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素直な気持ち

Written by 黒とかげさん

ジョンは最近落ち込んでいた。
話を聞くと理由は言わないものの、どうやら些細なことで喧嘩をしたらしい。
謝らなくてはと思いつつ、妻の顔を見ると、つい反対の態度と言葉が口からでてしまう。
相手もそうだから仲直りしそびれて・・・。
「このまま離婚なんて事になったらどうするんだ?慰謝料高いぞ」
なんて周りに言われ、花なんぞ買って帰宅したものの、ジョンの気持ちは空回りするばかり。
仕事場で何日も一人、朝食を作ってもらえないからと出来合のものをもくもくと部屋の隅で
暗く背中を丸めて食べるジョン。
そんなジョンを見かねて、これは本格的になんとかしなきゃと、とうとうジョンとヴェロニカを
仲直りさせる為、立ち上がったフレディ。

・・・そんな彼からある日ヴェロニカの元に小さな小包が届いた。
開けてみるとカセットテープとメモが一つ。
『これ聴いてみて』
Freddieが書いたメモに、若干の疑いと戸惑いを感じながらも、ヴェロニカは、カセットデッキに
テープを入れて耳を澄ました。
何が入っているか分からないので、とりあえずボリュームを絞る。
すると・・・。
それには喧嘩してから別室で寝起きしているため、久しぶりに聞いた夫・ジョンの寝息が。
夜中目が覚めても一人じゃないんだと安心できる夫の寝息が・・・。
そして・・・。
「ヴェロニカごめん。言い過ぎた。反省している。今でも愛してるよ」
という夫の寝言が。
睡眠中の為、見栄も意地も何もかも取り除かれたジョンの素直な気持ちが吹き込まれていた。
しかし言葉は、それだけではない。
ここ何日間も胸にしまい込んでいた・・・いやおそらく結婚してから・・・いやつきあってから、
照れくさくて言えなかった言葉も一緒に入っている。
・・・ヴェロニカは感涙した・・・。
涙がぽろぽろと頬を伝い、彼女の心の壁を取り除く。
ヴェロニカは、一心不乱にスピーカに耳を寄せて最後までテープを聴いた。
「聞いたかい?こんなにジョンも反省しているんだ。
何が原因で仲の良い夫婦がこんなにも長い間喧嘩しているのか、詳しい事情は知らないけれど、
どうかジョンを許してやってほしい。
ジョンには君しかいないんだよ。あっ!」
こんなフレディのメッセージの後に、
「ん・・・?フレディ?
確か次の仕事が入っていて、すぐに行かなきゃならないのに、誰と話しているの?」
「・・・何でもないさ。
起こしてしまったようだな。
ごめん。
あまりにも君の寝顔が可愛くてね♪」
目を覚ましたジョンとのやりとりが入っていて、その会話の途中でテープは終わった。
『フレディあなたが原因なのよ』
そう頭を抱えつつも、ヴェロニカの心は、実に晴れやかで。
今日の夕食はジョンの好物ばかり揃えよう。
食卓に花を飾ろう。
思いでの香水にお洒落な洋服を着てジョンを出迎えようと思うベロニカだった。

(完)

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