーも無い(はっきり言ってみんな怖くてやらない・・・そこまで弾けない )」奏法ですが、さすがに 見事に音を決めてくれています。「左手で押さえた瞬間」に発生するタッチノイズ がより「コントラバス」 的な響きもたらし、「左手を離す瞬間」までの「音の長さ」のコントロールを「ほ とんどビブラート無し」 で演るのはなかなか至難の業です・・・私もコントラバスをオケで弾く機会が「と ぉーい昔」にあり(笑) リハの隙間に「39」を弾いて遊んでいましたが「難しくで出来たモンじゃ無い」と 言うのが正直な感想 だったりします(「オマエはオケに来ても練習せずに遊んでいただけだろー!」と、 女房の声が聞こえる)。

ところで「フレットレス」と「コントラバス(ダブルベース)」のどちらが難しいか ? と聴かれる事がありますが 「フレットレス」の方が敢えて難しいと思います。単純に「フレットレス」は大体 弦長85cm前後、「コントラバス (ダブルベース)」は大体弦長110cm前後、左手の1mmの押さえ違いだけでも弦長から いって音程への影響度は 「フレットレス」の方が1.3倍程度シビアで、また「エレクトリック」な分だけ押さ えるだけでも鳴りやすく 「弾かなければ鳴らないコントラバス(ダブルベース)」に比べて音程、発音の危険 度(難易度)が非常に高く、 前述の様な「誤魔化しが効かない」ので、「見栄」だけで持っていても「弾けない 」ベーシストが当時は 「ジャコ」の影響で「ちりめんジャコ」の様にウジャウジャといました(私は持って いませんでしたが・・・)。

でも「ローズ(茶色)」の指版ではなく「メイプル(木色)」なのがジョン偉い!! フ ラットワウンド弦ならば、 こちらの方が鳴りが明るく、特にグリスの時の音は奇麗な「鳴り」を得やすいです から(メイプルはローズに 比べてすべすべの仕上がりで、指をすべらしいても摩擦が少ない)・・・。また、ス ラップ気味に弾いた場合に 発生するノイズもかなり「ローズ(茶色)」に比べて「コントラバス」に近いトーン が得られます。 「Jealousy」「Mustapha」等でのグリスプレイはこのセッティングだと思いまーす (確信50%程度・・・)。

そして「指弾き以外」殴る・蹴る等の「リッチー奏法」は別としまして(笑)、「ピ ック」を使った奏法に 関しましては、ジョンはライブでの「Modern..」「Hammer...」等において「ピック 」を使っており これは「指弾き」に比べて「トーンが明るく」「アタックが安定する」等の理由か らだと思われます。 「ハードロックスタイル」を「アレンジ」した楽曲ですので、この方が「らしい」 事もあると思います。 しかし「試行」の部分では「Under...」でのD.G弦12フレット「ピック」弾きがあり ますが、これは 「無機質に聴かせる」事が「アレンジ」されたからだと思います。右手の平で弦を ミュートし、ブリッジ 寄りでのピッキング、「タン.タン.タン.タタ.タンタン」の「タタ.タンタン」での 「16分音符の安定」を 狙っているのがよくわかります。同様のパターンは「Invisibie...」「Break...」 「Put out...」でも 見受けられますが「Need your...」では上記2種の「中間」を狙う意味での「ピック 」のようですね。

だが、面白いのは「ハードロックスタイル」の時はプレシジョンベースを使用し、 「16分音符の安定」 を狙う時はミュージックマン・スティングレイを使用していますね。これは「ハー ドロックスタイル」 の時は音量を気にする事なく上げられ、また歪み具合もナチュラルなでプレシジョ ンベースが「向き」で 「16分音符の安定」を狙う時は意外と「ボリュームを抑えて」のフレーズが要求さ れるので、ボリューム を落としても「トーン」の変化の少ない「プリアンプ」付、早い話が「電池の要る 」Bassを使用している ようですね。論理的にも正しいし、アレンジから生まれた使い分けだと思います(確 信はないが・・・)。

ちなみに「スティングレイ」は姓名こそちがえども「フェンダー」の直系子孫です のでジョン好みです。 また、現在の多くのベースの様に「フルアクティブ」の回路では無く、「Bass」の みが「アクティブ」に セットされ「HIGH」は「パッシブ」なのが面白い所でした。これは「低音」は「 Bass本体」で稼ぎ 「高音」は「アンプ」等で調整するのが特徴で、ピックアップの位置もあってか独 特の「ゴリッ」とした 太く思いサウンドが気持ち良かったですね。また当時の高性能アンプとのコンビで 「HIGH」を上げると あの「ジョンソン・チョッパー」の様な「派手」な音も作れる器用なBassでした。

いくつかのライブでは、スティングレイには両面テープでピックが張り付けられて いる絵もありますね。 でも「White Man」ではスティングレイだなーあれれれっ勉強し直し!! それも「指 弾き」だぜい!! まぁこの頃(77年頃は)このスティングレイがお気に入りだったとゆーことで、ちゃ んちゃん!!! それに「ハードロックスタイル」は75年頃までだしちょうど「楽器」と「音」の変 わり目とゆーことで。 でもスティングレイで弾く「Liar」なんかは「ライブ」でありながら「音が埋もれ ず」「輪郭がはっきり」 聞こえるのがうれしいなぁー・・・ あぁっしかし、80年代に入ったら「16分音符 の安定」系のフレーズ でもプレシジョンベースを使っている・・・まぁこの辺になると「アンプ・PA」も 格段に進歩しており 「気分」で楽器を変えても「サウンドの影響」が少ないからでしょう・・・何より も「生音」で勝負を していた70年代前半とは「規模」がちがいすぎますので・・・

そして80年頃のポリフォニックのシンセ・アレンジが、効果音、オケの「上モノ以 外」(ここがミソなのよねー!!) に使われ出した時、ドラムマシンの導入とも重なって・・・「Queenの音楽」の歴史 で「リズムの2人」が 「前の2人」と同等以上の「天才」であった事を我々は思い知らされるのです。 逆にテクノロジー嫌いのフレディが取り残され、ギターダビング以外の能力をブラ イアンが強要される時代の中、 この2人には無い「才能」がはっきりと出てきました。結果は全米制覇をするのです が・・・ この辺はメンバー個人の「作曲の方法」(能力ではありません)と密接なので少し詳 しく書きたいと思います。

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