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FMfan 84年 特別インタビュー

世界中の厚い壁を打ち破ってきたヨ
インタビュー:スティーヴ・ハリス

「コレボク ワカルネ」「ボク 何カいめえじチガウミタイダナ」…違うよ!

クイーンのメンバー、ロジャー・テイラー(Ds)とジョン・ディーコン(Bs)が先ごろ来日した。フル・メンバーでの来日ではなかったのは残念だったが、2人の口からは『ザ・ワークス』を発売したばかりのバンドの現状がつぶさに語られた。

解散なんて今のクイーンにはありえない

「フレディはなんでこなかったかって? 今度の来日はプロモーションだけ。あいつはインタビュー恐怖症だから来るわけないよ」。

クイーンほどの大物がレコードの売り込みのためのみにわざわざ海外まで出向くなんて前代未聞のことである。ビッシリとハード・スケジュールを組まれてしまったロジャー・テイラーとジョン・ディーコンはさすがに疲労気味であった。

「(撮影のために)サングラスをはずしてくれって言われたって目のクマしか見せることはできないよ」。

ロジャーはそう言ってサングラスを外した。

クイーンの今回の新譜『ザ・ワークス』をこれほど猛烈にPRするのはただひとつ。

「前作の『ホット・スペース』はディスコっぽすぎて、昔からのファン、特にアメリカのファンをたくさん失ってしまったから、今度の新譜で昔のクイーンらしさを復活させて、ファンを取り戻そうというわけだ」とジョンが新作の意図を明らかにした。

「『ホット・スペース』っていうのは、それほど好きじゃなかったんだけど、いろんな面でその当時、すすんでた作品と言えるだろう。あれほどファンキーな方向に進んだということは、今考えると失敗の元だったと思うけど、「地獄へ道連れ」という曲がその前にバカ受けしたから、やはりそういう方向に進むことしか考えられなかったんだ。フレディとジョンは、えらくファンクに凝ってたしさ」

ロジャーは強みでも弱点でもあるクイーンの音楽の多面性について語った。

これだけ多くの個性がぶつかりあっているグループがこれだけビッグになるとは、まず常識からは考えられない。おそらく、普通のバンドならとっくに解散しているだろう。それだけに、クイーンには常に解散のうわさがつきまとう。

「解散だなんてありえないよ。もし解散できたなら、それは『ホット・スペース』の直後のことで、今では解散なんて全く考えられない」。

ロジャーの発言にジョンがこう付け加える。

「『ホット・スペース』のこともあって、それにツアーをビシビシやって疲れてたから、半年間休もうと思ったら、それが9ヵ月のオフになったのさ。その間にいろいろ考える時間ができて、4人ともバンドへの思い入れがより強くなったんだ。僕はロジャーと違ってほとんどやることがなかったから(☆子作り以外は)、再び仕事ができることを喜んだんだ」。

ロジャーの忙しさは2枚目のソロ・アルバムの製作のことで、ちょうど、日本へ来る前にそのレコードを完成させたそうだ。(このアルバム、まだはっきりとは日本での発売が決まっていない)☆「ストレンジ・フロンティア」としてちゃんと発売されてた。ジョンも手伝っている。

クイーンは非常に民主的なバンドだ

「クイーンというのは非常に民主的なバンドで、4人でケンカし合って物事を進める。だから、自分の意見だけを通すことはほとんどない。できることなら、歌詞をよりシリアスな物にしたいんだけど、そういう物に限ってメンバー間の意見が食い違いやすいんで、なかなかそうはいかないんだ。例えば、反核ということに関しては、僕の場合、非常に関心があるから、それを今度のソロ・アルバムのテーマとして取り上げた。しかし、無理してまでバンドの方に持ち込みたくはないんだ。

南米をちゃんとした形でツアーでやったのはクイーンだし、共産圏を除いて世界各国を回った。そして、世界中の人々に多少の喜びを与えたつもりでいる。そういう意味で、クイーンは非常に厚い壁を打ち砕いてきた。それはバンドとしての、クイーンの最大の功績だと思っているよ。しかし、これ以上バンドに力を入れるよりも、これからは、それぞれのメンバーがクイーンと同時にソロ活動も両立させることになるだろう」

「フレディは作曲家としてたくさん曲を書いてるわりには、1枚のレコードに3、4曲しか使ってもらえないので、ソロ・レコードを作ることになったのさ。僕は歌えないから今のところ予定はないんだけど、かりに作るとしたら、だれかボーカリストと組んでやらなきゃだめだろうな。例えば、ライオネル・リッチーなんて最高だよ。だけど彼はもうビッグになりすぎちゃって、相手にされないだろうから、無名の素晴らしい声を持っている新人を見つけなきゃならないだろうね。 (☆相手にされないからせめて髪型だけでもライオネルに近づこうとしたのだろうか。「素晴らしい声を持っている新人」といっても彼の場合いつだって基準がフレディなので捜すのは無理な相談というものだ)

なんてったって、クイーンでレコードを作るのにやたらと時間がかかってね。みんな年をとったせいか、もう怠けちゃってスタジオに入る前にちっとも準備しないから、スタジオに入ったってリハーサルや曲作りや、やることがいっぱいあるから全くうんざりなんだよ。(☆誰に対するイヤミなんだ?) それに、手間ヒマをかけて曲を作ったとしても、捨ててしまうことがあるしさ」。

と、バンドの静かなる男ジョンから本音がポロリと出る。(☆別段珍しいことではない。)

多くの人によって作品が評価されることがうれしいんだ

そのジョンはオフの時は家族のことで忙しくしている。彼は8才の男の子の父親である。(☆さらに6才の男の子の父親でもあり4才の女の子の父親でもあり生後数ヶ月の男の子の父親でもある。とりあえず。) 同じく父親であるロジャーが、彼の息子の言った「ラジオ・グー・グー」という言葉をそのまま、ラジオを批判した曲「ラジオ・ガ・ガ」のタイトルにしたという話である。

「昔、ラジオというのは僕らにとって貴重な存在だったのに、今はビデオの方が音よりも重視されている。だから今ラジオでかかるのは音より映像の方が重んじられた曲だ。その風潮を批判したんだ。まあ<ラジオ・ガ・ガ>のビデオをずいぶん凝った物にしたんだけど、今の時代じゃそうしなきゃやっていけないんだよ」。

『ホット・スペース』の大失敗に屈せずに今の時代をクイーンらしさで勝負しようとしているクイーンだが、迎合主義に堕ちたのではないかという意見もある。

「自分たちのレコードを買ってくれる人が多ければ多いほど、当然うれしいよ。だけどそれは、単なる金銭的なプラスからくる喜びじゃなくて、その作品がそれだけの人間に評価されたという証拠になるからさ。今の僕らにはそれが大切なんだ。金はどうでもいい」。

(クイーンはこの秋フル・メンバーでの来日の話が進められている)

アタマもカラダも一割増しって感じです

少し疲労気味の時の方が言動が彼らしくて安心する(笑)。


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