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僕は自分の世界を大切にしたい
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――実はあなたに会うのは、これで2回目なんですよ。覚えてますか?
ジョン:えっ!? (顔をジーッと見てから、おもむろに)多分覚えてると思うけど…。
――2月10日に『テアトル東京』で行われた『フラッシュ・ゴードン』のプレミア・ショーが始まる前に、トイレで隣りどおしだったんです(笑)
ジョン:なあんだ、そうだったの(笑)
――(「覚えてる」だなんて、社交辞令がうまいんだから)
来日した日の夜、ディスコへ出かけたでしょ?
ジョン:うん、何軒か行ったよ。
――あなたがいたディスコの隣のディスコに、偶然、僕もいたんです。(ジョンとはよく隣どおしになる)
ジョン:来れば僕のカッコいい踊りが見られたのに…。
――昔、あるインタビューで「クイーンは化学結合したグループだ」と語っていましたが、(☆「伝説のチャンピオン」参照)具体的にはどういうことですか? 単純に、4人の元素(個性)が集まって一つの結晶(グループ)になったと解釈してもよいのですか?
ジョン:うん、まったくそのとおりさ。クイーンの4人は、みんな強い個性を持っている。だからこそ、我々は成功し、特にこの2年の間に大金を稼ぐようになった。そこから、またみんなで大きなものを創ろうと考えているよ。
――あなたは一番最後にクイーンのメンバーとなりましたが、今ではグループの影のリーダーと言われていますけど…。
ジョン:(テレながら)そんなことはないよ。みんな平等さ。
――デビュー当時、イギリスの記者達はクイーンをけなしてばかりいましたね。ところで、今、グループが全世界でNo.1になったことに関して、彼らはどういう反応を示していますか?
ジョン:今もそうだよ。同じさ。
――例えば、メロディ・メーカー、レコード・ミラー、ニュー・ミュージカル・エクスプレスといった新聞を見ても、あまりクイーンの記事、インタビューが出ていませんね?
ジョン:彼らは”新し物好き”なのさ。クイーンは、もう新しいバンドじゃないし…。イギリスの記者達というのは新しいものばかりを探して、記事にするんだ。去年の人気投票を見たかい? ポリス、ポリス、スティング、スティング、スティングだぜ! (皮肉な調子で)彼らは、小さなクラブに出ている無名に近いバンドを、やたら大きな記事にして紹介する傾向があるんだよ。
☆同い年、ベース弾き、元教師…しかも向こうは歌が歌えるとあっては皮肉な調子にならざるを得なかっただろうが、後にちゃっかり「お気に入りバンド」にポリスを挙げていたりもする。
――ところで、レコードに関することを聞きたいんですが、デビュー・アルバムのメンバー・クレジットには、"Deacon John"となってますね。あれは単なるミス・プリントですか?
ジョン:(笑いながら)違うよ。あれはね、ファースト・アルバムを発表する時に他のメンバー(どうやらフレディらしい)が、「響きがいいし面白いから"Deacon John"にしろよ」ってアイディアを出して、それでなんとなくああなったのさ。
――現在、再プレスしているものは修正されて(つまり"John Deacon")いるのですか?
ジョン:いや、そのままだよ(笑)デビュー・アルバムに限り、僕は"Deacon John"さ!(笑)
――ビートルズの”ヘイ・ジュード”よりも長い曲――つまり、”ボヘミアン・ラプソディ”をシングル・カットしたのはロック・シーン、もしくはシングル・チャートに対するひとつの挑戦だったと思うのですが?
ジョン:うん、確かに長い、それも複雑な構成の曲をシングルにすることは一種の賭けだったし…、でも、みんなで討論した結果出すことにしたんだ。勿論、賛成した者もいれば反対した者もいた。
――あなたは?
ジョン:僕は反対したんだ(笑)でも、良かったよ、ビッグ・ヒットして…。
☆今じゃミレニアムソングNO.1なんだから、彼の読みが間違っていて幸いしたといえる。
――”キラー・クイーン”がヒットし、初来日した頃から、クイーンの海賊盤が大量に出回り始めましたね。過去、レッド・ツェッペリンやエマーソン・レイク&パーマー、ピンク・フロイドなどはそれを回収したり裁判を起こしていますが、あなた達は海賊盤対策というものを考えていますか?それとも無頓着なんですか?
ジョン:う〜ん…、あれはホントに困るよ。殆どがライヴ・アルバムだし…、まあ、雰囲気は出てるんだけど、どうしようもないものだね。手の打ちようがないよ。でも、「ライヴ・キラーズ」を出したから、今はそんなに出回ってないと思うよ。一般的には、熱狂的ファンが買うらしいけど…。
――僕も買ったことがありますよ(笑)
ジョン:かまわないよ(爆笑)
☆結局、それほどホントに困ってる訳ではないらしい。
――ところで、2〜3日前にクイーンの写真を整理してたら、この写真を見つけたんです。(と言って、日本の小学生達とジョンが写っている写真を見せる)で、これを見て、あなたがとても子供好きな人だと思い出したのですが、あなたの子供達はみんな元気ですか?
ジョン:(嬉しそうに)うん、元気だよ。ところで、この写真はどこで撮ったんだっけ?(と言いながら思い出そうとしている)
――名古屋ですよ。
ジョン:そうそう、ナゴヤ、ナゴヤだ。(とても懐かしそうに写真を見続けている)
――3人目のお子さんが生まれたそうですが、もしよかったら、子供達の名前を教えてください。
ジョン:ロバート(5歳)にマイケル(3歳)、3番目が娘でローラ、スペルはL・A・U・R・Aだ。1歳半だよ。ロバートはカソリックの幼稚園に行ってるんだ。女房がカソリックなんでね、僕はどうでもいいんだけどね…(笑)
――休みの日は何をしていますか?
☆おそらくジョン自身の休日の過ごし方を聞きたかったのだろうが、答えはなぜかこうなってしまう↓
ジョン:フレディがね、新しい家を買ったんだけど、住所を新聞がスッパ抜いちゃって、ファンが押し寄せてきて大変らしいよ。”ちっとも静かに暮らせない”と嘆いていたよ(笑)ロジャーはロンドンと田舎に家を持っているんだけど、今度はロサンゼルスにも買ったんだ。家の管理が大変らしいけど、だったら買わなきゃいいのにね(笑)ブライアンは時々セッションをやってるみたいだよ。2週間前に、ロンドンのハマースミス・オデオンで行われたブラック・サバスのコンサートに飛び入り出演したらしい。彼はヘヴィ・ロックが好きだからね。僕はあまり外に出ないよ。静かに過ごしたいんだ。
――じゃあ、家族とのコミュニケーションはとれているのですね?
ジョン:うん。「ザ・ゲーム」のレコーディングはドイツのミュンヘンでやったんだけど、あの時のスケジュールというのが、2週間レコーディング、2週間ロンドンという繰り返しで…まあ、間がもてるからいいんじゃないかな。
(☆それじゃ今はキツくないのだろうか)
家族とはうまくいってるよ。
――もしも、子供がロック・ミュージシャンになりたいと言ったらどうしますか?
ジョン:それはありえるんだよね(笑)
――ベーシストにさせるつもりですか? 親子2代のロック・ベーシストというのもユニークでいいと思うのですが?
ジョン:(笑)うん、そうだね。(すごく嬉しそう)でも、まだあまり興味がないみたいだよ。
☆親子2代のベーシストとはいかなかったようだが、次男のマイケルはギタリストとしてバンド活動を継続中らしい。
――レコードは聴かないんですか?
ジョン:クイーンのアルバムはあまり聴かせないよ。でも、”フラッシュ・ゴードン”のシングル、それに映画の方も4回観に行ったらしいよ。映画が好きみたいだね。
――”フラッシュ・ゴードン”について、何か批評は言いましたか?
ジョン:”Good!”って言ってくれたよ。子供というのは音楽に正直だからね(爆笑)ポリスを気に入ってるみたいだね。”ドゥドゥドゥ、ダァダァダァ”って歌ってるよ(爆笑)歌詞はわからないで聴いてるんだろうけど、反応は凄いね。
――ところで、あなた自身の将来のことを聞きたいんですけど、電子工学の修士号を持っていますが、将来はその方面へ戻るつもりなんですか?
☆正しくは「名誉学位」か。…しかしこの質問、「いつかクイーンを辞めますか」と言っているのと同じ?
ジョン:オーディオやスタジオ機械に関しては、凄く興味があるよ。ベッドルームのオーディオは全部自作だし…。
(☆そんなことは誰も聞いてない)でも、いまのところはそういう方面に戻るつもりはないね。
――最後に、あなたの人生におけるポリシー、ビジョンを聞かせてほしいのですが?
ジョン:う〜ん(と言って、しばらく考え込む)
☆
咄嗟に気の利いた台詞が言えない彼には大変苦しい質問だといえる。フツーの人は日ごろからそんなことは考えていないだろう。
――非常に難しい質問ですけど?
ジョン:本当に難しい質問だね。とにかく、1人でも子供というのは大変なのに、3人もいて…すごく責任を感じているよ。また、自分の生活を大切にしたいね。責任が重いから、出来るだけ簡単な生活をしたいし、余計な心配もしたくない。ロジャーみたいに、家をたくさん買うのも困っちゃうし…(笑)
☆そう言いながら翌年には自分もロスに家を買っちゃうジョンだった。1人でも子供は大変なのに、6人もいる今は余計な心配をせずに簡単な生活を満喫しているのだろうか。
――グループとしてはどうですか?
ジョン:今の4人で、どんな困難にも負けずに頑張っていくよ。このあともアメリカン・ツアーが決まっているし、ロジャーのように他のメンバーもソロ・アルバムを計画中だ。ニュー・アルバムの方はしばらくの間、出ないけど、ガマンしてほしい。僕のソロ・アルバムは難しいナ。だって、歌が唄えないからね(笑)
――長い間、どうもありがとう。
ジョン:こちらこそ、どうもありがとう。
単独インタビュー物では初めて読んだ記事で、「ベッドルームのオーディオが自作」な事だけが非常に印象に残ってしまっている(ベッドに横になると音楽が流れる仕組みになってるんだろうか…とか妄想が広がってしまう)が、今も昔も変わらぬ人生観を持って着実にマイペースを保つ様子が伺えて、嬉しい。