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愛の告白? 編


とある日の昼下がり、いつものようにリチャード王子が静かな足取りで
広い庭を散歩していた。
「ほらほら、リチャード様よ!なんてお可愛いのでしょう!」
「あの、伏し目がちに微笑んでいらっしゃるお姿、最高よねえ」
「世間の人達の汚い目に触れさせたくないわよねっ!」
女官たちがかしましい。もっとも、当の本人は、
(こんな窮屈な服を脱いで、海水パンツで日光浴したいなあ)
などと考えているのだが。

さて、リチャード王子を覗き見していたのは女官だけではなかった。
(今日こそ、チャンスだ…よし!)

「やあ、リチャード。散歩かい?」
「!…びっくりするじゃありませんか兄上。急に茂みの中から飛び出すなんて」
「ごめんごめん」現れたのはフレデリック王子。
「で、兄上、何かご用でしょうか」
「その、他人行儀な言い方はやめてくれよ。僕のことはフレデリック、
『フレディ』と呼んでくれって言ってるじゃないか」
「ですが兄上はもうすぐ王位を継承されるお方ですから、
そのような呼び方は不適切かと思います」

「…ねえ、僕が王位を継ぐこと、どう思う?」
「立派な王になられると信じていますよ」
「でもさ、王になったら、髪を切らなきゃならないし、
髭もはやさなきゃならない。僕はそれが辛いんだ」
(だから、そんな姿になる前に、告白したいんだ、リチャード…)
リチャードはそんな彼の高ぶる気持ちを知ってか知らずか、フレデリックに
にっこりと微笑みかけた。
「大丈夫ですよ、きっと似合います。それに僕も、髪を切ろうと思ってますし」
「えっ、僕のために切ってくれるのかい、君も!? なんて優しいんだ、リチャード!」
(…そうじゃなくて、ただうっとおしくなってきただけなんだけど…)
ぐっとリチャードの両手を握り締めるフレデリック王子。
(今こそ、告白タイムだ!)
もう自分の世界に浸り切っているフレデリックには、リチャードの困惑は見えない。

「リチャード、僕はね、僕は前から君のことが…」

「フレドリック王子さまあ!こちらでしたかあ!」
「げっ、ジムじゃないか!」
かくして、彼の決死の「告白」は、これまた急に現れた「庭師」によって
妨害されるのだった。

おしまい。

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