(白浜泰士・著:TOWER RECORD情報誌「bounce」Jan−Feb 2000より)
クイーンにいちばん最後に加入した男。そして、メンバー中いちばん物静かな男(しかし、来日時はいちばんの<暴れん棒将軍>だったらしい)。ジョン・ディーコンに対する一般的な印象は極めて地味なものだ。クイーンでの彼のペンによる曲群もフレディやブライアンの書く、<クイーン丸出し>な名曲たちやロジャーの<ロックンロール魂溢れる>ナンバーに比べると、押しの強さはチト弱い。しかも、彼自身ヴォーカルがとれないもんだからフレディが結構無理して歌っていたりする曲もある。しかし、実は曲のヴァリエーションでいえば、クイーン随一なのである。
ジョンの作品で、まず触れなくてはならないのが"Another One Bites The Dust"だろう。もろシック"Good Times"風ベース・ラインのこの曲は、ブレイク・ビーツ・クラシックとしても有名だ。全米のダンスチャートでも上位に昇ったこの曲の成功のためか82年にリリースされた『Hot Space』はかなりファンク色が濃くなっていたが、このアルバムの主導権を握っていたのは恐らくジョンであろう。また、クイーンにファンクをもたらした男は、クイーンにラテンをもたらした男でもあった。"Who Needs You"や"I Want To Break Free"といった曲がそれにあたる。"Rain Must Fall"はクイーン名義になっているが、いかにもジョンが書いた感じだ。南米での絶大なる人気の真の立役者か? そして、もちろん"You're My Best Friend"や"If You Can't Beat Them" "Need Your Loving Tonight"のようなパワー・ポップ系の<単純にいい曲>も忘れてはいけない。
確かにフレディとブライアンの作品がクイーンをクイーンたらしめていたのは間違いないが、ロジャーとジョンのリズム隊が書く楽曲がアルバムに彩りを加えており、最後に不動の4人だったのは納得できる。最高のバランスをもったバンドだったのである。
4ページのクイーン特集の中でこれを見つけたときは、言いたいことを全部言ってもらえたような気がして実に爽快だった。見ている人はちゃんと見ているのだと(「暴れん棒」なところも含めて)分かったのは収穫だ。あまり嬉しかったので感想を書いてついでに巻末のGH3長袖シャツプレゼントに応募したら当たってしまったオマケつき。