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音楽専科84年11月号

王者、再始動! またまた超スケールのコンサートが話題に

クイーンが再びステージに姿を見せた。長いブランクのあとだけに、メンバーには不安もちょっぴり。その胸のうちを、フレディ、ジョン、ロジャーの3人に聞いてみた。

10年を振り返って、僕らは不当な評価しか受けないこともあった

――ヨーロッパのツアー、勿論イギリスも含めての話ですが、クイーンにとってイギリスでプレイすることには特別な意味がありますか、それとも単なるコンサートの一つに過ぎないんでしょうか?

フレディ:僕等のショーはどれも同じだと思うね。ロンドンだって勿論そうさ。いや正直なところを言うとロンドンでプレイするのは好きじゃないな。勿論ロンドンから僕等は出て来たわけだけど、特に僕はロンドンでやるのが辛いんだ。何故だか分からないけどね。とにかくそこには愛着があるし、僕等はそこからスタートしたわけだから、一方では好きなんだけど、もう一方じゃやりたくないって気もあるんだ。まあ要するに他のところなら、どこでもゴキゲンだけど、ロンドンでやるってことは一種独特のプレッシャーがあるってことさ。

――プレイすることについてどう思ってるんですか?

フレディ:ロンドンは確かに僕等がスタートしたところだよ。でもそれは10年前のことさ。もしロンドンじゃなかったらこうしてここにいることもできず、カレッジ廻りでもしていたかも知れないけどね。

――あなたは聴衆と今でも一体化できると思いますか?

フレディ:勿論さ。ミンナ今でもファンでいてくれるしね。僕達に一緒について来ている人は、多分クイーンが成功したことを知ってくれているはずだし、彼等はもっと大きいホールでプレイしているところを見たいと思っているよ。それが僕等の励みになってるんだね。僕等に関する限り今でもそんな人達を楽しませているつもりだよ。

――ここミュンヘンには、どれだけ暮らしてるんですか?

フレディ:3〜4ヵ月っていったところかな。僕はショーをやってたんだ。それはプロジェクトと言ったらいいかな。まるで永遠にやりつづけるような気がするよ。今度のツアーの前には終わると思うけどね。でもまだ完成しないんだ。いい曲が多すぎてね。

――ソロ・アルバムはクイーンの音楽のスタイルとかなり異なっていますか?

フレディ:そう思う。すごく違ってるよ。僕がやりたくても、クイーンではできなかったことが、かなりあったしね。全然違うフォーマットなんだ。ソロ・アルバムだから全12曲自分で書いて、うまくやれそうな12曲を選んでとか…まあ、そんなもんかな。

――クイーンのスタイルと特に大きな違いがあったら…?

フレディ:そうだな。今まで書いたことのないような曲を書いたんだ。たとえばレゲエっぽいスタイルとか、クイーンじゃ絶対やらないようなものをやってみたんだ。1曲オーケストラを使ったし。実は僕等はいつもクイーンでオーケストラを使いたいと思っていたんだよ。でもブライアンのギターでオーケストラっぽい音が創り出せたからね。

――アルバムには満足してますか?

フレディ:ああ、もう大満足さ。

――シングルは出しますか?

フレディ:9月には出るよ(「Love Killes」のこと)CBSがリリースすることになってるんだ。

――ソロ・アルバムを作るために時間を費やしたことは、あなたのスタイルの面でどれだけ重要なことだったんですか?

フレディ:僕は十分な時間を費やしたよ。僕がOKを出した時が完成した時なんだ。こんな長い時間をかけなくても良かったかもしれないね。でも僕は沢山のことをしなけりゃならなかったからね。ビデオを作ったりとか…。だからまだ完成していないってわけなのさ。

――クイーン解散説について一言。

フレディ:ノー・コメントだ。僕等は明日にも解散するかも知れないよ。でも何でそんなことを言わなくっちゃいけないんだい? 僕等は5年間はもつと思ったよ。そして5年後は解散すると思っていた。僕等は何度もそういうことは言ったよ。OK! これで終わりにしようとね。でも1週間後には、また戻ってくるんだ。そういうことさ。

――これからどのように、あなたは変わっていくと思いますか?

フレディ:そういうことは考えないようにしているんだ。そんなバカじゃない。もしクイーンが明日解散したらどうしよう?とかね。もし解散ってことになったら、その時考えるさ。明日解散? OK! それじゃ他のことを考えるだろうさ。ジョンにかわるよ。

聴衆の歓声は今も僕にスリルを与えてくれるんだ

――他のメンバーはソロ・プロジェクトに取り組んでいますが、あなたは何故やらないんですか?

ジョン:僕は歌えないから、ソロ・プロジェクトは難しいんだよ。曲を書くのも苦手だしね。ソロってのは容易なことじゃないんだよ。責任も大きいんだから。アルバム1枚分以上の曲を書いて、他の連中と一緒にやるってのは大変なことだよ。それに現時点では、グループがうまくやっていることに満足しているしね。いつかは欲求不満に陥るかも知れないけど、今のところはまだみたいだね。
    ☆今のところ(2000年現在)もまだみたいである。彼の目にソロアルバムというものがどれほどしんどいものに映っているのかがよく分かる。これじゃあこの先も無理だろう(^^;)

――何年もの間、ビッグでいて、それでもステージに立つと興奮するものですか?はじめた頃のように…。

ジョン:ああそうなりそうだね。うれしいことに…。だってもう2年近くもコンサートをやっていないからね。日本で'82年11月にやったのが最後だったね。だから待ち遠しくてたまらないよ。ずっとオフでソロも作らないから、(☆子供は作った)終いには退屈してしまった。だから働くってことはゴキゲンだね。
ところで実のところ僕はガッカリしてるんだ。特に「Radio GA GA」なんだけど、世界中どこでもベスト10に入ったのに、アメリカじゃ15位そこそこで他のシングルは全然パッとしなかったんだ。レコード会社の責任かアメリカ人の好みに合わなかったかだろうね。それにビデオを気に入ってくれたように思えないんだ。どうも最近のMTVは芝居がかったのやヘヴィ・メタルがお気に入りみたいだからね。
まあ僕等は本質的にイギリス人でミンナ、イギリスに住んでいるからね。
    ☆ヨレヨレになるほどプロモ活動をしてこれだから、ガッカリするのも無理はない。(プロモかホリデーか判らん活動だったにせよ)

――今でもステージに立って、何千人もの人の前でプレイするのは楽しいものですか?

ジョン:イエーッ。とても楽しみにしてるよ。
    ☆デキ上がってるのかもしれない。

――聴衆の歓声は、あなたにスリルを今も与えてくれますか?

ジョン:そう思うね。実際待ち遠しいんだ。

――何か欲求不満に思っていることはありませんか?

ジョン:いや別に。僕はそんなに曲も書いてないしね。'85年になったら、ちょっとは退屈して、何かを始めたいと思うかも知れないけどね。

――若いタレントをプロデュースするってのはどうですか?

ジョン:その可能性はあるけど、僕等は忙しいから、その時間を作るのは難しいな。

――このヨーロッパのツアーですが、ビッグになりそうですね。ステージのライトとか色々で、どのくらい費用をかけるか教えてくれますか?

ジョン:ああ。正確には判らないけど…照明やステージ・セットが20〜30万ドルかかったかどうかは知らないよ。でもそれは全部アメリカ製で船で運んでくるんだ…。

――ビデオやフィルムは使いますか?

ジョン:そのつもりだよ。

――ステージの中心に立つことがなくても満足してますか?

ジョン:グループとして出発した時からそうだったからね。他の3人は違ったベース・プレイヤーとやってたんだけど、誰もフィットしていなかったんだ。そこで僕はオーディションを受けに行ったんだけど、僕の個性がフィットしたんで合格したんだと思うね。目立ちたがり屋じゃないように見えたんだろうね。(☆「見えた」って…やはり実は違うらしい)特に最初の頃は、フレディとブライアンがすべての曲のアイデアを持っていて、グループはもう売り出してたからね。

――メンバーはお互いに親密な関係にありますか?

ジョン:最近はロジャーとよく逢うよ。彼のアルバムもちょっと手助けしたし。彼とは2度も休日を楽しんだよ。

――クイーンのワクに対して欲求不満を感じていますか?

ジョン:うん、時々ね…。議論したり、意見が合わない時なんかは特にね…。僕等はミンナ違った音楽の趣味を持っているんだし、方向性も違うからね。

――10年たってみて、バンドにふさわしい評価を受けていると思いますか?

ジョン:時にはそう思う。でも時にはNOだね! 僕個人としてはファー・イーストをツアーすることに興味があるね。何しろ日本以外は行ったことがないから。僕は中国でプレイしたいんだ。でも実現するまでには数年かかりそうだな。まああくまで僕の希望さ。
    ☆非英語圏思考は南米ツアーの成功のせいか?

――ベニスのコンサートが最後になりますか?

ジョン:いや僕等は南アフリカに2週間行くよ。

――直接に?

ジョン:そう直接にだよ。11月〜12月はオフだ。フレディがスタジオに戻るからね。ちょうど来年の1月、リオのフェスティバルに出るのをOKしたんだ。これがビッグでね。色々なグループが出て10日間ぐらいやるんだ。チューリッヒでは大きい会場が閉鎖されててね。やりたかったんだけどね。スケジュールの関係もあって…。もういいかな?

お互い妥協しあってるからイヤになる時もあるさ

――次にロジャー。今度のソロ・アルバムは良い。僕はそう思いますよ。

ロジャー:サンキュー。グレイト。

――ディランやスプリングスティーンの曲をやっていますね。

ロジャー:いい出来だと思うね。スプリングスティーンの曲(「レーシング・イン・ザ・ストリート」)は、彼のことを好きだからやったんだ。彼は最高だよ。彼は正直だし、興奮させてくれるね。ディランの曲(「マスターズ・オブ・ウォー」)は、それが書かれた時以上に、今その詞が意味深いプロテスト・ソングだと思ったから歌ったんだ。

――社会的な詞ですよね…。クイーンという名前からすると妙な気もしますね。

ロジャー:そうだね。バンドの中にいると自分自身の意見を表現できないから。僕等は各自違う意見を持っているからね。ソロならば自分の意見を全面的に表明できるだろ? だから僕はあの曲をやったんだ。

――クイーンでやるのは不可能だったんですか?

ロジャー:出来ないとは言えないけど。僕はとにかく核については絶対反対なんだ。

――ここ2年間、お互いに友達として、あるいはビジネスマンとして逢うことがありましたか?

ロジャー:とんでもない。僕等は自分達がビジネスマンだったなんて思ったこともないよ。絶対に。お互いに時々逢うし、ジョンと僕なんか今年は随分一緒に過ごしたものね。

――あなたは聴衆と今でも接触していますか? たとえばファン・クラブとか…。

ロジャー:いやな言葉だね。それは主従関係を思わせる言葉じゃないか。ぞっとするね。僕等はファンあっての存在なんだから。もしファンがレコードを気に入ってくれたりしなかったら、僕等はどうにもならないものね。

――ジョンにも「Radio GA GA」のことを聞いたんですが、この質問はあなたにした方がいいでしょうね…。あれはラジオの力を取り戻せということですよね。にもかかわらず随分あの曲にはビデオの制作費を費やしたんでしょう? この矛盾についてはあなた自身どう思いますか?

ロジャー:確かに矛盾しているね。じゃあ話そうか。僕が思うには、ビデオは重要になり過ぎたね。高くついて時間は消費されるし、多くはもったいぶったものになったよね。とにかくビデオはパワーを持ち過ぎた。そして同時に僕等はレコードを大ヒットさせたかった。そうなるといまわしい大掛かりで金のかかったビデオを作らなくちゃならなかった。要するにそういうことさ。

――チャート面で欲求不満になったことはありませんか?

ロジャー:どこでのこと? ヨーロッパでどうだったかは知らないんだ。

――とてもいいアルバムだと思いますよ。

ロジャー:イギリスじゃ酷評だったよ。

――本当に?

ロジャー:まだ結論を出すのは早すぎると思うけど、30位までしか上らなかったのはガッカリしたね。(☆「ワークス」はアメリカでは23位だが、イギリスでは最高位2位まで上がっている。「Radio GA GA」は全米16位、全英2位。

――これからのあなたはどうなると思いますか? ブルース・スプリングスティーン? それともボウイ?

ロジャー:そうなれたらゴキゲンだね。本当のところ判らないね。今のところ、このツアーのことしか考えてないから。

――ステージではドラム・マシーンを使うつもりですか?

ロジャー:いや、僕等にはその気はないね。

――あなたにその気が…?

ロジャー:僕等はスパイクという新人を使おうと思っているんだ。彼はシンセサイザーをプレイするんだ。

――今までどうして使わなかったんですか?

ロジャー:彼はエルトン(ジョン)が使ってて、1年間契約してたからね。チクショー!

――将来に対する不安みたいなものはありませんか?

ロジャー:今のところは考えていない。6ヵ月前だったら、僕等がまたツアーを再開してもファンが喜んでくれるかどうか判らなかったけどね。でも僕等がツアーしなかったとしたら、グループとしては死んだも同然だからね。今の時点ではスタジオ・グループじゃなくてパフォーミング・グループとして一体化しているから気分は上々だよ。

――選曲する時には、どのように議論しているんですか?

ロジャー:僕等はミンナ違った人間で、各自曲も書いているからね。だから時がたつごとに、やりたい音楽もかなり違ってきたよね。そんな訳でお互い妥協し合っているんだから、時々イヤになることもあるよ。
ハードだよね。でも同時にそれは価値あることでもあるんだ。誰もお互い自分の領分は犯されない訳だから、それはいいことなんだよ。
もしバンドの中に独裁者がいて、ミンナに命令するとしたら、そいつはバンドを持ってるとは言えないね。ソロででもやってりゃいいんだよ。

――クイーンは勿論素晴らしいショーをやってきましたよね。何トンもの照明やアンプや何かを常にかかえてますよね。やり過ぎだと思ったことはありません? 要するに手に余るような気がしないかってことですが…。

ロジャー:いや。面白いよ。グレイトだよ。まるでサーカスみたいだね。でも僕等はプレイしないわけじゃない。僕等にとっては音楽はナンバー・ワンだと思っているからね。
僕等に関する限り、ステージに立った時は、2時間聴衆にすべてを捧げてるよ。ロック・ショーは、あくまでもロック・ショーであるべきだ。
判るよね。僕は君の目や耳をふさごうなんて思っちゃいないよ。でも君を監視する必要はあるかもね。違う人間になったような気持ちになって帰れると思うよ。


珍しい3人のインタビュー(とはいっても別々か)。フレディはソロ・プロジェクトで気合十分、ロジャーもビシバシ決めてる中で、ツアーが待ち遠しくてウキウキしている子供のようなジョン、いつもより饒舌だ。(ちなみにちょっとマシになったアフロだ。)しかしこのテンションがある意味異質なものだったことが、この時期のツアーで長年の親友だったナイジェルさんと間遠になってしまうことからも伺える。


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