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MUSIC LIFE 86年7月号

(Sasha Stojanovic/LFI/Imperial Press)

今だから…クイーンの逆襲
独占会見 ブライアン・メイ+ジョン・ディーコン
『クイーンは これからだって 新しい事に挑戦し続けるよ』


1974年にデビュー・アルバム「戦慄の王女」を発表して以来、12年の永きにわたり、常にロック・シーンのトップに君臨し続けたクイーン。何だかんだといったって、メンバー・チェンジをすることもなく、こうして現役でバリバリやっている彼らって、やっぱり文句なく「偉い!」。昨年7月の『ライヴ・エイド』では、"ベスト・ライヴ・パフォーマンス!"と彼らをたたえる絶賛の嵐が吹き荒れ、今また待望のニュー・アルバム「カインド・オブ・マジック」で、堂々と華を咲かせたクイーン。やっぱり、クイーンはスゴイのだ。でたぞ、クイーンの逆襲だ!

★"ワン・ビジョン"は世の中で起きているいろいろな論争や問題に触発されてできた曲なんだ

――1981年に映画『フラッシュ・ゴードン』のサウンドトラックを担当し、今回の『ハイランダー』は、クイーンにとって2回目の映画音楽になるわけですが、あなた達の音楽は、叙事的で、聖歌っぽい音色があって、4世紀に渡るファンタジー・アドベンチャー映画にはピッタリですね。

ブライアン:確かにそうかもしれないね。アルバムにはフレディとジョンが一緒につくった曲で"心の絆"という曲があるんだけれど、この曲は"ウィ・アー・ザ・チャンピオン"に似ているんだ。きっとコンサートでは、オーディエンスも一緒に歌ってくれると思うよ。すごくクイーンっぽい曲なんだ。
    ☆言ってることは分かるが、"心の絆"は映画では使われていない。…質問からハズレてないかブライアン。

――ニュー・アルバム「カインド・オブ・マジック」には、映画用の曲も収録されていますが、それにはアルバム用の曲のアイディアが足りないからそうしたんですか?

ジョン:映画『ハイランダー』の中で、曲が途中でカットされずに使われたのは3曲しかないんだ。フレディの"プリンシス・オブ・ザ・ユニヴァース"がオープニングで流れて、アメリカでのファースト・シングルになるロジャーの"カインド・オブ・マジック"で映画が終わる。ブライアンが作った"ギム・ザ・プライズ"は中間で流されるんだけど、ものすごくオーケストレイトされているから、僕らのサウンドらしくないんだ。(☆"Who Wants To Live Forever"のことではないんだろうか)僕の曲は、映画のBGMって感じで流れるんだよ。(☆主に映画の中のバーのBGMだったりする)
サウンドトラック盤にしたら、たくさんある良いアイディアがもったいないと思って、スタジオ・アルバムにしたわけなんだ。映画とは関連していても、映画のサウンドトラック盤にはしたくなかったから、アルバム・タイトルも「ハイランダー」にはせずに、「カインド・オブ・マジック」にしたんだよ。


ブライアン:映画には、僕らの曲が6曲使われているんだけれど、初めてシンフォニー・オーケストラと一緒にやったんだ。出来には満足しているよ。映画で使った曲でも、クイーンのアルバムに入れたい曲があれば入れても構わないという理解の元で映画の曲も作ったんだ。それと、これは最高だぞ、と思ったから"ワン・ビジョン"もアルバムに入れることにしたんだよ。

――その曲は、ライヴ・エイドに触発されてできた曲なんですよね。

ブライアン:そう思われているようだけれど、違うんだ。世界各国をまわっていて、いろいろな論争や多くの問題を見て、そういったことに触発されてできた曲なんだよ。"悲しき世界"(アルバム「ワークス」に収録)は、ボブ・ゲルドフに触発された曲だけどね。(☆ライヴ・エイドまでボブゲのことなんて誰なのか知らなかったんじゃなかったのか?)
"ワン・ビジョン"は、レコーディングが終わってから映画『アイアン・イーグル』に使われることが決まったんだけれど、皮肉なことに戦争の歌になってしまったからね。
僕が作った曲でアルバムに入っているのは"ギム・ザ・プライズ"というヘヴィ・ロック調の曲なんだけれど、フレディとジョンはこの曲が大嫌いなんだ。(笑)(☆どういう「(笑)」なのか気になる)

――あなたはクイーンの中でもヘヴィなサウンドを作り出すほうなんですよね。

ブライアン:うん、エンジョイしているよ。バンドのヘヴィな部分も引き出してやらなきゃならない、という気持ちがあるんだよね。だって僕がやらなければ、誰もやらないだろうからね。(笑)ファンもクイーンというバンドに、ヘヴィなところを期待しているという部分もあると思うんだ。

――音楽的なアイディアを探すのは、今でもやはり難しいことなんですか?

ジョン:もちろんさ! (長い間やっているからといって)簡単にはならないよ。それどころか、この仕事を長くやればやるほど難しくなるよ。アルバムを作るとき、大変なことのひとつが、最初のアイディアを出すってことなんだ。曲作りって、本当に一番難しい仕事だと思うよ。

――映画を見て、そして曲を作るというのは、普段よりも楽でしたか?

ジョン:うん、楽な点もあったけれど、でもその映画のムードとかシーンに合うかどうかというところで難しい点もあったね。

★フレディはね 1回のステージで1日分のエネルギーを使い切ってしまうんだ

――ところで、今回のツアーでは、ロンドンのウエンブリー・スタジアムでコンサートをするということですが、コンサート会場にウエンブリー・スタジアムを選んだのは、去年7月のライヴ・エイドでベスト・パフォーマンスと絶賛された会場だからというのが理由なんですか? それともコンサートを10回やるよりも、大きな会場で1回だけやって多くのファンを満足させるほうがいいからなのですか?

ジョン:両方ともあたっているね。とにかく僕らの4人のうち、フレディが一番ライヴを嫌がるんだ。

――でも、ステージでは彼が一番熱心ですよね。

ジョン:うん、そうだね。また、だからこそ、彼のライヴをやるという決心がにぶるんだ。僕らはツアーをしようとする時、フレディを説得しなければいけないんだ。でもね、ライヴはバンドにとって欠くことのできないことさ。もしツアーやコンサートをするのをやめてしまったら、僕ら3人はフラストレーションがたまってしまうだろうね。(☆しかしながら彼はこの後ツアーに出てストレスが溜まってしまったわけであるが)
それに僕らは、常に前進するように、常に何か違った新しいことに挑戦するようにしているし、そういう意味でも世界中のあちこちでプレイしてきたんだ。ウエンブリー・スタジアムでのコンサートでは、再結成されたステイタス・クォー、アラーム、ヴァージニア・ウルフ(レッド・ツェッペリンのドラマー、ジョン・ボーナムの息子、ジェイソン・ボーナムのバンド)も出演してもらうんだ。ヴァージニア・ウルフのデビュー・アルバムは、ロジャーがプロデュースしたんだよ。


ブライアン:ウエンブリー・アリーナのような大きな会場でやろうと決めたのは、フレディの喉、声を考えての判断なんだ。彼の喉のことを考慮してのことなのさ。ウエンブリー・スタジアムでのコンサートは南米でのコンサートのように、思い出に残るものになると思うよ。サン・パウロでは13万人、リオ・デ・ジャネイロでは25万人のオーディエンスの前でプレイしたライヴのようにね。
僕個人としては、大規模な会場――たとえばスタジアムのような――でプレイするのには反対だったんだ。もっと小規模なアリーナの方が好きだから。でも南米のコンサートで、その考えが変わったよ。

――クイーンはこれから、機材やステージや会場や、どんどん大規模なものにしていくつもりなんですか?

ブライアン:よく"チケットが買えませんでした!"っていう苦情のお便りがくるんだ。だから大きな会場でやらなくてはならないんだ。機材に関していえば、1度ウエンブリー・スタジアムのような大きな所でプレイすると、良いサウンドが出せる機材がたくさん必要になってしまうんだ。だから当然、機材も大掛かりなものになってしまう。それに小さな会場で何回も、ということになれば、フレディが肉体的にキツくなってくるだろうし。このあいだのコンサートの時は、彼はハードなトレーニングをやっていたんだよ。それでも、毎晩コンサートが続けば、声や喉にすごい負担がかかる。僕は一晩に2〜3回ショウをこなすこともできるだろうけれど…彼にとっては、1回のショウが1日分のエネルギーのすべてなんだ。

ジョン:歳をとるにつれて、一年間になるコンサートの数を減らしているんだ。となれば、より大きな会場で、より多くの人達に来てもらう、ということにならざるを得ないわけさ。

――ライヴ・エイドの思い出は?

ブライアン:それほど長い時間演奏していたわけじゃないけれど、僕の人生で最良の日だった。誰もがひとつの目的のために団結して、一生懸命にやったし、今までやってきたものの中で、一番素晴らしいことだったと思う。あれほど凄い意気込みというものは、初めて見たよ。ああいうイベントが、もっとあればいいのにネ。ボブ・ゲルドフの偉さを認めたよ。

ジョン:僕らの出番をよーく覚えているよ。まずサウンド・チェックは無かったし、屋外で昼間だったんだ。サウンドのバランスが良くなかったからプレイしている間に直していったんだ。(☆ボンバヘッドで緊張しながらぴょんぴょん跳んでいるだけかと思っていたが、意外と冷静だったようだ)だからやけに早く感じたよ。数日かけてリハーサルしたりどの曲をプレイするか決めたんだ。そうしたら、特にフレディのウケが良くて、"クイーンというバンドは、まだまだライヴで十分やっていける"って、彼も考え直したみたいだったよ。僕らの演奏が終わったあとは、フレディの家で、その後をテレビで見たんだ。

ブライアン:フレディには最高の日だったよ。ノリもよかったし、選んだレパートリーもピッタリだったし…。機材に関しても、トラブルもなく、僕らはラッキーだった。今回のツアーも、ライヴ・エイドのコンサートと同じくらい感動するものにしたいと思っているよ。

(訳:河原雅子)

同時期のインタビューを総合すると、ジョンはフレディがツアーに難色を示したのがかなり気に入らないようである。要は自分がブレイクフリーなモードに入っていてパーっと気分転換したかったのだと思うのだが、気分転換のはずのツアーでなぜバランスが崩れていったのかは、ツアー後のインタビューが存在しないのでよく分からない。それにしても、二人で受けているにも関わらず、相づちなどの「絡み」がまったくないのはいったいどうしたわけなのだろう(^^;)


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