Circus Raves誌1975年3月号 (By Ron Ross)(一部抜粋)
Enigmatic brooder(謎めいた思索者)
「クイーン一、謎めいた人物よ」バンドと親しく、デビュー当時からプレスで彼らをサポートしていた英国の音楽ライター、Rosemary Horrideはジョン・ディーコンをそう評してきた。確かにディーコンは非常に寡黙である。もう一人の思索家ベーシスト、ジョン・エントウィッスルさえもおしゃべりに見えるほどだ。音響学及び振動工学で理学修士号を授かっている彼の聴覚は、プロデューサーのロイ・ベイカーらと共に、クイーンのきらっと光る録音技術の秘密の一端を握っているに違いない。
それでも『シアー・ハート・アタック』の中の彼のスイートな小曲「ミスファイアー」は、まるでイーグルス信奉者のようなメロディックなアピールを感じさせてくれる。複雑でも物理的でもなく、更には、マニアックなロックナンバー「ストーン・コールド・クレイジー」(ちなみにこれはグループの共作である)での野太いベース音のような一本調子でもない。「ミスファイアー」は、最近英国にポップを蔓延させているティーンのグループによって容易にヒット・シングルになっていそうなラブソングなのである。クイーン初心者がジョン・ディーコンの紛れもないトレードマークに気づくのは、最後の部分だけかもしれない。フェイドしていくベースは、他のどこで聞くよりも素早く、器用だ。クイーンの中では最も知られざるこのミュージシャンは、自身のロック世代において、最も有能な人物の一人といえる。