オ ペ ラ 座 の 変 人
Written by Miss Queenさん
【プロローグ】
「さて、商品NO.39大変珍しいものです皆様、手作りのギター! 3万フランから はい いませんか では2万フラン…作者不明で素材は寄せ集めだが音は世界一です 1万フラン! 如何です、どなたか、ええい、持ってけ泥棒!10フラン」
「ハ…8フラン」
「又あなた様ですかカリスマセレブ、Deacon卿!メルシーボクー」
「だんな様インチキに決まってますよ」執事とおぼしき男が車椅子の白髪の紳士にささやいた。
「いいさあの人達の喜びそうな物だもの」
「次こそ本日の目玉品あのオペラ座の事件によって落とされ粉々になった伊万里焼のシャンデリアー いかがでしょう!」
「おおっ」会場からどよめきが起こった。Deacon卿と呼ばれた紳士は遠い眼差しをした。
♪ 「イマリー」…♪「PHANTOM OF THE OPERA」にのって始まり、始まり
【第1幕】
今から??年前のパリのお話。
あのオペラ座にゴーストが出るという噂が…そしてここはその舞台裏
「あたし怖いわロージーあんた平気?」
ロージーはぼんやり考え事をしているようで生返事ばかり。
「ねえ そういえば最近のあんた変よ」
親友のエドニーが顔を覗き込んだ。ロージーはオペラ座のコーラスガール。青い瞳に輝くブロンド見事な脚線、何を取り上げてもコーラスガールではぴか一…声以外は…。
「いくら高い声が出てもあのダミ声じゃねー」彼女は生まれつき超しわがれ声、何故オペラ歌手を志したのか理解しがたいがこれでは主役の座は回って来ない、彼女は悩んだ。
だが最近夢を見る。不思議な声を夢の中で聴く 黒いマントを翻して男が ♪It's A KIND OF MAGIC♪ と現われ自分をどこかにいざなって行く。光の川を下りさらに暗闇に♪Get down make love♪ Give me your ボッデエー♪やがてどこかにたどり着く、薄明かりの部屋 男の弾くピアノで歌のレッスンが始まる。ピアノの調べにのり切なく甘い男の声は響く。♪Never more…♪ロージーの頬を涙がつたう。 ロージーが その男を良く見ようとしても ろうそくの薄明かりだけでは…。ただ口を覆っている前に突き出した異常に大きなマスクと悲しげな黒い瞳が見えるだけ 「マスクの中でハモニカを吹くのかしら…」
「エーロ エーロ はい」
「エーロエロエロ…」
こうしてやけにエロっぽいレッスンは続き気がつくと明け方自分の部屋のベッドに戻っている。
あの男は誰…夢?もしもレッスン料を請求されたらどうしよう…
「ロージー聞いてる あんたにお客様だって」
振り返るとそこには穏やかな目をした若者が立っていた。
「ロージー覚えてる?」
「???」
「何年ぶりかなあ 子供の頃君に棒切れでよくひっぱたかれたよ」
若者ははにかみながら指をなめた。そのしぐさがロージーの脳裏に懐かしい思い出をよみがえらせた。
「John Johnでしょ 忘れるものですか、おしゃぶりJohn どうしてここへ」
「仕事の関係でね。オペラ座の前を通りかかったら見覚えのある名前が載っていたので、もしやと思い来てみた…嬉しいよ会えて」
「私も」
昔話に花が咲いていた その時
「何時までおしゃべりしているの!リハーサルがはじまるわ」
背の高いやせた神経質そうな黒いドレスの女性が現れた。
「どなた」
「マダムMay、バレーの先生 何事にも懐疑的なの、黒タイツ姿で首をかしげながら踊るんだけど 何につけても悲観的なの」
「悲観主義?そのタイプはひっつめ髪だけど彼女はカーリーヘアーだ どこかで…」
「私 もう行かなきゃあ」
「又会える?」
「もちろんよ」彼女は何か幸せの予感を感じた。
「John 相変わらず優しい方…」
リハーサルは進行して行く。今日も何度も人が怪我をしたり物が落ちて来たり不気味な雰囲気だ。一座のプリマドンナ マダムバルセローナが自慢のソプラノを披露している。
「ちょっと そこの田舎者おどき ここはあたしが目立たなきゃいけないざますの」
ロージーは突飛ばされた。その時突然不気味な笑い声が劇場中に響き名物の伊万里焼シャンデリアが大きく揺れ始めた。プリマドンナは悲鳴をあげついに「こんな舞台やってられないざます やっぱりゴーストがいるざます」と豊満な体をゆすって去っていった。
支配人は途方にくれた。
「これじゃあ幕が開けられん、どうしたらよかんベ−」
マダムMayが進み出た「ムッシュ 私にいい考えが。ロージーならきっと代役が務まります」
「なに?コーラスガールだぞ」
「でも最近良くレッスンをつんでいるようです 歌ってごらん」
ロージーはおそるおそる歌い始めた がま蛙のようなイントロ、みんな耳を塞いだ。
「もう結構!」
しかしその声は徐々に美しいソプラノに変わって行った。
「これ私の声?すごい やっぱ私は天才だわ!」
数日後見事プリマドンナになったロージーの楽屋にJohnが花束を持って現れた。
「昔と変わらないね。一段と歌がうまくなったね」
「そう亡くなったパパが歌の天使をよこしてくれたの、天使が教えてくれるの」
「…ロージーお疲れの様だから僕帰る…」
なぜかそそくさと帰って行った
「素敵なJohn Deacon卿…優しくてお金持ち…眠くなってきた…」
その時不思議な声が彼女の名を呼んだ
「ロージーロージー My Angel、おいでわたしと音楽の国へ」
ロージーは操られるように立ちあがる、2人を乗せた船は又闇の中に消えていった。
「♪Get down make love ♪Give me your ボデエーェェェ」
明け方自分のベッドで目覚めた彼女の耳にはあの不思議な声が残っていた…
「ボッデーエぇぇぇイ 」
【第2幕】
今日は仮面舞踏会 少年隊も特別参加、皆大はしゃぎ。Johnとロージーも幸せいっぱい。
「ねえ、ここで僕たちの婚約披露しようよ」
「嬉しいけどしばらく秘密にして」
「どうして?」
「今は聞かないで」
2人は踊る,Johnはくるくる回る、ロージーはタンバリンを叩く
宴もたけなわの其の時である
♪マスカレード マスカレード…・ムスタファー ムスタファ マスカレームスタファ ムスタファー サラマライクン…その声に振り向いた人達は恐怖の声を上げた。
「ウギャーーー」
そこには異常に前歯の大きなドクロのマスクをつけた怪人が立っていた。
「ロージー、なぜそんな男にのぼせる!金か?」
「何を言うの あなたは誰?私はお金なんて興味ないの」
「嘘つけー」
Johnはうろたえていた
「ロージー誰こいつ、又変った奴をナンパしたんだねー」
「うるせーそこのあほボン、いいかロージー、 私が歌を教えてやったお蔭でお前はプリマドンナになれた そのお返しがこの裏切りか!」
「あーそこまで言う?私1度だって教えてなんて頼まなかったわ」
「あーそこまで言う? なら断れよ恩知らず!私の心はズタズタだ もうレッスンも止め!私の心は元には戻らぬこれのようにな!」
オペラ座名物の大きな伊万里シャンデリアが激しく揺れ始め皆が凝視する中 轟音と共に落下した
「ワハハハ」男の声が響いた 粉々になったシャンデリアをJohnは呆然と見ていた。
その時ロージーの悲鳴がした「Help me」
「ロージーどこだー」
「John…」遠くで彼女の悲鳴が響きやがて消えていった
「クソーどんなことをしても彼女を助け出すぞ奴を地獄に道づれだ」
薄暗い洞窟の中ロージーは目を覚ました。男が1人ピアノを弾きながら歌っている
「なんて淋しい後姿なの」
「♪Mama let me back inside…♪」
「やっぱり気になるあのマスク!何をくわえているのかしら…今がチャンス!」
ロージーは背後から忍び寄り男のマスクを剥ぎ取った
「やめろー!」男の悲痛な声が響いた。
手で口を覆ったが既に遅し「うっそー…すごい出っ歯」
「バカー出っ歯じゃない!これは八重歯!!」
「ちーがう 私は歯には詳しいの!それは出っ歯、立派な出っ歯、何と言おうと出っ歯」
「や・え・バー」
「で・っ・パー」
「やめろ その3文字は 言わないでくれ Mamaは八重歯だと言って育ててくれた でも物心ついた頃皆にこの歯の事でいじめられ、人を憎むようになってしまった。不憫に思ったmamaは僕にこのマスクを作ってくれた」
「 Mother love…?」
「アッハン…すっかり人嫌いインタビュー嫌いになった俺は放浪の末偶然見つけたこの洞窟で大好きなオペラと共に一生ここで暮らしていこうと決めたんだ」
「ごめんなさい 私ひどい事言ってしまった」
「お前は俺のエンジェル一生ここで暮らすのだ あの歌も唄えんヘナチョコ男のどこがいい」
「お金 いいえ性格…全部ダーイ好き」
「説得力に欠ける くそあの目障りなあほボンを抹殺してやる」
「止めてあなたは人殺しなんかになっちゃだめ」
「もう1人やっちまった 引き金引いたら死んじまった」
「♪ママミアママミア♪」
一方地上ではJohnを中心に捜索隊が作られていた。
「誰かあの男の事を知っている者はいるか?」
「はーい」マダムMayが恐る恐る不安げに手を上げた
「誰かに聞いたのですよ 私の考えではありませんよ、あのー早い話が…」
「早く言いなツーノ」
「このオペラ座の地下室のもっと下に洞窟があると言われています。その辺りにいるのではないかと、時々地下から歌声が聞こえる時があります、私には及びませんがそれは美しい声だそうでございます、性別不明ですが」
「そこに案内してくれ」
「えー私がですか…めっそうも無い」文句タラタラのマダムMayの腕を引っぱりながら捜索隊は地底を目ざして進んでいった
【第3幕】
ロージーは剥ぎ取った大きなマスクを見つめながら泣いていた
「何てかわいそうな人 美しい暗闇の女王 いえ王子 あなたは一体どんな愛を知っていると言うの、あなたに愛を教えるために神は私をお造りになったのかも知れない」
「近づくな この醜い顔を見ないでくれ」
「いいえ あなたは美しい その歯にキスさせて」
「俺の急所に触れるな!ウアー…」
ロージーは彼の唇に柔らかな唇を押しあてた。
「舌が入って来た事はあるけど歯は初めてだわ…クセになりそう」
「だめだ もうおしまいだ FIRST KISSがこんなに敗北感に満ちたものとは 惨めだお情けはごめんだ」
「私ここでずっとあなたの傍にいるわ」
「帰れ もういい お前の世界に…お帰り…1人にしてくれ」
「だめ 一緒よ」
ロージーは男を抱きしめた
「私歯の勉強をした事があるの、きっと直してあげるわ、そうよひげを生やせばいいのよ」
彼女はその間何とか逃げ出すことを考えていた、だがもう少しレッスンが必要である。黒い瞳も気に入っていた。本音を言えばJohnを得て富をとるかこの男を選び歌手の名声をとるか迷っていた。
「ひげなんて絶対いやだ」
「あのーもういいかなあ ロージー」
振り返ると息を切らしたJohnが立っていた
「ずっとそこに?」
「うん…だけど声をかけ辛くて」
「どのへんから見てたの?」
「うーんキスは見た」
「わちゃー …だって殺されるかと思ったの、無理やりよ 怖かった 助けてJohn」
「オイオイそりゃないぜ 白々しい チェッ だから女は嫌いだ信用できねえよ!返せよ」
男はマスクを取り返し再び口を覆った
「あなたどうしてそのマスクを…」
いつの間にか現れたマダムMayが驚愕のまなざしで男を見ていた
「そのマスクは私が息子に作ってやった物 なぜそれをあなたが」
「小さな時ママからもらったものさ八重歯を隠すために」
「ヤエバー!じゃーお前はフレデッパ!! 私の息子」
「どうして僕しか知らないその名前を知ってるの」
「ママよあんたのママ」
「うそだ俺を捕まえるための小芝居だ」
「覚えてる?毎晩酒を飲み私に暴力を振るう義理のパパをある晩お前はピストルで撃って家を飛び出した」
「ああ頭に銃を突きつけ引金引いたら奴は死んじまった」
「NO NO NO それが玉が入ってなくて あいつは音に驚いて気絶しただけ」
「そうか 僕は殺しちゃいなかったんだ」
「でも弟のお尻に噛みついたことがあるわ 下の子に手を取られ勝ちになり 坊やのおしめを替えてたある日「僕のママを取るな」てお尻に噛みついたの Johnのお尻には大きな歯型が残っていたわ」
「ママー」
「フレデッパ」
歩み寄った2人そこに裏返った変な声が
「待って僕大きな歯型がお尻にあるJohnという者だけど」
困惑した顔でお尻をさすりながらJohnが進み出た。
「ママは狼にかみつかれたって話してくれた」
Mayはいぶかし気に彼を見た
「ママの名前はもしやメアリー?」
「うん」
「ああー神様失った2つの宝を今日1度に見つけました お前は下の息子 ジョンジョロリン!」
「僕そんな変な名前じゃないよ」
「これはお家での愛称」
「待ってくれその響きジョンジョロリン 何かを思い出す ちょっと来いよ」
男はJohnを物影に連れて行った
「パンツ脱いで」
「いやだよー」
「いいから見せろよ」
「ちょっとあんた達変なことしないでよ 歯のことは私に聞いて」
ロージーはもはやカヤの外。
「そんなとこ触っちゃだめだって!」
「いいから」
「咬んじゃだめだって」
「この雪見大福のような触感覚えてる」
「僕もカンナの様な感触思い出した」
「見てママ歯型がぴったりだ」
「本当大きな歯型」
「でも僕のママはちゃんといるよ」
Mayは鼻をかみながら言った
「フレデッパが出て行き男も出て行き女手ひとつの生活も苦しくお前をぜひ養子にといってくれた夫婦にお前を託しもう1度バレーの世界に戻ったの あんたの今のママメアリーは親友だった 私は硬い体を鍛えなおし苦労の末ここのバレー教師の座を勝ち取ったわ」
「ママそんなに苦労をしたの」
「可哀想なママ」
2人の息子は母を抱きしめた
「ママ 兄さん 僕の家においでよ」
「行くいく」
「あれ ロージーまだいたのレッスンはおしまい帰りな」
「ママはこのオペラ座が好きなの フレデッパが歯がならママはこの髪型で勝負よ、ライバルは鶴瓶よ カミガタお笑い大賞 を目指したりなんかしてホホホ」
「俺オペラを聴くだけじゃなく舞台に立ってみたいんだ」
「それはいい考えよお前は声は良いから」
「声は?」
「ママ支配人と親しいの 頼んでみるわ」
「私の相手役にしてあげる」
「俺さあプリマドンナになりたいんだ」
「何てー!!」
ロージーは慌てたどう考えても彼の方が上手い
「その歯じゃ女役は無理よ」
「君がいい方法を教えてくれたじゃないか」
「??」
「じゃあ僕は兄さんのパトロンになる」
「だめあなたは私のパトロンでしょ」
「悪いね兄さんのためなら何でもやる」
「こいつー」
「兄さーん」
美しい兄弟愛である。
【エピローグ】
それからしばらくしてオペラ座に今も語り継がれる伝説のスーパースターが誕生した
4オクターブの声を持つ奇跡のプリマドンナ
ヒゲの麗人
そして人々は彼を賞賛しこう呼ぶ
「 オ ペ ラ 座 の 変 人 」
【完】