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宿敵・マリオ出現!危うしバタピー刑事!!(前編)

(撮影前の現場から)
「僕はもう死ぬのは嫌だからねフレディ。この前の殉職シーンで、『パパが死んじゃった〜!』
って言って、子供たちが泣きやまなかったらしいんだ。ヴェロニカに怒られちゃったよ」
「分かってるよ、ジョン。今回は君は死なないから、安心しなよ」
(ジョンったら、こんなとこで良きパパぶりを僕に見せつけなくってもいいじゃないか。
でもいいさ。ちゃあんと「見せ場」はあるもんな)
「あの…フレディ、衣装とメイクはこんなもんでいいかな」
「とてもいい感じだよジム。凄腕のヒットマンに見える」
「初めてだから緊張しちゃって。あ、ジョン、今回はよろしく。ヘマやったらごめんね」
「こちらこそよろしく頼むよジム。どうもこういうのは慣れなくて…恥ずかしいしね。
僕はただのベースプレイヤーなのに」
「ジョンもそう思う?僕も、ただの庭師なのに。…ふふ、やっぱり僕たち、気が合うねえ」
「そうみたいだねえ」
(こら、ジム!ジョンを独り占めするなって言ってるだろ!? ジョンも何だよ!?)
「さあさあさあ、始めるよ!用意はいいかい?」
2人で和むジョンとジム。ちょっとご機嫌斜めのフレディ。さあ、本編やいかに?

---「今日もたくさんの善良な市民を助けたなあ。善いことをするのは気持ちがいいよ。
これもみんなこのリュックのおかげかな?そうだ、ピーナッツに水をやらなきゃ」
デカ部屋に戻るなり、「ピーナッツ」と名付けたチューリップの鉢を手に
パタパタと走って行くドンチャック刑事を見て、ファイアー刑事とキューピー刑事は
呻き声をあげた。
「なんだよアレ。そりゃあ健康的かもしれんが、見ていられないぜまったく」
「あんなに芸風を変えるのって、罪じゃないのだろうか」
「芸風を変えないのも罪だけどな、ファイアー」
「放っておいてくれ」
バタピー刑事は2人の会話をぼんやり聞きながら、少しメランコリーな笑みを浮かべていた。
(今日もまた、彼は僕のことを「ピーナッツバター」と呼んだ…)
自分をみてドンチャックが兄を連想し、「ピーナッツ…」と呼ぶ気持ちは分かる。
(でも、僕は「バタピー」なんだ…)兄とは違う。それを彼に分かってほしかった。

と、そのときファックスが送られてきた。近くにいたファイアーが目を通す。
「なになに、麻薬密売組織『ハードゲイ』がアメリカからヒットマンを呼び寄せた…?
『ハードゲイ』といえば、ブランデー…今はドンチャックか…が壊滅寸前に追い込んだ
組織じゃないか。それじゃ今度の標的は…」
「十中八九、アイツに違いないね。…まずいな、最近銃も持ってないんだろ。
で、ヒットマンに関する情報は?」
「似顔絵がある。通称『マリオ』、頑丈な体と口髭の持ち主。
おい、こんな奴いたらすぐ分かるよ。濃い顔だな。何喰ってるんだろ、キノコかな?」
「ドンチャックといい勝負だ、なあバタピー。…あれ?どこ行ったんだ?」
「へ?さっきまでいたのに。はっ、これは…」
ファイアーの目に飛び込んだのは、バタピー刑事の走り書きメモだ。

―――僕が始末をつけます。ドンチャック刑事には黙っていてください―――

「おいファイアー、ここにあった元・ブランデーのサングラスと黒の皮ジャンがないぞ」
「まさか、バタピーの奴、ドンチャックの身代わりに…」
(いくらなんでも、それはちょっと無理があるんじゃないか?)
2人の胸にそんな思いが去来した。
「…いや、そんなことを考えている場合じゃない。彼を援護しなければ!行くぞキューピー!」
張り切るファイアー刑事。
「おい、出口はこっちだよ。…そっちはトイレ」
キューピー刑事は冷めた視線を投げながら、後を追う。

「気持ち良かったかいピーナッツ?また明日も会おうねえ。…おや、もう皆帰ったのかな。
…ん?これは何だろう」
部屋に戻ったドンチャックは、床に散らばったファックス用紙と、
バタピーのメモを同時に目にした。手から鉢が滑り落ちる。
「そ、そんな…バタピー、僕のために君まで…いやだ、そんなの嫌だ!」
だーっと部屋を飛び出るドンチャック。背中にはまだエンジェルの翼が輝いている。

(…あいつがマリオか)
サングラスに黒の皮ジャン、酒ビン片手に「ブランデー」になりきったバタピー刑事が
夜の盛り場をさまよい歩くうちに、殺気のこもった視線を感じた。
店のガラスにさりげなく目をやると、後ろに似顔絵の男がいるのが分かった。
(プロなら、ひとけのない場所を選ぶはずだ)
バタピーはわざと人通りの少ない路地へと向かった。かすかな足音が、ぴったりついてくる。
彼は胸元の拳銃を握り締めた。勝負は一瞬なのだ。
(必ず奴を倒さないと…兄さん、力を貸してくれるよね)
深呼吸して立ち止まる。後ろの足音が、やんだ。
(いまだ!)
振り向きざま拳銃を取り出し、バタピーは狙いを定めた。相手も銃を抜いている。
「バタピ〜!」
なんといきなり、ドンチャックの声が脇から聞こえてきた。
思わずそちらに気をとられるバタピー。

銃声が鳴り響いた。

(TO BE CONTINUED...)

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