:: BACK ::

MUSIC LIFE 85年8月号

(インタビュアー:塚越みどり)

今、すべてを打ち明けよう

5月、6度目の来日を果たしたクイーン。"解散"という不穏な噂がささやかれていたものの、コンサートはやはり素晴らしく、今回もまた、日本公演は大成功だった。さて、先月号のフレディに続き、今月はロジャー・テイラーとジョン・ディーコンのインタビューをお届けしよう。解散の真相、今後のクイーンのゆくえ…語られることのなかった内輪話を、彼らはすべて打ち明けてくれた。

★今回は僕らにとっても最高のツアーだった

――まず最初に、今年のコンサートは最高でした。すごく感動的で、今までのどのステージよりもよかったと思いましたよ。

ロジャー:ホント!? どうもありがとう。僕ら自身も、今回のワールド・ツアーは、今までで一番いい出来だったと思うんだ。

ジョン:日本へ来る前に、オーストラリアとニュージーランドでコンサートをやってきたんだ。オーストラリアは9年(!)ぶり、ニュージーランドでコンサートをするのは今回が初めて(!!)だったんだけれど、特にシドニーは最高だったよ。
    ☆ちなみに、ニュージーランドにはヴェロニカさんの親戚がいるらしい。

ロジャー:そうだね。オーストラリアは4回のコンサートで7万人が集まって、チケットは総て売りきれだったし、ちょうどその時、レコードも2位だったし、最高だった。でも、季節をまちがえちゃったみたいなんだ。オーストラリアって、普段はすごく気候のいいところなのに、僕らが滞在している間中、雨が降りっぱなし!(笑)

――それは、それは…。ところで日本のオーディエンスの反応はいかがでしたか?

ロジャー:すごくよかった! お世辞じゃなく本当にそう思ったよ。でも、警備が厳しくて、思うようにのれていなかったんじゃないかなって気もしたんだけれど…でも、みんな一緒に歌ってくれたりして、グレイト!

ジョン:そういえば昨日、ロジャーと”今まで何回武道館でコンサートをしたのかな?”って話していたんだよ。多分15〜16回だと思うんだけれど、17回だったかな?
    ☆数字に細かい。

――ステージングとセットが変わっていましたけれど、いつもながらすごい迫力でしたね。あのセットのステージは、いつから始めたんですか?

ジョン:「ワークス」が完成したあと。ヨーロッパ・ツアーが最初だったかな。それから南米ツアー、ブラジル…あとは日本だよ。あのステージをデザインしたのは…

ロジャー:僕!(笑) それから僕らのツアー・マネージャーと、ロサンゼルスにいるステージ・デザイナーで考えたんだ。基本的には映画『メトロポリス』の雰囲気だね。

――ステージ・セットにも圧倒されたけれど、クイーンの初期のナンバー、たとえば”ライアー”や”輝ける七つの海”なんかを演奏してくれたのには、本当に驚きましたよ。そういう曲が聴けるとは、全然期待していなかったから…。

ロジャー:うん、選曲はみんなでしたんだ。このセットでのツアーは、ヨーロッパが初めだったんだけれど、やっているうちに、初期の曲も入れようじゃないかってことになったんだ。それで初期の曲を5曲メドレーでやることに決めて、ヨーロッパ・ツアーの途中から、セットの中に組み入れることにしたんだよ。

ジョン:今まであんまりにも多くの曲を演奏してきたから、今では忘れちゃった曲もあって、思い出すのが大変だったよ!(笑)
★ロック・イン・リオ 恐怖の裏話

――ところで、今年の1月にブラジルで行われた『ロック・イン・リオ』のことを少しききたいのだけれど、今までブラジルでコンサートをやったことはあったけれど、リオでは初めてだったんですよネ?

ジョン:そうそう、'81年にアルゼンチンとブラジルに行ったけれど、サンパウロのサッカー場で演奏しただけだったからね。リオで演奏したのは初めてだったけれど、ホールもオーディエンスも、すごくよかったよ。

ロジャー:今まで僕らがやった中で、一番大きな規模のコンサートだったしね。僕らは初日と金曜の晩と2回のステージがあったんだけれど、それぞれ25万人の人達が集まってくれたんだ。みんな一緒に歌ってくれたし、雰囲気も最高! 暴力沙汰もなかったしね。

ジョン:それに僕らはラッキーだったんだよ。僕らが演奏した晩は、2晩とも雨が降らなかったから。屋外ステージだったから、雨が降ると大変なんだ。地面はドロだらけでベチャベチャになるし、もう…。ロッド・スチュワートの日は、雨だったもんなあ。

――他のバンドのステージを見るチャンスはあったの?

ロジャー:もちろんさ。ホワイトスネイクは観たよ。コージーにも会ったし、あとは…あ、そうだ、ロッド・スチュワートを観た。

ジョン:会場がすごく遠かったからねえ…僕は観に行かなかったんだ。でも、ブラジルのバーにはテレビがあるんだけれど、イベントの一部を毎晩テレビで放送していて若い連中はみんな見てたよ。AC/DCはよかったな。
    ☆まったくもってオヤジくさい奴である。

――何かおもしろいこぼれ話があったら教えてくれる?

ロジャー:うわあ〜(笑)いっぱいあったけれど、言えるような話はないよ(笑)10日間の長いパーティみたいなものだったからなあ。

ジョン:そうだネ、いろいろあったけれど…そうそう、まず初日のことなんだけれど、僕たち、ひどい目にあったんだ。リオって交通渋滞がすごいんだ。というのは、リオの人達って道が混むと、車を道路におきっぱなしにして歩くんだよ。だから僕らは、万一のことを考えて、会場までヘリコプターで行ったんだ。ところがどっこい道は全然混んでなくて、すごく早く到着しちゃったんだ。

ロジャー:そう、6時までに会場に行かなきゃならなくて、遅れるわけにはいかなかったんだ。でも早く着いたはいいけれど、実際にステージが始まったのは深夜2時! 次の時は、どんなことがあってもバスで行くぞー!!(笑)

ジョン:それに、今まで会ったことなかった人達に会えたことは楽しかった。彼(と、ML4月号に掲載された写真を見ながら、ニール・マーレイを指して)とは、この時初めてあったんだ。あ、これはホテルでパーティをやった時の写真なんだけれど(と、ブライアンと地元のファンが一緒に写っている写真を見て)ブライアンが酔っ払った顔をしているヨ。彼、プールに飛び込んだんだよ(笑)
    ☆自分も酔っ払って見ていたのではないのだろうか。

――エーッ! ブライアンがプールに飛び込むなんて想像できない! 言われて見れば、髪もズボンもグショグショ…でも、とにかく『ロック・イン・リオ』は楽しんだわけですネ?(笑)

ロジャー、ジョン:うん、すご〜くネ!(笑)
★困難だった「ワークス」

――ところでクイーン結成から、早くも12年になるけれど…。

ジョン:そうだよォ〜、12年だよ、12年!(と、いきなりおじいさんの真似をする)他のメンバーと知り合ってから、14年になるよ。
    ☆そんな真似なんかしてるから早くトシ取っちゃうのだ。

――その間に、自分達の音楽のスタイルを確立し、たくさんの素晴らしいレコードを発表して、ロック史上にさん然と輝く歴史をきざんできたわけですよネ。そして今メンバーそれぞれが、1人のミュージシャンとしての活動もしているわけですが、グループを離れたところで活動するということに、何か特別の理由があるんですか?

ロジャー:う〜ん、僕個人の理由としては、単に仕事をするのが好きだからってことがあるけれどね。

ジョン:あと、「ワークス」は、作り上げるのが、すごく難しかったんだ、正直言うとね…。もちろん僕らは、ずっとクイーンを続けていきたいと思っている。でも、グループを維持していくのがきつくなっていることは事実だよ。スタジオに入った時は、期待感でいっぱいだったんだけれど、いつのまにか時間だけがどんどん過ぎていったみたいで…(「ワークス」のレコーディングは)時間がかかりすぎて、ちょっと疲れたね。音楽的な意味で4人の意見がかみあわなかったり…もちろん最終的には何とかなったけれどね。でも、長年やってきているバンドって、みんなそうだと思うんだ。
    ☆最後に一般化してはいるが、かなり当時のヤバさが伺える発言である。

――クイーンは、メンバー全員、それぞれミュージシャンとして自立しているから、むずかしいんでしょうね。

ジョン:今後の予定としては、しばらく休みをとってから、11月頃にスタジオに入りたいと思っているんだ。今度はプロデューサーも変えようと思っているよ。

――新しいアルバムのアイディアとかは、もうあるの?

ロジャー:頭の中で、ボンヤリとはあるんだけれど、具体的なものじゃないんだ。でも「ワークス」とは違うものにしたいね。「ワークス」はモダンなものと、昔からのものと、いろんな要素が織り交ざっていいアルバムになったと思うけれど、常に変わっていかなければね。デビッド・ボウイの「トゥナイト」は、ミステイクだったと思うよ。アルバムを出すのが早すぎて、十分変わりきれていなかった。
★解散? いつかはするさ

――オフの間に特にやってみたいことは? ジョンはソロ・アルバムを作るつもりなんですって?

ジョン:考えてはいるんだ。ロンドンで小さなスタジオに入っているんだけれど、ツアー中は考える暇もなくてね。でも僕が歌うってことを考えると、どうもね…歌だけは誰かに手伝ってもらわなくちゃ(笑)
    ☆これはImmortalsのことだと思っていいのだろうか?それとも、実はアルバムを作る予定もあったのか?

――ロジャーは? 3枚目のソロ・アルバムを作るつもりはないの?

ロジャー:ソロ・アルバムを作るつもりはないけれど、最近はいくつかプロデュースをしているんだ。サイド・ウェイとかジミー・ナイルとか…ジミー・ナイルは全英チャート・トップ20入りを果たしたんだよ。僕がプロデュースした最初のレコードだったから、喜びもひとしお!

――これからプロデュースしてみたいミュージシャンやバンドはいる?

ロジャー:うん、いっぱいいるよ。ジェフ・ベック、あとロッド・スチュワートもやってみたいね。良い仕事ができそうだよ。

――フレディのソロ・アルバムは聴いた?

ジョン:何曲かは聴いたけれど、まだ全部通しては聴いていないんだ。”メイド・イン・ヘヴン”はいい曲だね。

ロジャー:僕も”メイド・イン・ヘヴン”が一番好きだ。

――それじゃあ最後に、少し深刻な質問をしたいんですが、クイーン解散の噂がささやかれているんですが…

ロジャー:(プッと吹き出す)クククッ…

――もちろん、こんな噂は信じたくはないけれど、本当のところが知りたいんです。

ジョン:そりゃ、いつかは解散するさ。でも、それがいつか、なんて、誰にわかるんだい?
    ☆ロジャーと違って不器用な性格が表れている気がする。

ロジャー:この14年間、クイーンの解散についての質問があった時、僕らはいつも"NO!"ときっぱり否定し続けてきたつもりだよ。そんなのは、ただの噂だよ。解散の予定なんて、今のところまったくない。みんなそんなにクイーンに解散して欲しいのかな(笑)

ジョン:たしかにツアーは難しくなっているけれど――ツアーをやるからには、ステージやアプローチを完全に変えなきゃならないからね。でも、11月から次のアルバムを作ることは、決まっていることだし。

――それをきいて安心しました。これから先、どんな形で活動しようとも、ずっといつまでもクイーンを続けていってください。これは、ファンみんなの気持ちだと思うんです。

ロジャー、ジョン:どうもありがとう。そうだよ、そのほうが解散するより、ずーっといいもんね。

――それでは、これがホントの最後です。これから先、クイーンのメンバーとして、そして個人としてやってみたいことは?

ロジャー:個人的には、もっと子供が欲しい!(笑)(☆ロジャーの発言である、念のため)クイーンとしては、アメリカでもっと成功したいね。確かにアメリカではある程度の人気はあるかもしれないけれど、この前のアルバムも、セールス的には今イチだったし…。まぁ、どんなことでも浮き沈みはあるものさ。だから、またアメリカで大当たりしたいんだ。そのためには、中西部を中心に、長〜いツアーをやらないとネ(笑)

クイーンの解散をきっぱりと否定してくれたロジャーとジョン。「アメリカで、もっと大きな成功を収めたい」と、これから野望さえ語ってくれた彼ら。未来を見据えた彼らの瞳は、まだまだ輝きを失ってはいない。

バンドとして一番危なかった時期だということを考えると、二人の受け答えの対比が性格を表していて興味深い。


:: BACK ::