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荒れる?後継者問題編

Written by MASAさん (Adapted by mami)


ここは宮殿内の執務室。
クイーンズロックの将来を憂える主だった重臣たちが集まって、
密かに会議をひらいている。話題はいつしか後継者の問題に移った。
矢面に立たされたのは、王子たちのお目付け役を命じられているビーチ大臣だ。

「ところでビーチ大臣。近ごろフレデリック様は夜遊びが過ぎると聞いておるが」
「い、いえ、そのようなことはございませんが…週に2、3回ほど」
「何たること!そろそろ王位を継いでいただかねばならぬ時期だというのに」
「し、しかし、あの方は必ずや、カリスマ性溢れた王の中の王になられると思いますが」
「それはそうだがなビーチ大臣。いかんせん糸の切れた凧のようなお方、
おひとりで国を統治されようものならば、民衆から絶大な支持を得ることはできても、
国家は形骸化してしまうのではないか?」
「はい、それは確かに…」
「亡き国王様のご遺言では、『予の後継者は長子のフレデリックとするが、
彼に不都合がある場合は、そなたたち重臣で残りの王子から選んでくれ』
とのことでしたな。ひとつそれを検討してみては?」

「ハロルド様はどうだろう?我が国の文化・学術の守り神のような方だし、
他国の重臣とも懇意にされている」
「民衆の声にも敏感でいらっしゃるし、王家のイメージアップにも
一役かってくださっておるではないか」
「ですがあのお方は、政治には不向きかと…決断されるのが遅うございますし、
意外に頑固な面をお持ちですので。そもそも、ご本人にその気はまったくございません」

「ではビーチ大臣、メドウズ様はいかがであろうな。
我がクイーンズロックの軍神といってよい、勇敢なお方だ。
民衆を鼓舞する力には長けていらっしゃると思うが」
「それはそうですが、どうもあのお方が国を統治されると、
金を湯水のように使われてしまうような気がいたします。
先日も、莫大な額の請求書が届いて苦労したばかりでして」
「…うむ。それにあの方の場合、どこから次のお世継ぎが飛び出すか分からんしな」

「それでは、リチャード様か…」
「ご年少ながらも国の内外政にお詳しいし、統治能力もおありだろう。
あのお方が王となられたら、我々も安心して隠居できそうだ。のう、ビーチ大臣」
「…残念ながら、リチャード様では国民の支持を集められるかどうか…。
公式行事にも滅多にお出にならないせいで、知名度がいま一つ…。
もともと、裏方に回るのが好きなお方ですし」

「うーむ。ではどうすればよいのやら」
「やはり、フレデリック様を王としつつも、ご兄弟皆様で共同統治、
という形をとるのがベストではないかと思われます。
ご兄弟が力を合わされた時のパワーは計り知れないものがございますので」
「…それが一番いいかもしれんな」

会議が終わり、ビーチ大臣が心身ともに疲れ果てて庭のほうへ目をやると、
当の4人が仲良くテーブルを囲んでいるのが見えた。

「も〜っ、イライラするなあ!早く引けよ!」
「慌てなさんな、こういう場合はカードの並べ方に性格が出るんだ。
メドウズは単純だからな…よいしょっと。(あ、しまった。ババだ)」
「はっはっは〜。俺様を甘くみるなよハロルド」
「ばらすなよメドウズ…なんだい、君まで笑うことないじゃないかリチャード」
「笑ってなんかいませんよ。普通にしていてもこんな顔なんです」
「さあフレデリック、引いてくれ」
「えーっ、ババがあるんだろ?困ったな…えい、これだ!(うわっ)
…はい、次はリチャードの番だよ。ババなんか無いから、安心して」
「(ババを引いたんだな兄上は…表情で分かる)どれにしようかな…
(しかもさっき引いたカードを混ぜてない。これを取るべきだろうか)
じゃあ、これを。(やっぱり…)はい、どうぞメドウズ兄さん」
「おう。(!またかよ〜)なんだリチャード、俺に喧嘩売る気か?」
「メドウズ、引いたのは君だろ?弟に当たるのはよせよ」
「うるさいな!これに勝てばなんかもらえるんだろ?必死になるのは当り前だよ。
さあ、今度はさっさと引けよハロルド!」

(まったく、のんきなご兄弟だ…人の苦労もしらないで…)
首をふりふり、退場するビーチ大臣であった。


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