フレディのピアノ Part1 楽器編+マイク話

Written by Jun Greenさん

フレディの愛したベヒシュタインとは
ライブでのピアノは
おまけ・・・フレディのマイク

中学・高校の頃「さぁ、バンドつくろうぜぃ!!!」と言った時、一番メンバーを探し ていて困るのが キーボードのメンバーとして「クラシックピアノをやっている女の子」しか選択の 余地が無い時でした。

バンドと合わなかった理由、但し可愛い女の子ならついつい許した範疇・・・
・「コード??? 譜面がないと弾けなーい」 「当たり前じや、ROCKは耳コピーだぜ い!」
・「ソロ? アドリブ? 難しいしワカンナーい」 「おらおら気合いを入れて弾けば なんとかなる!!」
・「えーシンセ、私機械って弱いの・・・」 「単音でタッチが無いだけ! ピアノ と一緒だっ!!!」
・「オルガンで目一杯グリス? 指痛ーい」 「当たり前だ! 鍛えりゃ大丈夫じゃ !!!!」

と、大体このあたりまでは忍耐の範疇でもあり、かわいいものである、しかし
・「ほかのお稽古があるから今日の練習休みまーす!!!」  「ブッ(オメー今日言 うなよ!)」
・「遅くなるとママに叱られるから日曜の朝練習にして」 「ブッブッ(わしらはバ イトじゃ!!)」
・「パパがROCKは不良だからやめなさいって、ゴメン」 「ブッチーン(大体ライブ 直前・・・!?!?)」

といった思い出をお持ちの方も多いでしょう。そしてその女の子はいつの間にかメ ンバーと「できて」おり ライブにはしつかりと「彼を観に来て」「打ち上げ参加」といった場面も多々あり ました(私ではない!!)。

でも、そんな女の子達に「受けた」ROCKは多くの場合においてQueenでありました (時々何か間違えて エマーソンやウェイクマンに走ったり、財津VS小田で揉めたり、ビジュアル系のエ デイジョブソンが 出現した暁には一斉にそちらをむきましたっけ・・・ミッキー吉野も意外と人気あ りの時代・・・)。 当時のフイルムコンサート(死語)やぼちぼち出始めた「プロモビデオ」での「華麗 なるピアノ弾き」 フレディは強烈な存在であり、うまいけど地味顔のエルトン、オシャレ系だが当時 行方不明のポレナレフ、 ちょっと身長低いビリ−を差し押さえ「クラシックピアノをやっている女の子」の 人気を獲得しました。

音楽室のオルガンで「Burn」を弾いても誰も振り向かず「うるせっー」の声が飛ん でくるのにピアノで 「Death on..」のイントロを弾くと「おおっ」と取り囲まれたものでした・・・そ こで間違えて「Tarkus」 を弾くと「退かれる」ので「Honesty」や「異邦人(爆!!!)」を弾いたものでした・ ・・

そう、フレディのピアノはROCKの界隈のみならず、クラシックを学んだ者にもその 「美しさ」を しらしめる「腕前」でありました。当時多くのバンドがあった中でQueenにチャレン ジが出来なかった 理由は今程エレピ等のキーボードの品質が良くなく、まして「グランドピアノ」で なければ「意味無し」の フレデイのプレイ、そしてあの「声」「コーラス」・・・なんとか形になったのは 1st-3rdの「ギター」 ナンバーのみで「いつかグランドピアノでQueenをやりたい」と無性に思ったもので した。


フレディの愛したベヒシュタインとは
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Queen系のHPを色々見ていますが、中々この言葉には触れていませんので、少し説明 したいと思います。 19世紀中頃より、ドイツ・ベルリンでカール・ベヒシュタインが創業開始。近代の ピアノの技術形態では ベーゼルドルファーと並んで、19世紀において「現代ピアノ完成期の名器」として 有名なメーカーです。 (ちなみにピアノ完成直前期直前では、エラール、ブロードウッド、プレイエル等が 有名なところです) 現在では小さくなりましたが「熟練工のオーダーメイドピアノ」としてヨーロッパ では名声を保っています。 戦前には逸早く「エレピ」の開発に着手するなど、伝統にこだわらない姿勢も持ち 合わせたメーカーでした。 日本のヤマハがピアノ産業に参加するにあたり「指導」を願った事でもその偉大さ が判るでしょう。 19世紀後半のスタインウェイの「大量生産」や「鉄道流通に耐えられるピアノサー ビス」により、シェアは かなり落ちまして、戦後のヤマハ・カワイ等日本勢力台頭の余波も大きく、ベーゼ ルドルファー共々20世紀 の今日ではヨーロッパを中心に根強いファンに支えられているのが現状です(がんば れ!!!)。

最も有名な事実にリストの晩年の愛器として使われ(現存しているらしい)、同時期 のショパンが余りにも短い 人生だった為(ベヒシュタイン創業と前後して死去)「出会わず」に終ったという事 でしょう・・・。 ベヒシュタインはベーゼルドルファーと同じく「豊かな低音(と、言っても多くの場 合スタインウェイとの 比較論ですが)」を売りとしており、ベーゼルドルファーが「低音共振専用弦」を組 み込んでいたのに対して、 ベヒシュタインは「ピアノ本体の鳴り」による低音が魅力でした。この低音は「ベ ルベットサウンド」と 呼ばれておりなんとなく「フレディ」好みの雰囲気が漂いますネェ−!!

日本では中々手に入れにくく、まして気候の違いで鳴らしにくいと思います。個人 的には現在カワイが ライセンス生産している「BOSTON」あたりがフレディ的な音を追求するには日本で は最適かと思います。 しかし、ライブでのフレディのトレブリ−なサウンドやアタックを求めるならばヤ マハ系のピアノが お薦めかとも思います。両者ともフルコンまで行かずとも、ベビコンあたりでもじ っくりと弾き込んで 音の鳴りを作ってやれば、数年後には良い音が作れると思います(しかし金のかかる 趣味だなぁ・・・)。 ちなみにわが家のカワイ・ベビコンは現在「News of...」の頃の音質に近いですわ ・・・。

もし、フレディが父親の赴任先のタンザニア・ボンペイで、このベヒシュタインが 弾ける環境で育ったとする ならば、とてつもなく上流階級の生まれと思います。また同じ様にボードビィルや ジャズのレコードを現地で 入手できるとなるとかなりの生活レベルであったのだろうと推測できます(当時の現 地はラジオは主に軍事用 回線のものがほとんどで、娯楽放送は少なかった時代です、よってレコードしか音 源が無いも同然の時代)。 後述の「エラ」のレコードがリアルタイムで聴ける環境となると・・・幼児期の環 境が後の人格形成に多大な 影響をもつ・・・まさしくですね!!! えっ私の幼児期? うーん「怪獣ごっこ」で したわ・・・

ライブでのピアノは
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なお、ライブで使用するピアノはスタインウェイやヤマハになってしまったのは、 世界規模でのサポートの 対応するネットワークを持っているメーカーが現在では前2社に加えてカワイぐらい なものなので、トラブル 等に対応する為にも仕方の無い事だったのでしょう。ちなみにスタインウェイは大 きくわけてヨーロッパ版と アメリカ版が存在するらしく、2種の違いは「気候」の違いかアメリカ版の方が「乾 いた明るい音」なのですが、 フレディの様に「内臓ピックアップ形式」だと違いが全然私には解らない状態です 、すいません・・・。 後期のライブの写真を見て頂ければ判りますが、ピアノの左側面(客席側)に2本の細 長い黒い物が付いていますね。 これは硬質樹脂かウレタンを張り付けて、移動時この面を下にして台車に載せる時 の補強材です。 ツアーのハードな時はこの様な改造になってしまいます。この様な加工をピアノに 施すとベヒシュタインでは 「響き」が変わってしまいます。そんな「スタジアム級バンド」化したQueen故、諦 めて他のメーカーのピアノを 使用する事になってしまったのでしょう。

なお、ライブサウンドを形成する方法として「内臓ピックアップ形式」をとってい ます。初期においてはヘルピン ストーン社製のピアノ専用ピックアップを使用しているのが確認されています。こ の「ピックアップ」を使用する メリットは「蓋を閉じれて見た目すっきり」「他の楽器の回り込み音が入り難い」 「特にアタック音が拾い安い」 「PAとしてサウンドメイクが楽」などがあげられます。が、「蓋を開けてマイクで 音を録る」場合に比べると 「音が固め」「余韻がきれいに拾いきれない」といった不満点もあります。当時は REOスピードワゴン、ジャーニー、 TOTO、ビリージョエル等が「内臓ピックアップ形式」を使用することによって「ス タジアム」化するライブ環境への 対応を余儀なくされ、その狭間で「YAMAHA.CP80」(エレ・グラとでも言おう)が大ヒ ットした時代でした。 また、フレディは「ピアノ専用アンプ」としてアコースティック・ベースアンプ 371(ジョンとお揃いよ!ウフッ!)を 使用する暴挙に出ており、意外とこれは好判断と言える発想でもあるといえる。多 分ジョンのアドバイスだと思うが、 ステージ上でのモニターとしてPA回線を使わず「単独アンプ」で音量を稼ぐのは合 理的であるし、アコースティック ・ベースアンプ371ならば音量・音質ともに当時としてはベストな選択と思える。ま たピアノ左手前にこの回線に 対するEQ・ミキサー等をPAとは別に装備、フレディの手許で「音質をコントロール 」しているのは良い判断ですね。 後にはアンプはピービー等に変わっていきますが基本思想は一緒のままでした。 ちなみにフレディの足元等にある一般のPAモニターには「ピアノ以外の音」を主に 返していたと思いますが、 このやり方は「ライブのピアニスト」には非常に「気持ち良い」と思います。なぜ なら「ピアニスト」は大音量の ステージの上とはいえ「足元」から「自分の弾くピアノの音」が鳴るのには非常に 「違和感」を覚えます。 やっぱりピアノは「前から」音が鳴らないと気持ちが良くないものです。それだか らこそ「ピアノの真横」に 「ピアノ専用アンプ」を置くという方法をとったのでしょう。「鳴り」にこだわる 「フレディ」ならではでした。

余談ですが、最近のキーボードでフレディのピアノを再現する場合、エレピでも充 分美しい響を持った ものが出ていますが、バンドでのライブで演奏となると、シンセで最低3音源は使用 した方が「らしく」 音を作ることが出来ます。フレディのピアノスタイルとして「基本の音域」は中央 ドC3をとするならば、 右手はF2からC5あたりまで、それ以上はよっぽど「技」の時にしか使用しません。 また、左手の音域は 例の「交差技」等を例外としてF0からF2あたりを主に動かしていきます。88鍵を使 用しているならば 特に問題はないのですが、73鍵や特に61鍵でコピーされる時は、中央ドの位置をう まく考えて弾かないと 「ギターの領域」を侵しながら「低音の寂しい」Queenサウンドになりがちです。特 に61鍵の場合には 全体Keyを1Oct上げてやり、弾く位置も1Oct上げてセットした方が、アンサンブルの 中では無難です。 なにより「左手がオクターブでラインを弾ける」方がQueenのピアノサウンドでは重 要ですので・・・ 特にバラード等「弾き語り」でスタートする曲はなおさらのこと・・・。

最低3音源と言いましたが、最近のGS.GM等の音源名で例を上げておきますと、基本 のピアノはNo.1を 全音域で発音するようにしておき、まず低音の補強としてNo.3の「ゴリゴリ感」の ある音を選びます。 キーボードトラックでC2を中心にそれより上は、バランスがマイナスになる様にセ ットします。 そしてNo.2の「明るめ」の音を選び、キーボードトラックでC4を中心にそれより上 は、バランスが プラスになる様にセットします。そしてNo.2.3各音色とも、ベロシティで強く弾い た時にNo.1以上の 音量で鳴るようにセットしてやりますと、ある程度の演奏でもかなり「キャラ」が 立つと思います。 リバーブ等の処理はKey本体で行わず、最終的なPAに委ねた方が無難かと思います。 確かにモニターで リバーブ等がかかっているとKey本人は気持ちが良いのですが、うかつにサスティン ペダルを踏みこんだ 演奏状態になると他のメンバーのモニターがしにくくなりますので、フレディも他 のメンバーもリバーブ等 が「かかっていない音」をモニターしていたはずですので・・・ なお、隠し技としてNo.3をNo.8Clavあたりに差し替えると「ワイルドなフレディ」 の音になったり、もう1音 No.7のハープシコードを加えて「手をとりあって」も美しいですし、実践ネタとし ては鍵盤に余裕があれば 両端の鍵盤にサンプリングで「We will...」ドラムサウンドを録っておくとか、「 Play the...」のポルタメント シンセの音を入れておくとか、ドラの音をいれてオープニング・エンディングに鳴 らすも良しですね。

おまけ・・・フレディのマイク
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レコーディングでは定番のノイマンを使用しているのがビデオ等で確認できます。 ライブでは後期の 「スタジアム級バンド」になると「ワイヤレス」を使用してますが、それ以前は「 シュアー565SD」を 愛用していました。これはボーカリストには非常に珍しい例でして、普通は「シュ アー58」を使用する アーティストが多い中、他にはエレクトロボイス・ベイヤーあたりが主流なのに何 故この「銀マイク」?? 「シュアー565SD」は「シュアー58」に比べて若干音が薄いけれどもで、ヌケは良い のが特徴でして、 多分フレディの豊かな声量や性質とも合って選ばれたのでしょう。それに「マイク と声の相性」のみならず 「コンプレッサーを2台シリアルで接続してEQをかます」というPA処理の相性も注目 すべき所ですね。 余談ですがライブでQueenのコピーをする時ボーカル担当ならば「コンプレッサーと EQ」を自分で持ち込む 位の覚悟をしてかからないと「典型的な貧弱PA」では「情けない声」になってしま います・・・。 Made in...のビデオのラストのロールバックのシーンに出てくる「マスターテープ 」のクレジットにも 「Comp」の表記があるとおり、かなりこだわってコンプレッサーの使用をしていた ようですね。

そして「シュアー565SD」のもう一つ特徴の「SD」とはなんぞや?? これは「 ON-OFFスイッチ付」の 「型番」でして、なんで「スイッチ」が必要なのかなぁ・・・と思うでしょうが、 フレディのライブでの あの「振舞」が原因かも、もしかして「音」ではなく「スイッチ」の必要に迫られ ての選択だったのかなぁ。 当時の状況でライブ環境で安定した性能と耐久性のある「スイッチ」付マイクはこ れだけでしたから・・・。 だってモニタースピーカーを倒して「マイクスタンド」で「鞭のごとく」の殴った り、マイクシールドを 使ってマイクごと「ブン回す」などPAの立場では「OH my Buddha!!」の荒技が多く 、しかも歌いもって やるもんだから「自分の判断でOFFにできる」マイクを選択したのかもなぁ、と、 PAの立場で思います。 ピアノの弾き語りシーンの写真を見ても、マイクの「Lock ON」の黒いの止め具は解 除されており スイッチ機能を「使用」しているセッティングになっているのが判りますね。

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