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西  遊  記

Written by Miss Queenさん

[ 配役 ]  
三ジョン法師: 昔は鬼退治などしたヒーローがだ今や見る影もない、大人になった一寸法師
ジョンゴクウ: 岩から生まれた我がままザル・寂しがりやでエゴイストだが、三ジョンが大好き
サゴジョン: IQメチャ高の河童、何故か関西弁・臆病であわて者・どっかぬけてるいい奴
ジョンハッカイ: 酒と女無しの人生なんて考えられない美形ブタ、常に鏡を携帯、意外に武闘派

【プロローグ】

 昔々ある所におじいさんとおばあさんがおり、おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に。洗濯をしていると大きな桃がドンブラコッコと流れて来たので家に持って帰り切ってみると小さな男の子が現われました。
≪ここまで桃太郎伝説≫

 その子に「一寸法師」と名付け法師が大きくなった(と言っても一寸2分程度)ある日「おら 都さ行きてーだ」と言い出したので針の刀を持たせて送り出しました。都では鬼退治などしてお大臣様に気に入られ娘のベロニカ姫を嫁にもらい大そうな出世をしました。姫が鬼退治の戦利品の小槌を振ると一寸法師は約188cm(63寸法師)の立派な青年になりました。もう一寸法師とは呼べないし63寸法師とも呼びにくいので京都の三条に館を構えていたため「三条法師→三ジョウ法師→三ジョン法師」と改めました。
≪ここまで一寸法師伝説≫

 やがて三ジョンも年月を経て30歳を過ぎた。しかし2人は子宝に恵まれずベロニカ姫は悩んでいた。ある日姫は都の噂で、何でも西の果て天竺にある有難いお経を夫婦で読むと子宝に恵まれるという話を聞きいた「あーた、天竺に行きなさい」「えー、もうそんな体力残ってないよ」「昔は鬼退治もしたでしょつべこべ言わず行くのよ!」「はーい、トホホ 養子は辛いよ」ベロニカ姫は何故か どら焼きとバナナときゅうりとPLAYBOY誌を持たせた「何これ?」「燃えるごみの中から使えそうな物をもってきたの」「お前は相変らずしっかり者だな」「さあ早く行って!!!」「はーい」

【第1幕】

≪ここより西遊記≫
 「何か金のかかってない餞別ばっか…」三ジョン法師はしぶしぶ馬に乗り館を立った。「都からどうやって天竺に行くんだよー」もう泣き言を言い出した。京を離れしばらく馬を進めていると誰かの呼ぶ声が聞こえた。「三ジョン様 三ジョン様 お腰につけたどら焼きを1つ私に下さいな」見ると青い色をしたオバQの出来損ないの様な妙な生き物がいる。「ボク ドラエモン それくれたら どこでもドア使わせて上げる」「お前が噂のドラエモンか!2つやるから天竺まで頼むよ」「それは無理 天竺は圏外だもん」「この本もやるから」と必殺のPLAY BOY誌を出した。「ゴクッ…見たいけどボク未成年だから…」「じゃあ 行ける所まで」「ではどうぞ」「往復だよー」「えーっ まあいいか、行ってらっしゃい。責任持てないけど…」急ぐ余りに馬を忘れて行った。

 ドアが開くと外は荒涼とした砂漠だった。西も東も分からない土地で途方にくれ砂の上に座り込んだ。「もしもし、そこのお方お腰につけたそのキュウリ1つ私に下さいな」背後からか細い声が。「わては河童だす。頭の皿の水が乾いてのども渇いて死にそうです。そのキュウリ欲しい…」「それは気の毒だな、いいよ2本上げる」「すんません、お礼に何か、出来ないこともおますが…ともかく命の恩人だす」「天竺とやらに行きたいのだが場所が分からず途方にくれているのだ」河童の目が輝いた。「天竺でっか!わて死ぬまでにそこに行って見たかったんや、一緒に行きまひょ」てなことで2人は西に向かって歩き出した。夕闇が辺りを包んできたので野宿する事にした。初めてみる砂漠の夕暮れそれは美しいものだった。河童は星空を仰いでつぶやいた。「わては星が好きだんねん、星を見ながら歩いとったらここまで来てしもて難儀しとったんや、あれは昴、さそり座、あれはオペラ座…隣が銀座…便座…」「何故天竺に行きたいの」「そこにあるお経を読むと願いが叶うと聞いて…わては天文学者になりたいんや」「フーン、ロマンティックだね」「三ジョンはんは?」「ウン 同じ目的」何となく子供を授かるためとは言えなかった。「なあ、わてに名前つけてくれまへんか?子供の頃からサゴと呼ばれてたんやけど」「ふーん、何でもいい?文句言わない?」「へえ」「んーんと…サゴジョンなんてどう、私の名前を取って」「ソラよろしいわ、おおきに」こうして関西なまりの河童と三ジョンは眠りに入った。

 翌朝2人は陽が昇らないうちに出発した。しばらく行くと辺りに木々の茂る山岳地帯に入った。ひんやり涼しいので休憩を取っているとどこからとも無く不思議な声が…♪レ-ローレーロレロ♪木々がざわざわ揺れ空から毛むくじゃらの生き物が降ってきた。「オーライ ストップ、腰につけてるそのバナナ2.3本おくれ」「誰やお前は この方をどなたと心得る先の副将軍…」「違う違う、ただのヒラ侍」「お前達田舎者で道に迷ってんだろ?そのバナナくれたら用心棒になってやるぜ、その気になれば飛べるし、3分超えるとヤバイけど、それにこんな如意棒も持ってんだぞ」マイクスタンドを切ったような伸縮自在の金棒を振り回した。「いいよ、その代わり…」「三ジョン様こんな調子のええ奴 怪しおまっせ」サゴジョンがささやいた「コラ、俺様を誰だと思ってんだ、聞いて驚くな、その名も天下に鳴り響いたおサルのゴクウ様だ!」・・・「知ってるか?」「イイエ」…しばし3人の間に気まずい空気が流れた。「天竺ツアーに参加する?」三ジョンは事の次第を話した「面白そー、行ってやってもいいぜ、で おめーらどっから来た」 「都から」 「黄河だす」 「俺様はインド洋の小さな島の石から生まれたんだ サア行こうぜ願いが叶う天竺とやらへ ダーリン」強引なサルはいつの間にかリーダーになっていた。「こら一波乱ありそうやなあ」河童は皿を撫でた。
 
 数日後一行は潮の香りのする丘に出た。「ちょっくら偵察に」ゴクウが空を飛んで行った。3分後ゼーゼー言いながら戻って来て「ウミー」と叫んでバタンと貧血で倒れた。危うく3分オーバーするところだったらしい。眼下に真っ青な海が広がった「わーい 海だ海だ!!」皆子供のように水に入って戯れた。「cho-気持ちイー」「三チャンは色白ですね」いつのまにか着物を乾かしている側にゴクウが近づいてきた。三ジョンは時々ゴクウの黒い瞳に見つめられるとドキマキする。天竺について来る訳を聞くとサルはポツンと言った「おいら本当の幸せが欲しい…」「ゴクウは幸せじゃないのか?」「わかんねーよ、おいら岩から生まれたんでおっかさんがいないんだ。] [Mother Love?」「アッハン」「母親が欲しいんだね」「違うわーい、でもおいら岩から生まれたから正真正銘のロッカーだぜ、ところで河童に聞いたよ俺にも名前をおくれよ、ダーリン!」「何でもいい?文句言わない?」「Yes」「ジョンゴクウは?」「OK!」「ところでジョンゴクウ、…すごい毛むくじゃらだな…ちょっと触ってもいいか?」三ジョンはゴクウの胸毛の辺りを指で撫でた。とたんにゴクウの目つきがトロン、体をくねらせ荒い息遣いで迫ってきた。「ゴクウどうした!!」「ダーリンもしかして…あんたもかい?」「何!ナニ!!なに!!!」「寝ている子を起こしておいてナニはないぜダーリン、俺はいつでもOKだぜ」「何、ナニがOK?」「とぼけやがってこのー」「ヒェー、何をする!」三ジョンは押し倒されあわやと言う時だった。 ゴクウの目に見たこともない金色の光が入った。

 「何やってんの、こんな所で大の大人が喧嘩かい、よしな」ゴクウの目がハート型になった「Beautiful!美形!☆5つですー、三チャンまだいたの、あんた帰っていいよ」三ジョンは蹴り飛ばされた。輝く金髪、海より蒼い瞳・透き通るような白い肌「何見てんだよ」顔にそぐわず超ハスキー、シベリアンハスキー級、惜しいことには若干おデブ。「あのさーあの本」「あっPLAY BOY!」「ウン、見せてくんない?」「いいよ俺のだけどア・ゲ・ル」「嘘ついたらあかんで」サゴジョンが割って入った。「あれは三ジョン様のやろ」「いいじゃんか、もう読まないんだから」「わてまだ読んで…」 「いいよ」三ジョンが砂を払いながら立ち上がった。「欲しいのならあげる、その代わりこのツアーに参加しないか」ゴクウの目が輝いた。「行こうぜーダーリン、何でも叶うお経をもらいに行くんだ」「面白そうだ、これ以上カワイ子ちゃんに追いかけられないようになりてーや」鏡とクシを取り出し髪を直した。「行くか!俺 ハッカイ、こう見えてもブタだぜ」「キザな奴や、美形でもブタはブタや」河童はハンサムが気に入らないようだ。こうして4人揃って天竺ツアーは出発した。

【第2幕】

 道中のどが渇いたので水を探していると「禁断の実取るな―釈迦―」と書かれ赤い実がたわわになった木を見つけた。「構うもんか」三ジョンの注意も聞かず腹ペコのゴクウは片っ端から食い荒らした。「あー満腹」 その夜ゴクウは夢を見た。お釈迦様が「サルめよくも私の果物を盗んだな!罰として魔物に行く手を邪魔させてやる、だが皆力を合わせ戦い勝利すれば3匹を人間にしてやろう」とのたもうた。「腹ヘリコプターだから10や20個いいじゃんか」「生意気なサルめタメ口をきくとは!一番DANGEROUSな奴らを送り込んでやる」ゴクウは目が覚めた。「あー、又怒らせちまった」 一行は再び西に向かって歩き始めた。道すがらハッカイが三ジョンに近寄ってきた。「あいつらに聞いたよ。名前もらったって、だから俺も今日からジョンハッカイにしたよ」要領のいいブタくんであった。2人の話しているところをゴクウは羨ましそうに見ていた。「やっぱ三チャンも捨てがたいかなあ…」

 砂漠にさしかかると昼間だと言うのに辺りが暗くなり突然動物のうなり声が聞こえた。「ヒエー」サゴジョンはゴクウにしがみついた「離せよ、お前は好みじゃないよ」霧が深くなり生臭い空気が漂ってきた… グルグル…獅子のような唸り声が近くでした。「出た!あそこだ」ジョンハッカイが指さす先に大きな石の獅子のようなものが座っていた。「俺様はスフインクスだ お前たちここを通りたければ問題に答えろ、もし間違えたら石になるぞ」「それって一方的です」三ジョンは抗議した。「うるさい!お前が相手か」「いいえ・・・」否定したが遅かった「皆すまねえ、俺がお釈迦様を怒らせたんだそれでこんなもんが出てきたんだよー」ゴクウはべそをかいた。「いいか 朝は4つ足、昼は2本足、夕方は3本足のものは何だ?」「化け物!」「カーン外れ!」三ジョンの体が見る見るうちに石になって行く「待て、ご主人様を石にはさせへん、わてが相手や!」いざとなると意外に勇敢な河童に他の2人は声援を送った「ヒューヒューカッコいいぞ河童」「こいつは頭良いんだぞ 三ちゃん意外にイケテないぜ」 サゴジョンはあぐらをかいてしばらく目を閉じた。「…わかった、それは人間や。人生を1日にたとえて赤子の時はハイハイで4つ足、成人すると2本足、老人になると杖をつくので3本足、どうや」「マ・イ・ッ・タ・・・」三ジョンの体が元に戻ってきた。ガラガラ…スフィンクスの体が崩れだし地面が揺れ辺りは砂ぼこりで何も見えなくなった。ほこりがおさまった時皆起き上がって顔を見合わせた「あっ、サゴジョンの頭のお皿がなくなっている!」確かにサゴジョンの爆発ヘアーからお皿が消えていた。ゴクウはお釈迦様のお告げを思い出した。「あっ、甲羅もなくなった」「お前人間になったんだぜ」ゴクウは夢のことを話した。サゴジョンは照れくさそうに笑った、「人間になった気分は?」「ええでー」「俺もブタなんて卒業したくなったぜ」ジョンハッカイは羨ましそうに鏡を見た。

 長い旅をして気心が知れ夜は歌や酒を楽しんだ。ゴクウはなかなか芸達者だったが三ジョンはニコニコ笑って聴いてるだけで一向に歌わなかった。「きっとすごい音痴なんだぜ」「俺この前三チャンが鼻歌歌ってるのを聞いて意識もうろう…」ブタが鏡を見ながら言った。「お前いつも櫛と鏡をもってんだな」「きざな奴や」「紳士のエチケット、俺ってブタの鏡だろ」3人は笑ったが妖怪を思い出しそそくさと床に入った。何日か歩くとポツポツと人家が見えてきた。夕方ひっそりした村にたどり着いた。いやに村人が少ない。一行は宿をとることにした。宿の主人は何となく落ち着きがない、夜になると従業員もそそくさと姿を消した。食事を運んできた主に三ジョンは訊ねた。「村人が少ないし、皆逃げるように帰ったが何か訳でも?」「実は夜になると怪物が村人を襲ってきます。そいつを一目でも見ると恐ろしさのあまり石になってしまうのです」「ダーリン、いよいよお次が出たぜ」「どんな化け物だ?」「それは美しい女なのですが恋人に捨てられ恨みの深さから髪が蛇と化しついに怪物になったのです」「ジョンハッカイ相手はお前じゃねえのか」「ドッキ、名前は?」「メドーサ…」「えーっ!」「どうした」皆凝視した。「いや」(実はR氏のミドルネームです)「あのー私は帰らせて頂きます」主は下駄もはかずに走り去った「皆、どうしたものだろう」とにかく朝まで布団にもぐりこんでいればやり過ごせるだろうと4人一つの布団にもぐりこんだ。いつの間にか三ジョンの背後にゴクウがへばり付いている。ゴクウの後ろはジョンハッカイ、ゴクウは真ん中のBEST POSITION を KEEPした訳だ。頭から布団をかぶり4人は身を硬くしていたがゴクウはルンルン。「サンチャーン」と耳元に熱い息を吹きかけてくる、その時どこからともなく生臭い匂いが…「この前と一緒だ、くさいぜ!」「出たか?」「ごめん出た、私のおならが…」「三ちゃんサイテーバカ、こんな中で!クッサー!」一斉に布団を跳ね除けた。すると枕元に頭巾をかぶった綺麗な女が立っていた。

 「誰?何か用?」「女将です、ご挨拶に…」と言いながら頭巾を脱ぎかけた。「みんな、逃げろいくら女将でもこんな時間に来るもんか!」ゴクウが叫んだ。頭巾が外れた瞬間髪が大きくうねり恐ろしい何十匹と言う蛇になり女の形相も変った。「メドーサだ!」「河童、三ちゃん目を合わすな」2人は目を閉じて座り込んだ。ゴクウが如意棒、ジョンハッカイが2本の棒で迎え撃つ。「あんたいい男ね、ちょっと似てるわあの人に」ハッカイは何を言われても目を合わさないよう後ろに回った、が多数の蛇が絡みつき邪魔をする。2人は跳ね飛ばされた。女は髪を振り乱し三ジョンに抱きついた「あなた、私よ」長く忘れていたヴェロニカ姫の声だった「ヴェロニカ」三ジョンの大きく見開いた目には真っ赤な口をあけ笑っているメドーサが映った。「オホホ、見たわね!」その瞬間三ジョンは石になった。2回目の経験である。サゴジョンはうつ伏せになっていた。「母さんだよ」メドーサは猫なで声を出した「騙されるもんか」「おばあちゃんだよ」「とっくの昔に死んだよー」「疑り深いやつめ!…あっ100ポンド札」「どこに!!」サゴジョンが顔を上げたとたん石になった。河童は金に弱かった。メドーサは振り向きざま目を閉じているゴクウに襲い掛かった。「可愛いメドーサちゃん、こっちだよー」ハッカイが超ハスキーなしびれる声で叫んだ。女は愛しい声に振り返った。「あなた!」しかしそこには髪を振り乱す恐ろしい形相の怪物がいた。「私じゃない!!」手で顔を覆ったが彼女は自分を見てしまった、無数の蛇をまとい牙をむき出し赤い大きな口をあけた自分を見た。ジョンハッカイの差し出した鏡の中に恐ろしい自分の姿を見た。「私じゃない…」見る間にメドーサは石になった。呪いが解け三ジョンと河童は人間に戻った。「すごいよ、ハッカイ」「頭いいよ」ハッカイは照れくさそうに言った。「鏡は心も映す、河童がいかに金に弱いか分かったぜ」「言わんといて」「あっシッポがとれてる」「人間になったんだ」「腹もへこんだ」「それはないない」ふざけ合ってる仲間をサルは淋しげに見ていた。

 焚き火をしながら三ジョンが聞いた。「ゴクウ何故お釈迦様に逆らう?」ゴクウはモジモジしている。「親のように甘えたいのではないか?」真っ赤なおサルの顔がますます赤くなった。「違うわーい!」「実は私も桃から生まれて親がいないんだ、お釈迦様を見ると親ってこんな感じかなと思うのさ」「三チャンもおっかさんがいないの?」三ジョンはうなずいた。「そうかー仲間か」それ以後元気になったゴクウは道中ますます三ジョンに甘えてくる。ゴクウが手をつないできた、その時突然目の前が真っ白になった。大きな白い物が行く手をさえぎっている。ハッカイが押してみるとズブッと吸い込まれてしまった「息が出来ないー」悲鳴を上げるハッカイの足を皆で引っ張った。何かが体に巻きついた。河童が白い大きな壁を見上げた。「お前は一反木綿やろ!」「何それ?」「一枚布の化け物で相手に巻きつき絞め殺すらしいで」「逃げろー」化け物は又しても一番弱そうな三ジョンをターゲットにしてきた。逃げ回る三ジョンをついに捕らえ体に巻きつき空に飛び上がった。ゴクウが必死で一反木綿のすそに噛みついたがズルズルと引きずられて行く。他の2人はゴクウの足を引っ張った。裾を噛んで離さないサルの前歯が徐々に前に出てきた。「…歯が抜けても放すもんか」一反木綿の裾がゴクウの血で次第に赤く染まってきた「布をかじると歯から血が出ませんか?シソーノーローかもね、ケケケケ」一反木綿は憎まれ口を叩く。「ゴクウ、もう放せ、私はいいから」ゴクウは首を振るばかりその時何を思ったか三ジョンは突然歌を歌い始めた。歌かどうか不明だが他に考えようも無い音の組み合わせであった。聴く者にとっては殺人音波だった。「やめてくれ!味方まで殺す気か」河童とブタはのた打ち回りサルは失神し化け物は墜落した。「必殺技だ!」三ジョンはミエを切った。「こんなすごい武器聴いたことが無い」「脳味噌腐りそう、それよりゴクウだ」

【第3幕】

 運悪く落下する時大木に激突したらしい歯が幹に刺さり大木に止まったセミ状態だ。「しっかりしろ」血だらけの顔を拭いてやると何と前歯が異常にとびだしている。「すげーデッパになってる」「笑ろたらイカンけどおもろいなあ」皆で押したり引いたりしたが無駄であった。「気にすんな、勇者の印だ」 「ゴクウありがとう」三ジョンは一反木綿を燃やしながら言った。化け物がさえぎっていた視界が広がり天竺まであと5kmの立て札が見えた。「おい 皆あと少しだ」振り返ると目を閉じたままの(口は閉じられず)サルが横たわっている。「ゴクウしっかりしろ」「目を開けろ…」「ゴクウ…」ゴクウは動かなかった。「死んじゃってる」「ウソやろ」3人はゴクウをゆすった。「起きろよー」陽が傾く頃3人はゴクウがもう帰ってこないと言う事実を受入れざるを得なかった。三ジョンは叫んだ「お釈迦様あなたは本当に神なのですか!神なら何故戯れにこんな善良なものの命を奪うのですか」三ジョンは天に向かい泣き叫んだ。「果実の10や20取ったくらいで」「いや三ジョン10や20個も100回200回となるとチト痛いぞ」お釈迦様が現われた。「えー初犯じゃないの」「チャウチャウ前科59犯」「でも殺さなくてもいいだろ!」ハッカイが気色ばんだ。「生き返らしてーな、頼むわ」河童は泣きじゃくりながら地面に頭をこすり付けた。「いくらワシでも死んだ物は生き返らされん、成仏はさせられるが」明け方まで3人は泣いた。陽の昇ってきたとき「待て考えがある、天竺まであと5kmだ急ごう」三ジョンが叫んだ。ゴクウを水仙畑において一行は走った。1秒も休まず走った、死ぬかもしれないと思ったがそれでも走った。天竺と書かれた門をくぐりコーナーを回ると本堂が見えた。「お経を3本」「あちらです」天竺も近代化し、何とお経も自動販売機で売っていた。「ウワー小銭が」「お札も使えます」巫女が呑気に言った。それぞれお経を片手に元来た道を又走った―ほとんど走れメロス状態―「三ジョンさん何を考えているか分かったよ、俺のお経を使いな、まだしばらくはカワイ子ちゃんに囲まれていてえよ」「ワテのを使いましょ、お経に頼らんでも勉強したら学者になれるんや」「いや俺の願いが一番どうでもいいことだ」心臓が止まりそうになった時元の水仙畑に着いた。3人同時にお経を広げた。「ゴクウを生き返らせて下さい」3人同時に願い事を口にした。「三ジョンさんあかんあんたの願い分が無くなるで」「折角苦労して遠い国から来たのに」「ゴクウは私を救うため命を投げ出したんだ」「だめ!」「あかん!「いや!」3人が説得しあっているとお釈迦様が現われた。

【第4幕】

≪ここからチャンピオン伝説≫
 歯の飛び出たゴクウを胸に抱いている。「ゴクウだ」「お前たちの友情に心を打たれた、生き返らせてはやれんが極楽に連れて行くぞ、いいなゴクウ」「ゴクウ、いやだと言え」「ここがいいと言え」「ゴメン俺皆が好きだけどこの旅が終わっても帰る所が無い 皆あったかい家庭があるだろ」「・・・」「俺お釈迦様のところで修行するよ」「・・・」「じゃあな」「待って、いつか又4人がめぐり会えるよう約束しよう」「いつかきっとやで」「その時絶対覚えてるぜ」「いつの時代かきっとなー」ゴクウはお釈迦様に抱かれ天に昇って行った。「やっぱ次の人生もデッパかな」「そしたら分かりやすいわ」「楽しみだな」「じゃあ俺嫁さんのところに帰るわ」「お前妻帯者か!」「言わなかった?」とぼけるハッカイ「ワテおばあちゃんのとこへ帰りますわ」「おばあちゃん死んだって言ったじゃん」「へへへ」「三ジョンさんはどうやって帰る?」彼はかびたどら焼きを取り出した。「賞味期限切れだがやってみる」「日付改ざんしたら世間のバッシングでっせ」「あっ、こんなところにどら焼きが!」三ジョンが小芝居を始めた。「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン」何だか違うキャラが出てきた。「ハクション大魔王だ」「何かヨーですか」「これやるから私の家まで続くどこでもドアに行ってくれ、チョッとかびてるけど」「気にしなーい」パタパタとカビを落とし大魔王は飲み込んだ。「ハイ乗って」「じゃあ皆又必ず会おうな」「きっとだぜ」「忘れるもんでっか」3人の頬に涙がつたう。「元気でなー」「忘れないよー」空飛ぶじゅうたんから見上げると入道雲が出ていた。それはサルの形に見えた。

【エピローグ】

 こうして三ジョンは長い旅から無事三条の館に戻った。それから数年後2人は子宝に恵まれすぎて7〜8人の子供が出来たそーな。「利くねお経は」三ジョンはつぶやいた。

それから何世紀か後、アフリカは「ザンジバル」と言う島に大きなインセキが落ちた。1946年9月5日のことだ。中から歯の出たサルいや人間が出てきた。彼は成人して4人でバンドを作った。 「どこかで会ったことがある…」 初対面の4人は口を揃えって言った。後にそのグループはロック界のチャンピオンになったとさ。

                               めでたしめでたし

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