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最新作『ザ・ワークス』のリリース・プロモーションのため、あのクイーンのロジャー・テイラーとジョン・ディーコンがコンビで来日。さすがにスーパー・スターの彼ら、取材先にはどこから聞きつけたか数10人の女性ファンがウロウロと何時間も、一目逢おうとねばっていた…。
★Introduction(イントロダクション)
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ムムッ、遅い――。約束の時間が30分をまわり、私達は少々あせり始めた。レコード会社のM氏によると、”彼らは今、原宿にショッピングに出かけている”との事だったが、私達の前に入っていた取材もいくつかキャンセルになっていただけに、だんだん不安がつのってきた。時間は無情にも刻一刻と過ぎてゆく――。
”あっ、来た!”誰かの声に顔を上げた。見るとメンバーが車から降り、ロビーへと入ってくるところだった。マフィア・ハットに黒メガネ、民族調のハーフ・コートにイエロー・グリーンのコーデュロイ・パンツという、めっぽう派手なロジャー・テイラー(でもピタッと決まっているところは、さすがスター)。その後をゆっくりと歩いて来るジョン・ディーコン。伸びかけたヘアにかるくパーマをかけ、(☆あれで「かるく」だったのか?)ブルーのシャンブレーのシャツにスニーカーといった、ロジャーとは対照的な軽装で現れた。ガラス越しに外からファンのフラッシュが一斉にたかれ、軽く手を挙げて応える2人をうながし、限られた時間内でのトーク・セッションを急いで開始する。
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★Music Business (音楽業界)
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――この世界に入る前と後では、どんなところが違いましたか?
ロジャー:難しいね。僕はいつも音楽界に入りたいと望んでいた。魅力的な世界に思えたから――。
ジョン:入る前は、どんなものか全然解らなかったけれど、今ではレコード会社、グループ、マネージメントの裏の部分が解ってきたね。
ロジャー:この世界で生き延びていこうとすると偽善者のような人達に出会う。ま、イギリスでは特にマネージャーとかプロモーターとかウソつきが多いね。それは初期の頃だったけど、今は自分達でコントロール出来るようになったから問題ない。
――業界が顕著に変わって来た事についてどう思います?
ジョン:いろんな意味で変化はある。音楽の事だけに関しても常に変わっているし、グループのルックスやレコーディング・スタジオ自体も変わってるから音の作り方もね。それ故、グループがやらなくても2人だけでも音楽を作り出せるようになった。例えばヤズーは2人だけだし、ハワード・ジョーンズに至っては1人でバッキング・トラックだけを創ればレコードが出せちゃうしね。僕、ハワード・ジョーンズ好きなんだ(笑)。
――ひとことで言ってどんな世界ですか?
ロジャー:競争が激しい所。いつも何か新しいものが生まれてくる。
ジョン:ハード・ワークな所。運と才能が非常にかかわっている世界だね!
――サバイバル法は?
ジョン:僕達の場合、4人だから責任が4分の1ずつになる。例えばライヴ・ショーのアイデアは主にロジャーが提供しているし、ビデオはフレディといった具合。要するにチーム・ワークを保っていくことだね。
ロジャー:それに生き抜いていく意志がなければダメ。運もあるけれど、グループを同じメンバーで維持していく事が大切な事だね。もし誰かがやめたら、それは違うグループになってしまう。僕達はこのやり方で成功しているしね。それにしても最近のバンドはメンバー・チェンジが激しいね。
――イギリスとアメリカの差は?
ジョン:ビジネス・サイドの違いはよく解らないけれど、僕達の場合、イギリスのレコード会社はアメリカよりいい。
ロジャー:アメリカン・ミュージック・ビジネスはクリエイティブではない。彼らはいつもビジネスやお金の事しか頭にない。だからイギリスからの方が、よりエキサイティングな音楽が生まれてくるんだと思う。
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★Lifestyle (ライフスタイル)
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――ロック・ミュージシャンとしてのライフスタイルについて教えてください。
ジョン:人それぞれ意見が違うと思うけれど、僕は普通の生活を失わないようにしている。僕は1人で地下鉄に乗る事も平気だよ(笑)。
ロジャー:確かに、ある部分は説明しがたい所もあるけれど、みんなが思っているほどじゃないし、その半分も華やかじゃない。僕が思うには、精神的に疲れるビジネスだと思う。でも家にいる時は、かなりノーマルだよ(笑)。グッド・ライフだし、それを維持出来て良かったと思う。ハード・ワークな面もあり、時々みんなが思っている以上にクレイジーなんだけど、その反面全く地味な場合もある。
――挫折感を味わった事はありますか?
ジョン:2〜3年前、南米ツアーの時、ベネズエラとメキシコに行ったんだけど、悪条件で危険だった。それに『ホット・スペース』のLPは面白くなかったね。
☆前のインタビューでは笑っていたが、2度も靴にぶち当たったのがかなり気に入らなかったらしい。『ホット・スペース』が「面白くない」理由は…何だろう。
――じゃ反対に幸福に思える時は?
ジョン:昔。やりたい事がたくさんあり、目標に向かって進んでた。今、ノンビリしすぎているからレコーディングでもアキちゃうんだ。
ロジャー:いいコンサートの後。それにやっぱり昔かな。
――有名になって煩わしかった事は?
ロジャー:プライヴェートな時間に土足で足を踏み入れられたりするのにはまいってしまう。
ジョン:そうだね。もし、普通の人と同様に街を歩けなかったら頭がいたい。それは国によって違うんだ。ブライアンだったらイギリスでも、背が高いしあのヘア・スタイルだから目立つんだ(笑)。
☆当時のキミにそれを言われたくないと思うよ、ブライアンも。
ロジャー:イギリスでは有名人だから何でも与えてくれるって期待されちゃうんだ。プライヴェートな時間は大切にしたいから、その事についてはあまり多くを語らないようにしている。
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★Queen's Music (コンサート、レコード)
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――クイーンのこれからの方向性は?
ジョン:全然解らない。次のLPを創る事を考えるのすら難しい。'85年までレコーディングする予定はないし――。
ロジャー:僕としては、なるべくみんなからの関心の高い方向にもっていきたい。それにモダンな感じを伴っていければいいと思う。今回のニューLPでは、古いスタイルから新しいスタイルまでの総決算にたいな感じになっていて、モダン・テクニックやエレクトロニクスをふんだんに入れてある。今後どうなるかは興味のあるとこなんだけど、僕が思うにかなりヘヴィになるんじゃないかな。
ジョン:新しいアルバムでは、よりクイーン本来のものを引き出るようにしたんだ。2〜3曲ヘヴィなものも入れてあるしね。
――今後コンサートを開いてみたい国は
ジョン:たくさんある。韓国、タイ、シンガポール。
ロジャー:中国に行きたい。あんまりソ連には行きたくないな(笑)。どっちにしろ僕らが入れるわけないや。
ジョン:クリフ・リチャードだったらOKなんじゃない!?(笑)中国にしたってプレイできるまでに、あと5〜6年かかるだろうな。
ロジャー:南アメリカは全部回ったな。グレイトだったよ。すごくステキな国もあったけど、よくない国もあった。
――『ザ・ワークス』の意味は?
ロジャー:まず、昔影響を受けたものから、何から何までアルバムに入れてある。英語で”ザ・ワークス”っていうのは、全てのものを含んでいるという時に使われるんだ。それにダブル・ミーニングがあるんだ。メカニカル・ワークの内部構造みたいな。時計とか機械ものの構造の事さ。レコーディングの時の細かい作業とかね。
――ステージングについては?
ロジャー:アハハハ。もっと大掛かりになるよ。でもこの間のはそれほどじゃなかったよ。でも今年使うステージは、すごく巨大だよ。みんながどこから見ても同じようによく見えるんだ。
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★Money (金)
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――学生の頃は貧乏だったんでしょう。
ジョン:お金は全然なかったから考えてもいなかった。あるものでガマンしてた。今はお金があるから、かえって問題が生じてくるんだ。何に使うかという決定をするのがタイヘンでね。
――ロジャーはケンジントン・マーケットでフレディと働いていましたね。
ロジャー:ん。全然お金はなかったけど幸せだった。お金が総べてじゃないと思う。フレディと僕がお店を持ってたのはグループ活動するための資金作りだったんだよね。
――今や世界のスターなわけですけど税金対策をどのように対処しています?
ロジャー:僕らはずっとイギリスに住んでいるけれど税金事情は以前よりよくなった。2、3年前に変わってね。今の方が暮らせるよ。僕はアメリカには住みたくない。ロスに家があるんだけど、あっちは全く好きじゃない。
ジョン:僕達がイギリスを頻繁に離れているのは、外国でレコーディングすると税金が低くなるためさ。イギリス以外の国に住む気はないね。離れたい人は彼らの自由だよ。
――現在あるお金を何に対して一番投資しますか。
ジョン:お金のほとんどは家族のために使っている。この頃ようやく大きな家に移ったんだ。
☆画像が出回っている家がこの頃買ったものだろうか?
ロジャー:僕もスペインの島に家を買った。その他は普通のものにお金を使うよ。洋服とかクラシック・カー、やっぱり普通のもんだなぁ(笑)。本を買うのも好きで回りに本がある事がいいんだ。あと一週間位前にジョンと一緒にスキーに行ったんだ。実は、あばら骨を折りそうになっちゃった(笑)。時々、太陽の光を浴びにスペインに行くのさ。
――よく金持ちはケチが多いというけど
ジョン:僕はそうじゃないと思うよ(笑)。
ロジャー:(笑いながら)ロッド・スチュワートのこと!? あいつはケチだよ、すごいケチ(笑)。僕の友人で彼の事は好きなんだけど、とにかくケチなんだ。デヴィッド・ボウイもそうだよ。
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★Women(女)
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――貴方にとって女性の存在とは?
ロジャー:素晴らしいものだと思う。僕は女性が好きだよ。
ジョン:魅力的な存在だね。目の保養さ。
――母親とか姉妹という身近な女性に対しての感情は?
ジョン:僕にとってはワイフが一番だね。母はまあまあ、シスターはそんなに感情は持ってない。子供としては、娘が一人でもいる事は良いことだね。
☆正直でよろしい。(そう答えるしかない質問ではあるが)
ロジャー:姉とはすごくうまくいってる。(☆クレアは「妹」だと思うのだが…専科はいつも「姉」と表記している)母親は時々気が合わないんだよね。ま、この事に関しては、あまり話さないよ。
――グルーピー、女性ファンに対してのそれぞれの意見は?
ロジャー:君の言っている事はわかる。違いはあるよ。でもグルーピーってハッキリ言ってどういうこと?
――寝る女たちのことよ。
ロジャー:あー、なるほどね。いやー、今は昔ほどグルーピーに逢わないよ。多分年をとったからかな(笑)。
ジョン:あれは若い人につきまとうものだよ。彼女達の中に僕には理解できない点もいくつかあるんだ。
――貴方達の結婚観は?
ジョン:いいアイデアだと思う。その関係を保つのは難しいけれど――。特にイギリスとアメリカでは離婚率が高いし、ミュージック・ビジネス界の人達もよく離婚するね。
ロジャー:僕は結婚には反対!
――離婚したという噂があるけれど…。
ロジャー:ノー。僕は一度も結婚した事がないよ。そんなのデタラメさ。
――でも息子さんがいるんでしょ?
ロジャー:うん、息子はいるけど、結婚はしたことないよ。息子はフィリックスっていう名前なんだ。息子とはいつも一緒にいるし、彼は僕の持っているものの中で一番大切なものだ。だからしばらく離れていると罪悪感があるね。
――ツアーなどには連れて行かないの?
ロジャー:まだ小さいから。ツアーはハードだしホテルの部屋に閉じ込めておくワケにはいかないよ。
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★Sex(セックス)
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――女性が貴方の事をロック・ミュージシャンとして見るのと、ただの男として見るのとではどっちがいいですか?
ジョン:難しいね。自分の中に2人の人間がいるようなもんだからね。外国に行くと自分の職業を語らないでいろんな人と話し、その反応を見るのを楽しんでいる。
ロジャー:ロック・ミュージシャンとして見られるのはいやだ。スターだからって接する人もいると思うけどね。僕は単に友達として一緒に話をするような関係がいい。
――同性同士の愛については!?←今回のモンダイ質問
ロジャー:ホモの友達の中には親友もいるよ。一緒にいて楽しいんだ。だから僕は同性愛に対して全く反対しない。
ジョン:自然な法則に反しているけど、人によってそのほうがいいという場合もある。ただ問題は年をとってから子供が出来ない事への疑問や将来に対する不安できっと悩むと思うよ。だから僕は結婚したんだ。
☆
さらっと肯定したロジャーと違い、おそらくかなり悩みながら答えているジョン。彼の考える「人間の存在意義」とは「子孫の繁殖」なのかもしれないとふと思った。
――親として子供の性教育をどのように考えてますか?
ジョン:うーん、難しいだろうねぇ(笑)。だってうちの両親は全然僕にその事を教えてくれなかったんだ。 まあ、イギリスの習慣では父親が息子に、母親が娘に教えるのが普通だね。
☆お父さんは彼が思春期になる前に亡くなってるから、仕方なかったんだろうな。当時ロバート君は8つだったからまだいいとしても、その後は大変だっただろうなあ…ちゃんと教えてあげたのかな。参考資料は「MISFIRE」の歌詞とか?(爆)
ロジャー:ん、もちろん間違えた考え方を持たせたくないから、僕から話してあげるつもりでいる。
――ある程度の年令に達するのを待ってから!?
ロジャー:いや、彼が疑問を抱いているのなら、いつでも教えてあげるよ。
――ずばり、貴方にとってセックスとは
ジョン:フン、難しいね。好きな人とのセックスでないと喜びは感じられないよ。要するに愛と性は同次元のものでなくちゃね!
☆こてこてのラブソングが書ける理由を垣間見たような気がした。
ロジャー:出来る時はグレイト(笑)。人々の大切な部分を占めている。だからエンジョイして欲しいな。
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★Ending(エンディング)
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「長年の”憧れの君”であった彼ら。特にもうロジャーの大ファンだったもんね、今もそうだけど。初めて逢ってみて何か不思議な感じもしたけれど気さくそーな人達だったので安心した。それでも十分貫禄はあったけれど」とは、興奮さめやらぬ遠藤選手の弁。インタビュー中は、割と落ち着いている風だったが、終わってからさすがにジワーッと来たらしく、下へ降りる階段で思わず踏み違えて”キャーッ”という悲鳴と共に私の背中へドッと…落ちてきそーになった!! アー、恐かった。
私は今回で2度目なんだけど、ジョンは英語の先生(彼自身そー言っていたんだもん)(☆あんな髪型の先生は嫌だぞ)、ロジャーはカサノヴァという雰囲気。しかしスター然としている彼らだが、その素顔は気さくな好青年だった。最後に彼らからのメッセージ。
”また10月に日本で逢おう!!”
ここでもロジャーとジョンの対比が面白い。ロジャーの言動のカッコ良さが引き立つが、逆に彼といることでジョンの「自分らしさ」が自然に現れている気もする。後半の質問の数々はゴシップ好きの専科ならではだが、また真面目に答えているんだなこれが(^^;)