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青髭

Written by Yuriさん

ある森に一人の男が住んでいました。
男には三人の子供がおりましたが、ある日金の馬車が
お供をたくさん引き連れてやってきて、その中から出てきた王様が
男に言いました。
「お前の子供が一人欲しい」
男はお供が差し出した金銀財宝に目がくらみ、申し出を受けました。
早速、誰を嫁に差し出そうか考えましたが
次男は自慢の愛車でドライブに出掛け、
三男はいつものようにふらふらと出歩いて留守でした。
残っていたのは家でギター作りに精を出している長男でした。
王様は非常に急いていて、男は相談する暇もなかったので
(それよりも財宝がとにかくすぐに欲しかったので)
長男を無理矢理馬車に押し込め、自分は財宝を手に入れて満足気でした。

青い口髭をたくわえた王様は、男がよこした長男にかなり不満でした。
長男は王様よりも背が高く、王様のことよりも
ギターを愛おし気に抱えて彼には見向きもしませんでした。
「急ぐんじゃなかった…」王様は大きく嘆息しました。

「兄さんは?」
家に帰ってきた二人が金銀財宝を抱えてほくほくしている男にたずねました。
「あぁ、あいつなら今日家にやってきた王様にやってしまったよ」
「何だよ、相談も無しに!兄貴が可哀想じゃないか!!」
男とはどう考えても似つかぬ金髪の次男が男に喰ってかかると、
一緒に戻ってきた三男が慌てて兄を押さえました。
「ダメだよ兄さん、暴力は…」
「何言ってんだよ、お前は兄貴が大事じゃないのかよっ!?」
「でも父さん、ギターは持たせたんでしょう?」
「もちろんだ。あれがなければあいつはどうしようもないからな」
「なら良かった。それで王様ってどんな人?」
「豪勢な馬車に乗った、青い口髭の王様だ」
二人はそれを聞いて青くなりました。何故ならその王様は
人を喰うという噂があったからです。
兄弟二人は慌てて遠くにそびえる城に向かったのでした。

城では夜になっても王様が不機嫌そうに椅子にふんぞり返っていました。
相変わらず長男は彼に見向きもせず、ギターを奏でては
自己満足の世界にありました。
「あの男…私をだましたのか…」
王様は口髭をしごきながら、バナナにかぶりつきました。

さて、長男の身を案じた二人は慌てて城に駆け付けましたが、
目にしたのは半泣き状態の髭の王様と、吟遊詩人を気取った兄の姿でした。
(…兄貴は喰われかけているんじゃないか、元ネタでは)
(さあ。作者は何考えているのか理解出来ないよ。取りあえず話を進めよう)
王様は彼らに気付くと泣いてすがりつきました。
「お願いだから、この子を連れて帰っておくれ〜」
「王様って、人を喰うんじゃなかったっけか?」
「それは歯並びの問題なんだよ、そんな残酷なことする訳ないじゃないかぁ」
さめざめと泣く王様に二人はすっかり同情し、長男を男の待つ家へ
送り返すと二人はそこに居座るようになりました。
王様も二人が気に入ったようで、毎日楽しく幸せに過ごしましたとさ。

一方、出戻りの長男は商魂逞しい男と共に
自慢のギターで曲を作って売り出しました。
それなりに売れて稼ぎも出ましたが男はそれに満足せず、
長男を絞り上げて曲を吐き出させる日々が続いているようです。
「ふっふっふ、次はベストアルバムを出すんだ!(これで3枚目)」

おしまい。
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