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異説・幸福な王子(達)

Written by Yuriさん

その昔、街から遠く離れた場所に四体の像が建っていました。
きらびやかな衣装を身に纏い、美しい宝石を飾り付けていたのですが
彼らは揃って不幸に感じておりました。いわく、

(こんな場所で立ち尽しているのは意味が無い。東洋の‘無為の哲学’なら…以下割愛)
(体がうずうずしてしょうがないんだけど。服一枚になりたい)
(何で俺がこんな格好してなきゃいけないんだよ、街に連れてけっ!!)
(脱いだらもっとすごいのに…)

まず一人目が幸福になる機会に預かりました。
半開きになった口に風で運ばれてきた異物が飛び込んできました。
咳こんだ反動で宝石が零れ落ち、そのまま地面にぶっ倒れました。
「あ、鼻血…」のそのそと立ち上がって当てもなく歩き始めました。蹴つまづきながら。

次は二人目。
足元に集まってきた子ども達が一体の像を揺さぶり始めました。
果実を揺り落とすように宝石は零れましたが手の平に載ったエメラルドだけは最後まで像の
手の中でした。後、彼のシンボルが‘エメラルド’になったそうな。様々な意味で。

次は三人目。
貧しい女性が、一体の像の見目麗しい宝石を見て狂ったように引き離すと、
不思議なことに像に生気が宿り、体から石の欠片がぽろり、ぽろり。
「いやっほー!」奇声を発した像は女性の手をひっ掴むと街の方向へ駆けていくのでした。

最後の一人。
この像は宝石と美しいキモノを身に纏っています。
両脚は既にはだけているのですが、肝心の帯が解かれていません。
彼がストリップを始めるのはいつのことになるでしょうか。
でも、街の人々は「歯が鬼のようだ」と怖がってなかなか近付こうとしません。
心優しいこの王子に息が吹き込まれるのはいつになることやら。

夜な夜な「違うんだ、エメラルドが欲しいんだ!」という悲鳴が聞こえるとか聞こえないとか。

【THE END】
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