("The Daily Star" November 21st 1985)
クイーンの数ある栄光の瞬間のひとつが、ライヴ・エイドだ。
それはこのスーパー・グループに、より国際的な評価をもたらした。…同時に大きな問題をも。
昨夏の出演によって得たこの成功で、4人のメンバーは死ぬほどの思いをしているのだ。
世紀のポップ・コンサートでの大喝采を浴びた出演以来、彼等はこれ以上働いたことはなかったくらい多忙を極めている。計画していたのはまるで逆のこと ― レコーディングや演奏から解放された長い休息、だったのにである。
そして今、英国のファンは予期せぬシングル ― 『ワン・ビジョン』にもてなしを受けている。この曲はスマッシュ・ヒットを放ち、チャート9位まで登りつめた。
アメリカで、日本で、カナダで、ヨーロッパで、ラテン・アメリカで ― 皆がこのロックのロイヤル・ファミリーを生で見たいと願っている。アイスランドでの野外コンサートまで考慮されている有様だ。
しかし一方、クイーンはミュンヘンのレコーディング・スタジオで雪に閉じ込められていて、このインタビューにリラックスして応じてくれた。
ギタリスト(原文通り)のジョン・ディーコンは言う。「ライヴ・エイドは僕たちの世界をころっと一変させてしまった。その前は、長い休みを取ろうって約束していたんだよ ― ツアーも無し、仕事も無し、バンドも無し、のね」
だがジョンは不平を言っているのではない。「あの素晴らしい1日のお陰で、バンドは活力を取り戻せた。新たな命を吹き込んでもらえたんだ。それまでは皆、ちょっと疲れが溜まってきていてね。へとへとだった。今は熱意とアイデアに満ち満ちているとも。やりたいことが沢山ありすぎて、どれからやっていいのか決められないくらいさ」
『ワン・ビジョン』は来年のクイーンのアルバムに収録される予定である。彼等はスタジオに直行する代わりに、このシングルを急いでリリースした。アルバムの方は待たねばならないだろう。なぜなら今、ここミュンヘンでクイーンは作業をしていないからだ。
我々"Star"誌は、クイーンの現在のレコーディングに隠された秘密を発見した ― 彼等はセンセーショナルな新作映画「ハイランダー」用のサントラを担当しているのである。主役はショーン・コネリーとクリストファー・ランバート、来春公開予定の映画だ。
ジョンは説明してくれた。「元々は、1曲だけ頼まれていたんだ。でもフィルムを見せてもらったら皆ノック・アウトされちゃってね、今サントラ用に5曲作っている最中だよ」
クイーンは15年間共にプレイしてきた。いつも仲睦まじいわけではなかったとジョンは腹蔵なく認める。
「僕たちはしょっちゅう議論している。それは避けられないことだ。結婚だって、クイーンほど長くは持たないことが多いじゃないか。個性が4通りだもの、衝突するのが当然さ。
議論は健康的なことだよ。空気をすきっとさせてくれるだろ。僕たち皆に発言権があるから、仕事がうまくいくんだよ」
クイーンは「退位」するつもりはあるのだろうか?
「いいや、浮き沈みはあるけれど、今のところは皆とてもやる気があるしね。クイーンを解散させたいなんて誰も思っていないよ」
ロジャー・テイラーも同意する。「クイーンは存在自体がマジックなんだ。不運な目にあっても、いつでも解決法がある。周りにいろいろなテンションが渦巻いているんだな。それで音楽が生み出せるのさ。バンドにいる4人そのものよりも大きなカリスマがある。オイル満タンのマシンみたいだ。かちっとはまれば、ばっちりさ」
そしてこのマジックは、ライヴ・エイドで遺憾なく発揮された。
「あそこにいられてすごく誇らしかったよ」ロジャーは言う。「グループにビシッと刺激を与えてくれたからね。ボブ・ゲルドフから最初に要請されたときなんか、うまくやれるもんかいって皆思ってたもんな。見込み違いもいいとこだ、なあ?」
白状するとすれば、ライヴ・エイドに関して、一つだけ後悔していることがあるのだと、ジョン・ディーコンが打ち明けてくれた。
「僕ね、あんまりシャイなもんだから、ダイアナ妃に会いに行けなかったんだ」 恥ずかしそうに彼は言った。
「大ファンだし、本当に彼女に会いたかった。なのにナーヴァスになっちゃったんだ、いざって時に。何か馬鹿なことをしでかしてしまうんじゃないか、何も気の利いたことを言えないんじゃないかって思ってしまって」
ジョンはダイアナに、プリンス・トラストのためにクイーンとして何か出来ればと思っていることを伝えたかったようである。
「チャールズ皇太子は若者達のために素晴らしい仕事をしているからね。彼が示す関心と興味は、純粋なものだ」
ロジャー・テイラーは今日の若者たちについてこう見ている。「彼等はとても保守的で、それは音楽シーンに表れている。若いバンドはクリーン・カットで良い子良い子のイメージが欲しいんだろうさ」
プライドの片鱗をちらつかせて、ロジャーは付け加えた。「クイーンは良い子チャンじゃないぜ。パーティーも、ディスコのハシゴも大好きさ ― 明け方になってやっとベッドに倒れ込んだりもな」
大抵、フレディ・マーキュリーがこの夜の世界への進出を率いている。
彼は目下このミュンヘンをホーム・グラウンドにしている。1年の大半をここで過ごし、今やナイト・クラブのエキスパートだ。
ファッション・エイドでの意気揚々とした姿は彼に新たなマッチョ・イメージを与えていた。
明らかに大喜びの様子の彼はこう漏らしてくれた。「このボクに、新ミス・ワールドに王冠を被せて欲しいって言ってきたんだよ!」