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盗まれた王家の秘宝を追え!編

Written by MASAさん (Adapted by mami)


ハロルド王子とメドウズ王子がいる部屋へ、ビーチ大臣が血相を変えて飛び込んできた。
「た、大変です。我が王家の秘宝が盗まれました!」
「なんだって?僕のレッドスペシャルが?」
「…それは『兄貴の』秘宝だろうが…」
「何が盗まれたって?」フレデリック王子もやってきた。
「王家の秘宝でございます、フレデリック様!」
「ええっ!リチャードが!?それは大変だ!」
「…いい加減そのネタはよせって!」

盗まれたのは、クイーンズロック王家に伝わる宝石「REAL DIAMOND」であった。
論理的に分析を開始するハロルド。
「まず、犯人はどこから忍び込んだのか考えないといけない。
そして、逃走経路はどこか。そもそもなぜあの宝石を盗もうとしたのか…
どう思う、みんな?…あれ?」
あまりにも悠長な彼の方法に業を煮やしたのか、部屋にはもう誰もいない。

(情報を仕入れるには夜の盛り場に限るぜ…)
キュートな街の娘風に女装したメドウズ王子は、「クイーンズロックの闇」
といわれているダウンタウンの盛り場にもぐりこんだ。
男たちが好色そうに彼(彼女)を見つめる。
「へっへっへ、ネエちゃん、なんか用かい」
(気色の悪い目つきで見るな、この野郎!)
しかし無理に笑顔をつくって、尋ねる。
「あのねえ、とってもきれいな宝石が欲しいんだけど、誰か持ってな〜い?」
「ハスキーな声だなネエちゃん、気に入ったぜ。俺とどうだい」
「次は俺だ」「俺もやりてえな」
「ちょ、ちょっと何するんだよ〜」(馬鹿、人の話をきけってのに!)

(メドウズだって行ってるんだ、僕もこれしきのことは)
弟を追って盛り場まで来たフレデリック王子。
彼の変装は、いつものラメ入ズボンに白いマフラー、星形サングラスという、
本人にとっては至って「シンプル」なものだった。
(よし、ここだな)
「こんばんわー、いかがですかー」店の屈強な男たちが一斉に振り向く。
…彼は知らなかったのだが、そこはメドウズが入った店ではなかった。
要するに、「その方面のシュミを持つ」男が集う、ダウンタウンの穴場であった。

その後数時間、彼ら兄弟の姿を見たものはいない。

明け方、2人は方々の体で帰城した。
「もう許せないぜ!あんな盛り場、みんなぶっ潰せばいいんだあ!」
女装して潜り込む方に問題があるのだが、キレまくったメドウズは
もう誰にも止められない。
「…いや、僕は結構好きだけどね」
まだぼんやり余韻に浸っているフレデリック。

「やあ、うまくいったかい?」
どこからかハロルドも合流した。顔の引っ掻き傷が痛々しい。
「はっはっは、どうしたんだい、その顔」
「望遠鏡で1軒ずつ覗いて歩いたんだよ、そしたら、出歯亀と間違えられてさ…
慌てて友人の家に逃げ込んで、今までジャムってた」
「遊んでたんじゃないかよ…!」
「いや、少しは成果があった」

散々な目に会っても、そこは才能ある王子たち。
乏しいながらも3人の収穫をあわせると、
『謎のピーナッツ売りの老婆が宝石を受け取ったらしい』
という情報が浮かび上がってきた。
「はあ〜?」
「そんな婆さん、どうやって探すんだよぉ!」
「ガセねた、かなあ…」

おまけに宮殿内では、苦い顔のビーチ大臣が彼等を待ち構えていた。
「なんですか王子様方、揃いも揃って朝帰りとは!嘆かわしい!」
「…そんなに怒らなくてもいいじゃないか。宝石を探してたのにさ」

「宝石なら、もうちゃんと戻りました」
「えええっ!」驚く3人。
「なんだよそれ!」
「盗まれてなかったんじゃないのか?」
「どうやって取り戻したんだい?」
「それはですね…」

「おかえりなさい、お兄様方。心配してましたよ」
そこへ突然リチャード王子が現れた。
「リチャード!今回は何やってたんだお前」
「散歩してたなんて言ったら、許さないぞ!」
「…すみません、ちょっと熱があったので寝てました」
「熱?大丈夫かい?」
すかさず彼の額に手を当てようとするフレデリックをさりげなくかわし、
リチャードは真面目な顔でこう締めくくった。
「秘宝が戻って何よりじゃないですか。それよりも、我が王国の一番の宝は、
お兄様方ご自身ですから、今後二度と無茶をなさらないようにお願いいたします」

「…うまく誤魔化しましたな、リチャード様。
なぜ真相をおっしゃらなかったんです?」
ビーチ大臣の言葉に、リチャードはフッとかすかな笑みを浮かべた。
「僕は、兄上たちを出し抜いたと思われたくないんだ、ビーチ大臣。
それに兄上たちは生まれた時からこの宮殿で育っていて、『闇』のことは
あまりご存じないしね」

…リチャード王子のもう一つの「顔」は、ほとんど誰も知らない。
彼の人知れぬ苦労をよそに、3人の王子たちはこれからも好き勝手に振る舞うだろう…
いや、それぞれの個性を生かして各方面で才能を発揮するだろう。
頑張れ、クイーンズロックの貴公子たち!


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