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10年間、いろんなことがありました
最新アルバム「ザ・ワークス」のプロモーションのため、3月下旬、突如来日したロジャー・テイラーとジョン・ディーコン。1年半ぶりに会う彼らは「うわあ〜、久しぶり! 元気だった?」となつかしい笑顔でML取材班を迎えてくれた。ロジャーもジョンも、元気そうだ。そして、また素敵になっていた。
★「クイーンII」でクイーン・サウンドは確立された
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――今日のインタビューでは「ザ・ワークス」のことだけでなく、10年という歴史のしめくくりという意味もかねて、これまでクイーンが発表してきたアルバムの、1枚1枚の思い出やエピソードなんかもきこうと思っているんです。
ジョン:あ〜、それはないよ(笑)
ロジャー:10年間のあんなにたくさんの仕事のことを話すわけ?(笑)
――多分、みんな「ザ・ワークス」のことを質問するだろうから、他のこともきこうと思って(笑)じゃあ、まずはデビュー・アルバム「戦慄の王女」から。
ロジャー:このアルバムは、つくるのにすごく時間がかかったんだ。僕らはたくさんの曲を持っていたし、レコーディングも、スタジオが空いている時に行って、1回2〜3時間くらい録音、というくり返しだったから、なんだか、すごく昔のことのような気がするよ。
ジョン:実際、昔のことなんだけれどね。
ロジャー:僕らはハーモニーやメロディを、ヘヴィな演奏と組み合わせたいと思っていた。それでああいうサウンドになったわけさ。そうそう、それから(と裏ジャケットを見ながら)この写真の何枚かは、当時フレディが住んでいたフラットで撮ったものなんだ。まともなフォト・セッションをしたのは、この時が初めてだった。僕らが着ている服も、僕とフレディが以前、自分達で作って売っていたものなんだ。当時はよくこんな恰好をしていたよ。(裏ジャケット左上参照)
ジョン:ジャケットにあるクイーンのロゴ文字と紋章は、フレディが描いたんだ。カヴァーの絵もね。
――翌1974年に発表したのが「クイーンII」ね。
ロジャー:このアルバムは、1枚目がけっこう成功したからスタジオでまともにレコーディングする時間をとってもらうことができた。このアルバムは自分達がスタジオでやりたいと思っていたことを、以前より多くできたという感じなんだ。B面のブラック・サイドでは、けっこう厚みのある、たいそうなハーモニーを作り出すことができたと思うし。といっても16トラックなんだけれど。
――ブラック・サイド、ホワイト・サイドと、分けているけど、何か特別な意味でもあるの?
ロジャー:うん、ある意味ではね。ブラック・サイドは闇の雰囲気。ホワイト・サイドは、それにくらべて純潔な雰囲気とでもいうのかな…歌詞の面でね。
ジョン:印象的だったのは、特にフレディがスタジオでできる限りのことをやろうとしたことだな。だから前のアルバムよりも(サウンドが)ずっとよくなったよ。
――このアルバムで"クイーン・サウンド"というものを確立したと思うんだけれど。
ロジャー:そう、まさにそのとおり! 1枚目では、自分達がどこに向かって進んでいくのかわからなかったけれど、このアルバムでは、はっきりした方向性を持ってアルバムをつくることが出来た。でも、次のアルバムではもっといいサウンドづくりができたと思っているんだ。
――「シアー・ハート・アタック」ね。
ロジャー:そう、サウンド自体もよくなっているし、アルバムの出来もいいよ。24トラックになったことも理由のひとつだし、何よりも自分達のやっていることがわかったという感じだった。このアルバムからは"キラー・クイーン"という、初めての世界的な大ヒット曲も生まれたし。僕としては、このアルバムは気に入っているよ。
ジョン:そうそう、このアルバムをレコーディングしている時、ブライアンが胃潰瘍になっちゃってね。手術をしてとりのぞいたんだ。ついでに神経もぬいちゃったから、心配しても、もう胃にひびかない。だから心配性の人には良い手術みたいだよ(笑)
ロジャー:そう(笑)まあ、それはともかく、だからバッキング・トラックは、ほとんど僕ら3人でやったんだ。
☆3人でやったから良いアルバムだと言いたいような気もしないでもない。
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★「オペラ座の夜」にシンセサイザーは使われていません
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――次は「オペラ座の夜」。
ロジャー:このアルバムは僕らにとって、すごく大きな意味を持っているんだ。「シアー・ハート・アタック」が大成功したアルバムなら、これは信じられないほどの成功を収めたアルバムだと言えると思うよ。このアルバムによって、僕らは世界的な地位を確立したと言えるからね。
――このアルバムにも"ノー・シンセサイザー!"っていうクレジットが見られるわね。
ジョン:うん、それにはおもしろいエピソードがあるんだよ。実はメロディ・メーカー紙か何かに、僕らのデビュー・シングル"炎のロックン・ロール"の評がのっていて、そこに『なかなかシンセサイザーの使い方がうまい』って書いてあったんだ。ブライアンがおこっちゃってネ。これはシンセサイザーではなくて、ギターなんだということを知ってもらいたくて、クレジットを出したんだ。
――このアルバムからは"ボヘミアン・ラプソディ"が世界中で大ヒットしたし、歴史的に価値のあるアルバムだと思うわ。
ロジャー:うん、いろいろな人に言われてるよ。今でも最高のアルバムじゃないかってね。それに"ボヘミアン・ラプソディ"は、シングルの常識をうちやぶったと思っている。初めあの曲をレコード会社やマネージメントの人間に聴かせた時、もう少し短く切ってくれないかと言って来たんだ。でも僕達は、それでは意味を持たないからいやだと主張したんだ。だからあの曲をみんなが気に入ってくれたというのは、本当にラッキーだった。イギリスでは9週連続No.1だったんだよ。
――その次に発表したのが「華麗なるレース」ね。
ロジャー:このアルバム2枚は(「オペラ座…」と「華麗…」)セットみたいな感じなんだ。「オペラ座の夜」と良く似ているし、延長線上にあると言えるね。サウンド的には、このアルバムのほうがいいと思うよ。アルバムのタイトルは、両方とも映画の題からつけたんだ。
――ジャケットの中の写真は、ハイド・パークでのフリー・コンサートのものですよね。
ジョン:そう。できればもう1回やってみたいと思っているんだ。ハイド・パークでね。
ロジャー:"手をとりあって"を日本語で書いたのは、日本で大歓迎を受けたから、そのお礼の意味をこめてブライアンがつくったんだ。レコーディングは、オックスフォードのマナー・スタジオでして、ミックス・ダウンはロンドンでやった。
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★「ジャズ」の話はやめましょう!
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――次は「世界に捧ぐ」だけれど、このアルバムでクイーンの音楽性が変わったように感じたんですけれど…。
ロジャー:そう、前2作を出したあとで少し変わってきたね。よりシンプルに、そしてタフでハードな感じになってきたと思うよ。このアルバムは、アメリカでの成功の手助けとなったんだ。"伝説のチャンピオン"と"ウイ・ウィル・ロック・ユー"がアメリカで大ヒットしたから。
ジョン:フランスでも、今までで一番ヒットした曲になったんだ。12週間も1位だった。フランスは言葉の問題もあって、成功するのがむずかしいんだ。日本の人達なんかより、ずっとイギリスの音楽を聴かない国民だね。
――"シアー・ハート・アタック"という曲が入っているけれど、この曲はアルバム「シアー・ハート・アタック」を出した頃書いたものなの?
ロジャー:いや、あのアルバムから曲のタイトルのアイディアを得たのは確かだけれど、仕上げるのにはずいぶん時間がかかっているんだ。中途半端なままになっていたものを仕上げて、結局このアルバムに入れたんだけれど、奇妙なことに古い曲だったにもかかわらず、あの時代によくマッチする曲だったと思うよ。あの頃、イギリスではパンク・ムーヴメントが勃発し始めていて、僕らがこのアルバムのレコーディングをしている時、ちょうど同じスタジオでセックス・ピストルズもレコーディングしていたよ。彼らのファースト・アルバムは、本当にすばらしかったな。
ジョン:アメリカで売れなかったのが不思議だね。
――お次は「ジャズ」。
ロジャー:僕はこのアルバム、そんなに好きじゃないんだ。曲が多すぎる結果になっちゃって、何だか寄せ集めみたいで気に入っていない。
ジョン:僕も一番嫌いなアルバムだね。
ロジャー:うーん…まあ、これはどうでもいいよ。僕は嫌いだからむこうにやろう。
ジョン:そのくずかごにでも入れといてよ(笑)
――じゃあ「ジャズ」の話はこれくらいにして、初のライヴ・アルバム「ライヴ・キラーズ」にいきましょう。
ロジャー:このアルバムで一番いいのは、このアルバム・カヴァーだね。(「ライヴ・キラーズ」は、79年ベストアルバム・カヴァーの3位に選ばれたこともある)
――彼(本誌カメラマン、長谷部さん)が撮ったのよ。
ロジャー、ジョン:もちろん覚えているよ! シルエットでうつすために、ずいぶん撮ったもんねえ。79年の日本公演だったよね。このジャケットはお気に入りなんだよ!
ロジャー:でも残念ながら、アルバムの音の質は録音状態が悪くて、あまりよくないんだ。
ジョン:そうなんだ、もっとずっといいライヴ・テープがあったのに…。だからミキシングしていても、あんまり楽しくなかったね。
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★「グレイテスト・ヒッツ」は全部で7種類出ています
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――さあ、次は「ザ・ゲーム」です。
ロジャー:このアルバムは世界中で大大大ヒットしたね。僕達のアルバムで一番売れたんじゃないかな。
ジョン:うん、アメリカとかアルゼンチンとかでも、よく売れたね。
――サウンドも少し変わったみたいだけど…。
ジョン:それはマック(共同プロデューサー)とやったからだね。彼と組んで初めてやったアルバムがこれなんだ。
ロジャー:とにかく早く仕上がったね。アルバム自体、ずっとシンプルで、ハードで、とにかくうまくいったよ。直接的な感じだろう?
ジョン:マックは違ったアイディアとか、違った考え方を僕らに吹き込んでくれたよ。たとえば彼は、雰囲気がよければ、たとえ技術的には完璧でなくても、とにかくレコーディングして、その"いい状態"をつかまえようとするんだ。
ロジャー:2つのNo.1ヒットがでたし、いいアルバムだと思うよ。
――次は…
ロジャー:「フラッシュ・ゴードン」。これは、きちっとしたクイーンのスタジオ・アルバムだとは思っていないんだ。これは映画用に作ったものだから。
ジョン:もっと歌を入れたほうがいいと思うんだけれど。映画のサントラはむずかしいよ。おもしろいことではあるけれど、グループでやるのは大変だな。
――じゃあ「グレイテスト・ヒッツ」にいきましょう。
ロジャー:これはその国々でヒットした曲が違うから、結局7バージョン作ったんだ。とにかくヒット曲でなければ入れる意味はないわけだから、それぞれの国のレコード会社の人に問い合わせて、収録する曲目を決めたんだ。
――デビッド・ボウイとの共作"アンダー・プレッシャー"も入っているのよね。彼との仕事はどうだった?
ロジャー:とても楽しかったね。バンド以外のミュージシャンとやるのは、あれが初めてだったけれど――いっしょにやりたいと思うような人もいなかったし――僕はボウイとはいつか一緒に仕事をしたいと思っていたから。
ジョン:僕は良い経験だと思ったけれど、ブライアンは性格的にはボウイとはウマがあわなかったみたいだな。
ロジャー:技術的にみれば、あの曲は完全に仕上がったとは言えないんだ。もっとよくなると思う。でも、あの曲はすごく気に入っている曲のひとつだ。それに、まだ他にもボウイとレコーディングした曲があるんだけれど、まだ発表していないんだ。あの曲は日本でもヒットした?
――もっちろん大ヒットしたわよ!
ジョン:僕はまだ記念品を持ってるよ。(といって彼は胸のポケットから、そのシングルの宣材として作った赤いライターを見せてくれた。一同爆笑)
☆宣伝用の物を取り込んで未だに使っているところが泣ける。
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★「ザ・ワークス」には30曲以上準備した
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――そして「ホット・スペース」。
ロジャー:アルバムとしては悪くないと思うんだけれど、時代を先取りしすぎたみたいだね。みんなクイーンにああいうものを望んでいなかったようだ。どっちにしても、僕はこのジャケットがいやなんだ。この色、最悪だよ、おぞましいよ(爆笑)
ジョン:(ニコニコとうなずきながら)これはフレディがアイディアを出して、絵も彼が描いたんだよ。
――さあ、じゃあいよいよ最新作「ザ・ワークス」の話にいきましょうか。アルバムとしては2年振りね。
ロジャー:そうだね。とにかく82年の日本公演が終わったあと、僕等は1年間の休暇をとることにしたからね。それにこのアルバムの製作にも時間をかけたし。とにかく僕らの違う面を出して、なおかつみんなにクイーンとして気に入ってもらえるようなものをつくりたかったんだ。
――このアルバムは、イギリスの音楽誌の評でも5ツ星を獲得していましたよ。もちろんMLの評もよかったし。
ロジャー:えっ、ホント!? すごいぞ!
ジョン:このアルバムでは、おもしろい経験をしたよ。ハリウッドの写真家でジョージ・ハレル(1930年代あたりから、グレタ・ガルボ、クラーク・ゲーブルなど人気映画女優、俳優のポートレートなどを撮っていたカメラマン)がアルバム・カヴァーを撮ってくれたんだ。写真を撮ったあとでニキビとかをきれいに修正してくれるんだ。
☆それが嬉しかったのか、なぜか彼だけ別バージョンの写真が何枚も存在するようだ。
ロジャー:その腕の良さで有名なんだ。彼はもう75歳なんだけれど、最高さ。
ジョン:(長谷部さんに)Koh、あなたも75歳になっても写真を撮りつづけてネ!
長谷部:(テレながら)サンキュー!
――ところで、このアルバム用には何曲準備したの?
ロジャー:30曲以上はあったな。全部が全部完成していたわけじゃないんだけれど、その中から一番いいと思うものを選んだんだ。とにかくたくさんあったよ。
――"ラジオ・ガ・ガ"はとっても大好きな曲なんだけれど、ロジャーが作ったと知ってビックリ! 初めての大ヒット・シングルになりそうね。
ロジャー:うん、実際そうなんだ。僕はシングルにすることを考えて曲を書かないから。この歌は家で書いたんだ。
――これはラジオ賛歌として受け止めていいの?
ロジャー:うん、そのつもりだけれど。この歌はビデオがあまりに重視されていることを批判しているところもあるんだ。
ジョン:そう、音楽そのものより重要になってきているという意味でね。
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★「Strange Frontier」――ロジャーの2ndソロ・アルバム完成
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――ところでロジャー、2枚目のソロ・アルバムを発表するそうだけれど、そのことについて教えてくれる?
ロジャー:タイトルは「Strange Frontier」っていうんだ。1年以上も前に遣り始めたんだけれど、クイーンのアルバムをやり始めたんで、一時中断していたんだ。でも、ちょうど1週間前に完成したばかり! 多分5月か6月の初めごろには出せると思う。内容のほとんどが核兵器に反対するもので、政治色の濃い、かなりまじめな内容なんだ。全部で10曲、中にはボブ・ディランやブルース・スプリングスティーンもやっていて、全曲オリジナルではないんだけれど。
――誰と一緒にやったの?
ロジャー:何曲かはジョンが手伝ってくれた。あとはステイタス・クオーのリック・パーフェクトも2曲参加してくれた。彼は最高のリズム・ギタリストなんだ。僕はドラムスとギターをやったよ。
――そのソロ・アルバム第2弾も楽しみにしています。それじゃあ最後に、ML読者のみんなにメッセージを。
ロジャー、ジョン:またこうして日本に来られて、とっても嬉しく思っているよ。10月頃には、またコンサートのために日本に戻ってきたいと思うんだ。その時まで!!
――今日は長いこと、どうもありがとう。
その時々の思い出話やエピソードに花が咲いたこのインタビュー、ふと気がつくとあっという間に1時間半という時間が過ぎていた。スペースの都合でかなりの部分をカットしてしまったけれど、こうしてクイーンとMLが共に歩んで来た今日までの歴史を振り返ってみると、つくづくこの10年の重みと意義を感じずにはいられない。ロジャー・テイラーもジョン・ディーコンも、やっぱり素敵だった。ロック・シーンにネームを残したバンドだけが持ちうる、本物の貫禄、厚み。新たなる輝ける10年に向けて大いなる第1歩を踏み出したクイーンに、私たちはもう一度、心から賞賛の拍手を送りたい。
『いつ会っても"普通"のジョン・ディーコンさん、ワタシとっても好きです』と編集後記で東郷さんも語っているが、どんどん"普通度"があがっていくというか、いつでもどこでも自然体のオヤジに近づいているというか、10年の重みをそういうところで感じてしまう。内容的には、ヒトのことばかり言い過ぎる? でもあの顔とあのアタマ(とろろ昆布頭 by R-TAKAさん)だから全く得している。