■イギリス製大河ドラマ
編集部 それでは、今日はバップからビデオが4月21日にリリースされた『ビグルス』についてのお話を中心にして、この座談会を進めていきたいと思います。この『ビグルス』は今年'87年の"アボリアッツ映画祭"で、『ブルー・ベルベット』に3票差の僅差でグランプリを譲ったという、そういう意味においても問題作であるということですけど。☆『ブルー・ベルベット』…懐かしい人には懐かしいデビッド・リンチ監督&カイル・マクラクラン主演コンビ、アヒルちゃん片手に怪演するデニス・ホッパーもいたりしていかにもグランプリを獲りそうな面子の不条理映画。
江戸木 それで、他には何も賞を獲らなかったんですか? 編集部 そうです。手ぶらで帰って来たという作品です。 塩田 そうですね、これはホラーじゃないから、グランプリを獲る以外には…ちょっと(笑)。 つかさ まあ、でもテンポがあって、みんなでワイワイガヤガヤ楽しむには良い作品ではないかと……。 江戸木 大作だと聞いていたもので身構えて観てたんだけど、1回目はぐっすり寝ちゃいましたね……疲れちゃって。でも、面白かったですよ。……大作じゃないですね。 塩田 ジョン・ハフ監督では、大作になりようがないですもの。 春出 何か、B級映画の臭いがありますね。 つかさ B級の味がありますよ。何か、バック・トゥものの勢いに、そのままのってしまっているという(笑)……。☆当時は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ全盛期でした 塩田 後半が面白いですね。 編集部 テンポが出てきますね、『ブルーサンダー』のようになって来る。 春出 ……というか、あれを観てて思ったんだけど、昔だったらアイデアひとつで出来ちゃったところが、現代はあれだけのアイデアを詰め込まないと1本の作品が出来ないんだなあと……(笑)。 編集部 見どころはでも、たくさんありますよね。 つかさ でもこれは、実際にお金かかってるんですかね? 江戸木 火薬とかの火の出方は、お金がかかってると思いますけど……。 春出 あー、あの火の出方は好き!! ……とっても! つかさ あり物で全部やってますね? 春出 けっこう、時代考証なんてのはイイ加減でしたけどね。 編集部 第一次世界大戦なのか、第二次世界大戦なのか、良く判らないイイ加減さはありましたけどね。 春出 持ってる銃器がイイ加減でしたからね。ドイツ兵の方もイギリス兵の方も同じ物を持ってますから(笑)。 江戸木 第一次世界大戦で、ドイツ軍はああいうヘルメットをかぶってたんですか? 春出 いや、あのヘルメットと、とんがりがついてるのと2つあるんですよ。で、その区別がどういう意味を成すのか、ちょっと忘れちゃったんだけど……。 江戸木 でも、西部戦線でしょう。西部戦線はこれじゃないですか? 春出 だから、その何々師団とかで変わってくるんですよ。 編集部 ちゃんとクレジットで、ニューヨーク、ロンドン、西部戦線、というように入っていましたね。 つかさ ピーター・カッシングって、最近は映画に出てます? 塩田 ビデオでは毎月1本ぐらいは出てますから(笑)。 つかさ うーん。でもプレスを見ると、85歳だと書いてありますね。 春出 ……87歳じゃないですか? 江戸木 やっぱり、ピーター・カッシングって絵になるから。 編集部 出て来るだけでね。 塩田 最初にニューヨークで、影で出て来た時に、もうロンドンの雰囲気になっちゃうものね。 春出 でも、あれは良いですね。 塩田 イギリスの監督だからかもしれないけど。 つかさ 合いますね、あの頬のコケ方といい。 江戸木 でも、あの人って昔から、あれ以外での役柄というのは無いですね。 春出 『スター・ウォーズ』ぐらいじゃないですか? 江戸木 でも全然、正義の味方とかではない。 編集部 ピーター・カッシング以外の役者さんはどうでしたか? ……特に記憶に残らないですか? つかさ あの"ビグルス"も良かったですよね。 江戸木 如何にも"ビグルス"的ですね。どういうことだか、全然判らないけど(笑)。でも、主役って、"ビグルス"なんですよね。 春出 ……というよりも、"ジム・ファーガソン"の方でしょうねえ。 編集部 この映画のミソはタイム・スリップなんですけど、どういうきっかけでタイム・スリップするか全く判らない、というのが面白いですよね。自分の意志じゃないですし。 塩田 あれは結局、2人はつながっているんでしょう? 編集部 タイム・ツインズなんですか。 つかさ タイム・ツインの双児――それがちょっと理解できないですね。 江戸木 1回目は寝ちゃったから、これを早回ししてもう1回観たら、きっとそれの説明部分が出て来るんだろうなあ、と思ってもう1回観たけどそれが無かったんだよね。 編集部 そう、ピーター・カッシング自身も良く判ってないんですよ。何だか知らないけど――みたいな感じなんですよね。 つかさ 設定が判らないんですよね、どうして彼が選ばれたのかということがね。 春出 そういうのはどうでも良いんじゃないですか!? 観てる間もそんなのは気にならないもの。 江戸木 僕は、気になったんですよ。……どうしてかなあ?と。 塩田 突然ね、タイム・スリップするから、あれでちょっと判り難くしてるよね(笑)。 江戸木 それはね、『エルム街の悪夢』みたいなものですよ。最後のシーンとかの形は違うんだけど……。 つかさ でもこれは、続編が出来ますねえ。……当たれば。☆続編は出来てません。当たってないので。 編集部 もう出来るんじゃないですか? つかさ もう創ることになってるんですか? そうなると、あのまま延々と続きますね。 江戸木 こういうのって基本的には狡いですよね、話の創り方としては。 塩田 最後、ニューギニアかどこかに行っちゃったりして(笑)。 春出 そのうちに日本とかが出て来るんじゃないでしょうかね? 編集部 これは原作があるんですよね。それもすごい量のシリーズ作品で。つかささん、90冊まで読んで、日本って出て来ました? つかさ 日本はですね、その中には無かったと思いますね。まあ、最初のを読み出したのは、もう18年ぐらい前のことになりますからね。 江戸木 忍者とかは出て来ないんですか? つかさ 忍者はね……(笑)。 編集部 第二次世界大戦の後はどうするんですか? "ビグルス"って。だんだん年齢(とし)をとるわけでしょう。 つかさ そうです。もう、"ビグルス"は出て来ないんですよ。 塩田 "ビグルス"って、いつ死ぬの? つかさ 死なないんですよ、"ビグルス"は。やっぱりね、時代のヒーローはね、そう簡単には死なない。 編集部 その前に、作者が死んでしまったんですよね。 つかさ そう、そうなんですよ。 編集部 ジェームズ・ボンドみたいなものでしょう。 つかさ だからね、彼は永遠に不滅なんですよ、やっぱり。 編集部 この作者のW・E・ジョーンズという人は、イギリスでは有名な人なんですか? 大衆作家なんですね? つかさ そうです。日本ではまるで有名じゃないですけどね。 塩田 最近のは読んでない……(笑)。 つかさ 日本で翻訳は出てますかね? ☆1冊も出ていません でも、『ビグルス』はねえ、今後のこのビデオの売行によっては、シリーズ化で出版される可能性もあるんじゃないですかね。 でも、最近は映画の傾向がだんだん、ビデオを売るための劇場公開みたいになってきている。そういうふうにビデオが各媒体にもたらす影響が、だんだん大きくなって来るかもしれないですからね。 |
■ジョン・ハフは健在だった!
編集部 ジョン・ハフという監督さんはどうですか?
江戸木 あー、良いですね。あの人、イギリス人なんですか? 編集部 そうですね。1941年、ロンドン生まれですね。 江戸木 『ヘルハウス』というのが……。 春出 『ヘルハウス』よりも、やっぱり『ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー』ですよね。 江戸木 だから、これには『ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー』の味がありますよね。 塩田 そうですね。ヘリコプターの撮り方で、「あー、やっぱり『ダーティ・メリー……』なんだ!」と思わせるものね。 江戸木 そう、撮り方がそうなんですよ。こう頭を下げてガァーッというのが……。あれにビック・モローがね、出てたんですよね。 春出 でも、『ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー』のラストで突然死んじゃったりするという、ああいうある種の意表を突く設定が、『ビグルス』には活かされているという感じがしましたね。だけど、ジョン・ハフって、なんてったって『プロテクター』を創った時から好きだったんですけど。 編集部 監督作品は15本。やっぱり、多くはないですね。 江戸木 本数は決して多くない。 塩田 あれが好きだったんですよ、『小さな目撃者』。 編集部 あっ、マーク・レスターの。 春出 あれも何か妙な映画でね、人間ひとり殺すのにブルドーザーを使っちゃったりして、えらい大騒ぎをするという(笑)。 江戸木 あの、ディズニー・プロで創ったのもそうでしょう。 編集部 '75年の『星の国から来た仲間』ですね。 江戸木 その後の変な映画(映画)。森の中に何かがいるという。 編集部 リン・ホリー・ジョンソンが出た映画……。 江戸木 『呪われた森』(THE WATCHER IN THE WOODS)! あのへんから少しおかしくなって来た。 塩田 いってみれば、そんなに良い映画を創ってないんだよね(笑)。たまたま変な味のある映画を創るという。 春出 だけど、テレビで『プロテクター』とかをやってる頃というのは、けっこう良かったんですよ。それが何か、映画を始めちゃったら妙な感じになっちゃって……。 江戸木 ハマー・プロのテレフィーチャー物も撮ってるでしょう? 『ハマー・ハウス・オブ・ホラー』(?)とかっていう。日本でもやってますよね……。 春出 テレビでやってるんですか? 江戸木 それが案外、評判なんですよ。正式なタイトルは忘れちゃったけど。 春出 やっぱり、テレビ向きの監督さんみたいですよね。 江戸木 そうはないという感じだけど、突き抜けたところもないなあという感じもしないではない。 春出 『ヘルハウス』というのは、何だったんでしょうね!? 塩田 けっこう年齢(とし)でしょう? 編集部 いえ、'41年生まれだから――46歳ぐらいですね。 江戸木 じゃあ、『ヘルハウス』を撮った時はそうとう若かったんだね。 編集部 『ヘルハウス』は'74年ですから、33歳で撮ったことになりますね。まだ若手、といって良い人なんですね。 塩田 手塚真は『ヘルハウス』が好きだということだけど。 編集部 『ヘルハウス』は、すごく好きだということらしいですね。 春出 8ミリであんなのを創ってるでしょう、まるっきり『ヘルハウス』の二番煎じなのを(笑)。 江戸木 原稿にも書いたけど、僕がね、初めて観たホラー映画というと『ヘルハウス』なんですよ。 編集部 その時の感想はどうでした? 江戸木 面白かったですよ。でもね、「ドラゴン映画の方が良いなあ」とやっぱり思った。だからね、あの手の映画を観出したのはあの頃からで、で、次の年の始めに『悪魔のいけにえ』を観て、そこから「やられたな」という感じで……。それ以前には、ブルース・リーの映画ばかり観てたもの。 春出 ブルース・リーにインスパイアされた方なんですか? 江戸木 その前にも観てましたけどね、『大魔人』とかね。 春出 『大魔人』! つかさ なかなか変身しないという。 春出 でも、あれは良く出来てましたけどね。かわら1枚々々にしてもちゃんとしてたもの。 江戸木 夢を見ましたからね。 つかさ でも今、『ペギー・スーの結婚』とかタイム・スリップ物が続々出て来てますけど、これからはどうなるんであろうか? というのは論題としてどうですか? 江戸木 でも、『ビグルス』のタイム・スリップには何か、ロマンチシズムが感じられないような気がするけどね。あれは完全にアクションですね。 編集部 そうですね、SFというよりはアクションですね。 江戸木 映画を、面白くするための道具として使っているんだけども、それ以上のものではない。 つかさ で、やっぱり『ペギー・スーの結婚』にしても、要するに時を越えるというのが何度もないでしょう。ところが『ビグルス』には頻繁にそれがあって、そのへんがね、新しいといえば新しいし、安易といえば安易なんですね。 江戸木 漫画的ともいえるんですね。 春出 だけど昔、『少年ジャンプ』のシリーズで、――あれ、誰の原作だっけ? フィルム化には山田隆夫が出てたんだけど――伊賀の忍者と、少年が戦うというのがあったんだけど。 つかさ 伊賀の忍者と、少年が戦う……!? 春出 タイム・スリップしちゃって。 江戸木 『幕末未来図』とか、そういうのでは? 春出 あれも、やたらタイム・スリップしちゃうんですね。で、懐中電灯を過去に持ち込んじゃったりして、それを観た人々が「ワァーッ」とびっくりしちゃったりするんです。 編集部 カルチャー・ショックですね。 春出 そういうノリがあるのかなあと思ったけど、そうでもなかったしね。 江戸木 タイム・スリップした後に、みんなちょっと驚くんだけど、他のその手の映画に比べるとそんなに驚かないんですよね。 春出 わりとすんなりで……。 塩田 納得しちゃうのね。 編集部 ヘリコプターを見ても、わりと受け容れますものね、すぐ。 春出 看護婦にしても毛皮のコートを着てる人がいたりするのに、変に思わないという。 つかさ あそこまでいくと、本当にコメディですからね。 塩田 だから、映画自体がもう既にタイム・マシーンみたいなものだから、どこにでも行けて変幻自在なんだから、あともうちょっとね、タイム・スリップに関しては説明が欲しかったけどね。あれだけこう、勝手に行き来されるとね……。 つかさ ちょっと、そこが安易すぎるような気がしますね。 江戸木 だからそこが、ちょっと深みに欠けるところなんじゃないかなあ。 春出 そこらへんの良い加減さがまた良いという(笑)。 つかさ ある程度は、観てるには飽きないですよね。 江戸木 まあ、本当に単純娯楽のB級映画で、良く出来たものという感じはするんですけどね。でも結局、それだけかな。そうですね。比較的、シナリオがあんまり良くないです。 春出 いや、でもやっぱり、こういう類のシナリオは僕、良いと思いますけどね。 江戸木 良く映画化したものだ、という気がしないでもないんだけど……。 つかさ そのへんはやっぱり、テレビ的なところもありますからね。 春出 いや、それはやっぱり、ジョン・ハフがテレビ上がりだからではないですか。でもそのわりには、バスタオルを巻いてポンとかやると、テーブルが十字架になっていたりして、テーマ性を持たせようとしているのかなあというのがあるんだけど、それ以上のものは何もない。そこらへんがまた良いですけど。 編集部 オープニングはなかなか可愛いじゃないですか。 江戸木 音楽が良かったですね。☆おっ! と思ったものの… つかさ “イエス”のジョン・アンダーソンですね。☆テーマ曲のことなんですね ロンドンではね、かなり流行ってる。☆テーマ曲が、ですね 春出 あれは、ヒットしてますよね。☆だからテーマ曲が、ね(しつこい) あのドイツの空軍将校が登場して来る時にかかる曲あるでしょう、あれは大ヒットしてるらしいですよ。イントロだけだけど。 ☆こっちはディープ・パープルの『Knocking at Your Back Door』です。…それでエンド・クレジットの曲はどうなんでしょうか(泣) 江戸木 ドイツの空軍将校が最後に爆死するところがあるでしょう。そこが山の影になって隠れるというのがね、良かったですよ(笑)。最近はなかなか、そういう手法はとらないでしょう。イタリア映画とかでないと、ああいうふうにはやらないでしょう。 つかさ あのう……、殺人超音波というのは実際に、ある程度はあったんですかね? 編集部 あのニュー・セラミックスとかは、何なのですか? つかさ あれはね、意味ないですよ。 塩田 しかも第一次世界大戦当時なのに、「何なんだ! あれは!!」という。 編集部 あのシーンは良く判らなかった。 春出 でっかいアメリカ製の手榴弾が埋まってるの……。 塩田 一ヶ所、目玉がギョロッと取れるところがあったり……(笑)。 春出 何で、あそこに突っ込むんだ!というのがまずはあるんだけどね、あれだけ恐がってて。 つかさ あそこだけホラーしているというね、そういうのがありますね。 江戸木 だから、漫画のノリなんですよね。 春出 基本的には『ナバロンの要塞』でしょう。 つかさ それにタイム・マシーンをプラスしたという。 編集部 いろんな要素が入ってましたね。 春出 『ナバロンの要塞』なんだなあと、観てて思ったんだけど……。その直後に『夜明けのマッキー』を思い出したりもして……。第二次世界大戦の最中にヒットラーが考案した戦車があるんだけど――キャタピラが4つあって、砲頭が4つあるという巨大な戦車なんだけど、それをヒットラーが作ろうとしていたという話が実際にもあるんですよ。だからそれを基にして、要するにその戦車が実際に作られていたと、で、ドイツが敗戦間際に起死回生を謀ってそれを出撃させるという、そういうバック・ストーリーもあるのかなとも思ったんだけど……。そういう考証からもね、第一次世界大戦に臨んで超音波の研究もあったのかなあと思ったんだけど、そんな話は聞いたことがないしね。 江戸木 毒ガスみたいなのはあったみたいですね。トニー・リチャードソンの『黄色い戦争』という映画の中に出て来ましたよね。あの舞台は第一次世界大戦ですよね。その毒ガスのシーンで、体が溶けて無くなっちゃうところがね、評判になったんだけど。あれもイギリス映画ですよね。 つかさ 最近の映画でなかったですか? たまたま飛行機から撮った写真が敵の秘密基地を写していたということで、命を狙われるという。 塩田 何か、とある青年2人が除隊して帰って来るんだよね。その帰途の密航機上で1人が寝てる間に、もう1人が飛行機の窓から記念に写真を撮ったら、それが秘密基地で……ネガか何かを残しておくんだよね。 つかさ で、その2人を捕えようとするんだけど、飛行機にネガが残っていました……というのがありましたよね。…………。タイトルを誰も判らない! 塩田 ここまで思い出してるのに……(笑)。 春出 それは……、ケン・ウォールの『ランニング・スケアード』みたいだなあ……違うかなあ。 塩田 あっ! そうだ! ケン・ウォールだよ、主演は確か……。 編集部 では、『ランニング・スケアード』(1/16 テ朝日「暴走マッドチェイス」の邦題で放映【'81/アメリカ】監督●ポール・グリックラー出演●ジャッジ・ラインホールド)ですね。 春出 『ランニング・スケアード』って、もうひとつあるんですよね。 編集部 ビリー・クリスタルの『シカゴ・コネクション/夢みて走れ』という邦題の映画ですね。 江戸木 面白かった? 春出 ケン・ウォールの方は、まあまあ、けっこう楽しめますよ。 江戸木 でしょうね。 春出 ケン・ウォールも最近は寂しくなっちゃったなあ。 |
■タイム・スリップ物といえば
編集部 では、映画のタイム・スリップ物の傑作となると何になるでしょうか?
つかさ やっぱり、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でしょう。 塩田 いやあ、『ある日どこかで』 ですよ。 江戸木 『ある日どこかで』でしょうね。あと『タイム・アフター・タイム』も良いですね。 つかさ あれも面白いですよ。タイム・マシーンがすごく良かった。 春出 良いんだけど、他の監督に撮らせたかった。 江戸木 タイム・スリップの良さというのは、『ある日どこかで』に尽きるんじゃないですか? 塩田 つまり、ロマンがある物ですね。日本でいうと『時をかける少女』みたいなね。 春出 やっぱり『ビグルス』もそうなんだけど、結局、タイム・スリップがあって、話の結末がついて、で、そのオチはどうなるのかなあと思ったらやっぱり案の上、タイム・スリップしちゃいましたみないなことになっちゃうその手の映画が多いけど、『ある日どこかで』はそうじゃないでしょう、そういう短絡的なオチをつけないでしょう。 江戸木 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』なんか、ラストがおかしいですよね。どこかがおかしいということで未来に行くわけでしょう。だけど、未来に行ってもしょうがないわけですよね、タイム・スリップするなら。過去に戻ってというか、今をどうにかしなければいけないというのなら理念は通るんだけど、発想が未来にばかり向いていて、そこの場所に行けば良いみたいなのは、……そういうのはおかしい。 編集部 続編はあそこから始まるわけでしょう、あの未来に行ったところから。 つかさ そうですね、未来を読んでしまうというのでは、やっぱり『デッド・ゾーン』ですね。自分が変えられるというね。そういう意味じゃね、相通ずるところがあるんじゃないかな。そんなクローネンバーグの発想がね、僕は好きだなあ。 編集部 あれはクローネンバーグじゃなくて、スティーブン・キングの発想でしょう。 つかさ まあ、原作はそうだけど。 春出 いや、でもやっぱり、原作を超えてますからね。 つかさ 超えてるところがね、絶対ありますよ。でもね、クリストファー・ウォーケンというのは一種異様な雰囲気を持っていますね、『ブレインストーム』でもそうですし。 江戸木 だからこの『ビグルス』でも、あのちょっと癖のある俳優がもうちょっといると。 編集部 みんな善人そうでしたね。 江戸木 (あの俳優が)特別出演みたいな感じだから、それだったら、もうちょっと癖のある役者を使ったら良いのにと思うんだけど。 つかさ 例えば誰を!? 江戸木 ドイツ兵の中に、アントン・デフェリンが出て欲しかった。 春出 それはやっぱり、間違いなくそうですね。 江戸木 『モスキート』のウェルナー・……(笑)……好きだけどなあ。 春出 それより、ピーター・カッシングをあそこに起用しちゃったことの方に問題があるんじゃないですかね。何かありそうな気がしちゃいますものね。 編集部 何かを握っていそうですものね。 江戸木 あと、女優が良くないね。 つかさ そうですね。 江戸木 両方とも役柄的に大した役ではないですものね。 つかさ パッパラパァーという感じがしますものね(笑) 江戸木 “ビグルス”の恋人みたいな娘いるでしょう。 編集部 “マリー”ですね。 江戸木 で、最後は死んだと思えたのに実は生きていたみたいな、あのへんがちょっとね……ああいうのはイヤだなあ。あんなのはいらないんじゃないですかね。 春出 いや、詰め込みすぎなんですよね。だけど、やっぱり、そこらへんが良いんじゃないですか!? あの映画は。 つかさ あんまりにも考えてしまう作品より、観ている間は楽しくいられるという意味においては、評価は高い作品だと思いますけどね。 編集部 それで、“アボリアッツ映画祭”でうけたのではないですか。 つかさ まあ、イギリスでは“ビグルス”自身が国民的英雄だから、中途半端なものは絶対に受け容れられないわけですよ、これがあると思うわけですね、やっぱり。だいいちあれは、“ビグルス”でありながら、それを助けるという“ビグルス”より更なるヒーローがいるというのは許せない! というような感情がイギリス国民の内にあるんじゃないかと……。 塩田 それがアメリカ人だとどうなるのかな? つかさ だからアメリカでいうと、“スーパーマン”を助ける更なる凄い奴がいる、という話になっちゃうわけですよね。 塩田 “スーパーマン”を“ジェームズ・ボンド”が助けるという(笑)。 つかさ そう! 殆どそういう話になっちゃう。……あると思いますよ、そういう感情が。 江戸木 基本的に“ビグルス”というのは、その第一次世界大戦にあの年齢(とし)でずうっと生きていたということなんですよね。 春出 そうすると、タイム・パラドックスになっちゃいますね。 つかさ ひょっとするとあの後、2人であっちこっち時代を飛び越えて、それぞれの時代のヒーローになっているかもしれないですね。 塩田 でも、本当をいうと、1917年と現代とだけを往き来できるような感じの筈なんだけどね。 |
■ビグルス=ジェームズ・ボンド
つかさ 実はですね、僕が思うには、“ビグルス”自身もあっちこっち時代を飛び超えている人間だと思うんですよ。だから、“ビグルス”が現代に戻った時も、そんなに“ビグルス”自身も驚かなかった――これがミソなんですよ。
編集部 あんまりカルチャー・ショックもなかったですね、“ビグルス”に。 つかさ 《時空(とき)の兄弟》というよりもね、2人とも時空(とき)を跳び超える能力を持っている人間で、たまたま“ビグルス”はあの時代に自分を活躍させようと思って、停まったわけですよ。……この読みはどうですかね? ロンドン子的だなあ……(一同笑)。 編集部 全く説得力がないような気がするんだけどなあ……。 春出 一番妙だなあと思ったのはこういうことなんですよ。“ジム”がタイム・スリップした際、飛行機のうしろに乗ってて、「撃て!」とか言われるんだけど、あの当時の機銃を「撃て!」と言われてそう簡単に撃てるものじゃないと思うの、操作のし方が判んない筈だと思うの、それをあっさり撃っちゃって、で、「お前は何が得意なんだ?」「料理だ!」なんて冗談を言っちゃって、その後、ロンドン塔から降りる時もロープでシュルシュル降りて来ちゃう……こういうことだったんだけどね。僕は、絶対無理だと思うんですよ。 編集部 いくら“ビグルス”でも、操縦は簡単だとかいって、いきなりヘリコプターはないんじゃないかという気はしますけど。 つかさ それはね、そういうふうにスーッといけるようにあらゆる時代を跳び廻っているからだ、という伏線になっているのですよ。実はね、“ビグルス”は日本にも来て『ゴルゴ13』という役をやったことがある……。 編集部 塩田さんが沈黙しているじゃないですか!(笑) 塩田 イギリスでは珍しいですよ、ああいうタイプの映画は。 つかさ そうですね。 春出 でも、イギリスといえども、『秘密指令S』とか『電撃スパイ大作戦』とかテレビで創ってた国ですからね(笑)。まあ、簡単に出来ますよ。 つかさ まあ、でも、ちょっと『007』とは色が違う。 塩田 『007』も似たような話だと思うけどなあ(笑)。 江戸木 もっと下品に創って欲しかったなあ。 編集部 けっこう上品にまとまってますものね。 つかさ やっぱり、『007』と一緒か! 編集部 イギリスですからねえ。 つかさ イギリスの悪口は言わないで下さいよ! わたしの母国ですから(笑)。 春出 でも、『007』ももう原作はないわけでしょう。 編集部 もう完全にオリジナルですね。 春出 そうすると、『ビグルス』になっちゃうんじゃないですか? あれ。 つかさ その可能性はありますね。 塩田 最後はタイム・スリップして……。 江戸木 今度の“ジェームズ・ボンド”やる役者に似てますよ。 春出 あー、『嵐が丘』に出た。 江戸木 すけべったらしい役者。 編集部 ティモシー・ダルトンですね。 塩田 もう、今回で多分ダメだろうね。あんな役者に代わって(笑)。 つかさ あれは、公開はいつからでしたっけ? 編集部 一応、夏休みでしょう。 江戸木 僕はジョージ・レイゼンビーに、もう一度やらせたいです! 編集部 レイゼンビー、良かったですよね! わたし、あれが好きだったなあ。 塩田 『女王陛下の007』の時ね。 江戸木 『電撃ストーナー』に出た時が一番良かったですよ。 塩田 『ビグルス』で一ヶ所、何故か今も判らないところがあって――クリント・イーストウッドのポスターが貼ってあるんだけど、あれが何なのか本当に悩んだんですよ。 つかさ そうですね、最初に出てましたよね。 春出 ……(笑)。あれが判んない! 何なんだろうなあ、と……。 江戸木 何かあり気ですよね。 つかさ 何かありますよ。 江戸木 キャラクターが漫画っぽいから良いのかもしれないけど、アメリカ映画のキャラクターみたいな、何かその手の感じの人みたいなね、ジョン・キャンディのニセ者みたいなのが出て来たりしてましたよ。 編集部 あー、いましたね。あの人も悪人ではなかったですね。 江戸木 ああいう人をもうちょっと話の中に関係させて、タイム・スリップさせちゃうとかすれば面白かったと思うんですけど。 編集部 『ビグルス』のような映画は、日本で撮ろうと思えば撮れますよね。 |
■やっぱり、映画館で見たいよね
春出 でも、映画館で観た方が面白いかもしれないですね。
塩田 やっぱり、複葉機とヘリコプターが飛んでるのが面白いんだよね。 江戸木 イギリスの複葉機物というのは良いですね。 春出 『スカイエース』といいね……。あれは良かったなあ。複葉機物の傑作というと、『スカイエース』と『レッド・バロン』ですね。 江戸木 『マーフィの戦い』なんかもそうじゃない。 春出 あれは複葉機といっても、ちょっとね……。あの、ジュリー・アンドリュースとロック・ハドソン共演の『暁の出撃』、あれもけっこうなものでしたね。 つかさ 『冒険者たち』も複葉機で凱旋門を潜るんじゃなかった? 春出 やっぱり、イギリスのものというのが良いですよね。アメリカではやっぱり撮れないよね。 塩田 でもね、『ビグルス/時空(とき)を超えた戦士』というタイトル、あれ格調高いねえ。流れにあってないねえ(笑)。 つかさ 殆ど『ハイランダー』と一緒ですね。☆「イモータルズ」もいますしね 春出 いやあ、あれ、ビデオで出す時に僕は、『ウレンダー』という題名に変えられるのかと思ったんですけどね……変えませんでしたね。 つかさ あー、『ウレンダー』でやるとやっぱり売れませんよ、絶対。 春出 そうですね。 つかさ でも、原題でもおかしいのがありましたね……『レイダース/失われたゾンビ』。これはもう、原題からしてそうなんだからどうしようもないですね。 江戸木 最近のビデオのタイトルは傑作が多いですね。『殺しのツボに五寸釘』とか……。 春出 いや、TCCさんは本当にコピーが巧いですね。 つかさ 『悪魔の毒々モンスター』以来、タイトルの凄いのがいっぱいありますよね。 江戸木 今度、『仁義なき忍者/香港代理戦争』というのがありますね。 編集部 あっ、あれ、編集部で大笑いしましたものね。あれは笑えましたよ。 江戸木 『レディ・ニンジャ2/夜霧の忍び凧』だとか。(一同爆笑)。凧で忍んで来るんですって。 編集部 それは『死霊の盆踊り』に次ぎますね。(一同笑) 春出 一時、題名に関してはね、頂点に達してたフナイもちょっと、最近は落ち目で。 編集部 最大のヒットって何ですか? フナイで。 春出 やっぱり『エイリアン天国』じゃないですか。でも、ちょっとやりすぎちゃってるものね。……『ニンジャリアン』『ゾンビパパ』とか。 江戸木 “ビグルス”に戻りますけど、“ビグルス”だと、乳酸菌飲料みたいな感じがしちゃう。☆たしかにディーコン菌(D菌)は入ってます。 塩田 だから最初、人名だとは思わなかったもの。 編集部 そうですね。イギリスだと“ビグルス”というのをみんな知っているんだろうから良いんでしょうけどもね、日本だと判りませんものね。《時空(とき)を超えた戦士》といわれて初めて、判ったような判らないような……という感じだから。でも、まあキレイにタイトルをまとめてるよね。 塩田 いやあー、バップもけっこう酷いのあるよ(笑)、ムチャクチャつけてるのが。 江戸木 『ホラー喰っちまったダ!』……。 編集部 『Microwave Massacre』ですね。では、今回はこのあたりで。 |