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For Four Members Only

Written by la chatさん

 繁華街のはずれの古い建物の中に、そのクラブはあった。煤けた店内には酒とタバコの匂いが漂い、そこにたむろする男たち同様、時間さえも澱んでいるようだった。
 店の奥には、落書きだらけの、かつては豪華であったろうドアがある。何年も磨いていなさそうな真鍮のプレートが貼られていて、そこには「For Four Members Only」と刻まれている。
 今日は皆さんをこの特別室に、ご案内しよう。
 ぎぃぃぃ・・・
B「あれっ、何でヨソの人が入って来るの?」
R「どーせ、ジムが観覧料とか取ってるんだろ?」
F「写真は撮らないでくれよ、dear、気が散るからね」
J「・・・7・8・9、あ、八種九牌ね。はい、流し、流しー」
B「えー!?せっかく、いい手が来たのに・・・」
R「肝っ玉が小さいなぁ、俺なら、国士とか字一色とかにトライするけどなー」
J「勝ち逃げするのに、役満なんかいらないよ」
 4人は、じゃらじゃらと洗牌を始めた。
F「じゃ、これで2本歯、じゃない、2本場ね」
B「フレディ、いやにあっさりしてるね」
F「いいの、いいの、僕の親が続くんだから」
 未練がましいブライアンにはかまわず、牌を積み始めると、
 がしゃ・・
R「あー、もうフレディったら、何やってんだよ」
B「僕のところまで、崩すことないだろうっ!」
F「F×××!ラッティを連れて来るんだった」
J「それぐらい自分でやりなよ」
 ジョンとブライアンに手伝ってもらいながら、フレディはやっと牌を積み終えた。
B「大体、今時、全自動卓じゃないなんて、どうかしてるよな」
R「ジョン、全自動卓って自作できないの?」
 金持ちなんだから、買ってもよさそうなものである。
J「配線は出来るけど、木材も扱うんだから、ブライのほうがよっぽどうまいと思うよ」
F「だめだめ、廃品で作った卓なんてゴメンだね」
B「何が廃品だってー!?」
J「違うよ、君のギターのことじゃなくて、僕の作ったアンプのことだよ」
R「それって、フォローになってないよ」
B「ほらっ!フレディ、早くパイ持ってけよっ!」」
F「何も怒ることないじゃないか・・・」
 配牌を終えて一巡目、ロジャーが「北」を切った。ブライアンの手が止まる。
R「・・・鳴くんなら、早く鳴きなよ」
B「うーん」
F「・・・始まったよ。しょっパナから、長考かい?」
B「うるさいなぁ、こういうのは最初が肝心なんだよ」
J「今からそんな悩んだってしょうがないよ。次に何が来るか、わからないんだから」
R「そりゃ、ジョンはわからないだろうよ」
F「何でも、わからない、わからない、だからな」
J「でも、もうブライに親が回ってこない、ってことは、わかってるよ」
R「・・・ったく、早くしろよー!」
B「あーっ!もういいよ、いらないっ!」
 そう言うとブライアンは、ヤマから牌をつかみ取った。
F「あっ!何?その噛み殺した笑いは?」
R「いいのを持ってきたみたいだな」
J「まだ、わからないよ」
B「そうそう、まだわからないよぉ・・・」
 しかし、ブライアンのツキはすぐに下降線を辿ったらしく、その後は黙ってツモ切りが続いた。
B「胃が・・・痛くなってきた・・・」
F「そこまで、悩まなくても。これはゲームなんだから、楽しまなくちゃ」
R「ねぇ、そこの君、見物してる君だよ!カウンターのおネーちゃんに、胃薬持ってくるように言ってくんない?」
F「僕には、ウオッカ・トニックを頼むよ」
R「それとマルボロを2箱!」
J「あ、僕も!カップ・ラーメン頼んでよ。ラーメンね、うどんじゃダメだよ」
 ああ見えて、人遣いの荒い連中である。
B「『北』ポン」
F「なーんだ、結局鳴くんじゃないかぁ」
B「大きなお世話だ。おい、3人でこっちに向かってタバコ吹かすのは、やめてくれよ」
 渋い顔をしてブライアンは、「西」を切った。
J「ロォォォォン!」
B「えぇっ?ダマテンなんて汚いよー!」
F「あぁ、僕の親が・・・大逆転が・・・」
R「ふーん、ピンフのアタマ待ちかぁ・・・あれ?これってフリテンじゃないの?」
J「え・・・?」
B「最初に切ってるじゃないか!」
J「・・・・・・」
F「やったね、ジョン!MISFIREだ」

 部外者は、そろそろ帰ったほうがよさそうである。

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